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第1話 いつもとは違う!? エリック視点 (1)
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「さて。仕事をしに行くか」
今日は、リナ・サーハルの相手をする日。昼食を摂った俺は服を着替え、馬車に乗るため玄関の扉を潜った。
好きでもない相手に好意があるように振る舞うのは、極めて苦痛。だがその苦労は、やがてブドウ畑となって返ってくる。将来のために、我慢をしてアイツに接し持ち上げ続けよう。
「エリック、行ってらっしゃい。辛いでしょうけど頑張ってね」
「午後6時になれば――これから4時間程度辛抱すれば、我が家にリウさんが来てくれる。働いた後には最高の癒しが待っているぞ」
「そうだね、父さん。ご褒美を原動力にして、一仕事してくるよ」
リウ・マーズを思い浮かべながら馬車に乗り、御者の合図で二頭の馬が歩き始める。
アイツの貧相な家までは、40分程度。帰宅後リウと何をするかを考え、時間を潰すとしよう。
「まずは夕食で、問題はそのあとだな……。折角の泊りがけだ。今夜は何をしようか」
「久しぶりに、部屋でチェスでもするか? リウの喜んだ顔は、とにかく綺麗で可愛い。ワザと負けるのもアリだな」
「そのあとワインとジュースでも飲みつつ話に花を咲かせ、盛り上がったあとは…………。ふふふふふ。夜が楽しみだ」
そうして帰宅後のスケジュールが完成した頃サーハル邸に着き、下車するとリナが駆け寄ってきた。
相変わらず、間抜けな笑顔だ。騙されているとは夢にも思っていない面(つら)で、見ているといつも噴き出しそうになる。
「ようこそ、エリックさん。どうぞお入りください」
「お迎えありがとう、リナ。お邪魔するね」
父さんが用意した、名店のスコーンを――お土産を渡し、両親に挨拶を済ませてから彼女の私室に入る。
今日の仕事内容は、『ここでお喋りを行う』。これは適当に会話をしていれば済む分、比較的楽なものだ。
「エリックさん。オルスさんとクロエさんは、お元気ですか?」
「父さんも母さんも元気で、君の顔を早く見たいって五月蠅いんだ。また会いに行ってあげてね」
「エリックさんに頂いたスコーンと、紅茶です。一緒に頂きましょう」
「いつもありがとう。リナが淹れてくれた紅茶は格別で、世界一だよ」
「3日後は、一緒にお買い物でしたよね。どこに行きましょう?」
「前回は俺に合わせてもらったから、今度はリナに合わせるよ。なにをしたいかな?」
「そう、ですね……。新しいお洋服とかアクセサリーを欲しいので…………『アンゼサール』に行ってみたいです」
「アンゼサールか。あの街なら、いい物を買えそうだね。二人揃っては久々で、今から楽しみだよ」
こんな風に心にもない言葉を何度も並べ、ようやく解放される時が来た。
やはり、つまらない時は時間の流れが遅く感じる。すでに8時間くらい経っている感覚で、早くリウに会って英気を養いたい。
「おっと、もうこんな時間だ。今日はこのあと予定があるから、そろそろ失礼するね」
コイツは俺を好いていて、どんな時でも我が儘は決して言わない。そのため今日も今日とて常套句を出し、帰るべく椅子から立ち上がって――
「エリックさん、今日はもう少し一緒にいたいです。駄目、ですか……?」
――え!?
リナが、引き留め始めた……!?
今日は、リナ・サーハルの相手をする日。昼食を摂った俺は服を着替え、馬車に乗るため玄関の扉を潜った。
好きでもない相手に好意があるように振る舞うのは、極めて苦痛。だがその苦労は、やがてブドウ畑となって返ってくる。将来のために、我慢をしてアイツに接し持ち上げ続けよう。
「エリック、行ってらっしゃい。辛いでしょうけど頑張ってね」
「午後6時になれば――これから4時間程度辛抱すれば、我が家にリウさんが来てくれる。働いた後には最高の癒しが待っているぞ」
「そうだね、父さん。ご褒美を原動力にして、一仕事してくるよ」
リウ・マーズを思い浮かべながら馬車に乗り、御者の合図で二頭の馬が歩き始める。
アイツの貧相な家までは、40分程度。帰宅後リウと何をするかを考え、時間を潰すとしよう。
「まずは夕食で、問題はそのあとだな……。折角の泊りがけだ。今夜は何をしようか」
「久しぶりに、部屋でチェスでもするか? リウの喜んだ顔は、とにかく綺麗で可愛い。ワザと負けるのもアリだな」
「そのあとワインとジュースでも飲みつつ話に花を咲かせ、盛り上がったあとは…………。ふふふふふ。夜が楽しみだ」
そうして帰宅後のスケジュールが完成した頃サーハル邸に着き、下車するとリナが駆け寄ってきた。
相変わらず、間抜けな笑顔だ。騙されているとは夢にも思っていない面(つら)で、見ているといつも噴き出しそうになる。
「ようこそ、エリックさん。どうぞお入りください」
「お迎えありがとう、リナ。お邪魔するね」
父さんが用意した、名店のスコーンを――お土産を渡し、両親に挨拶を済ませてから彼女の私室に入る。
今日の仕事内容は、『ここでお喋りを行う』。これは適当に会話をしていれば済む分、比較的楽なものだ。
「エリックさん。オルスさんとクロエさんは、お元気ですか?」
「父さんも母さんも元気で、君の顔を早く見たいって五月蠅いんだ。また会いに行ってあげてね」
「エリックさんに頂いたスコーンと、紅茶です。一緒に頂きましょう」
「いつもありがとう。リナが淹れてくれた紅茶は格別で、世界一だよ」
「3日後は、一緒にお買い物でしたよね。どこに行きましょう?」
「前回は俺に合わせてもらったから、今度はリナに合わせるよ。なにをしたいかな?」
「そう、ですね……。新しいお洋服とかアクセサリーを欲しいので…………『アンゼサール』に行ってみたいです」
「アンゼサールか。あの街なら、いい物を買えそうだね。二人揃っては久々で、今から楽しみだよ」
こんな風に心にもない言葉を何度も並べ、ようやく解放される時が来た。
やはり、つまらない時は時間の流れが遅く感じる。すでに8時間くらい経っている感覚で、早くリウに会って英気を養いたい。
「おっと、もうこんな時間だ。今日はこのあと予定があるから、そろそろ失礼するね」
コイツは俺を好いていて、どんな時でも我が儘は決して言わない。そのため今日も今日とて常套句を出し、帰るべく椅子から立ち上がって――
「エリックさん、今日はもう少し一緒にいたいです。駄目、ですか……?」
――え!?
リナが、引き留め始めた……!?
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