私を利用するための婚約だと気付いたので、別れるまでチクチク攻撃することにしました

柚木ゆず

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番外編(リクエスト)

番外編その2 アルクとサイズの平民生活~ダメ息子と農業とリナとレオの言葉~(1)

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「アルクっ、サイズっ! いつまで寝てるんだっ! 朝だぞ起きろっ!」
「「………………。はい……」」

 朝の5時前、とある農家の物置き。簡易的に設置されたベッドで眠っていたアルクとサイズは、げんなりしながら起き上がりました。
 サーハル邸で厳罰の宣告を受けてから、12日後。彼らは性根を叩き直すため1か月間平民宅に住み込んで働くことになり、今日は15日目。農業の修行中である平民の兄弟アルク・ラース、サイズ・ラースとなっている2人は、毎日朝から晩まで動き回っていました。

 ――自らの正体を、決して明かしてはならない――。
 ――住み込み先の中年夫婦――ゲイル・ハネストとレーラ・ハネストの指示に、逆らってはいけない――。

 これがこの期間中、彼らに科せられた条件。
 この2つを破ると勘当されてしまうため、アルクとサイズは渋々従っていたのです。

「よし、起きたな。顔を洗って飯を食ったら、畑だっ。さあ行くぞっ!」
「「…………はい」」

 家にいた頃より遥かに質素で不味い朝食を摂り、暑い中を十数分歩いて畑に向かう。
 その時点で2人は、汗ダラダラでヘトヘト。たまらずへたり込んでしまいますが、「おいおい、まだ始まってないぞ。休むのはまだ先だっ」。屈強な両腕によって強制的に立たされ、今日も修行という名の罰が始まります。

「いいか? 野菜にだって、お前達のように個性がある。同じ品種でも、最適の条件が違うんだ。そこを見極められるようになれ」
「「……はい……」」
 広い広い畑を歩き回って、興味のない勉強をしたり。

「「はぁ、はぁ、はぁ……。重い……っ。きつい……っっ」
 年季の入った農具を使って畑を耕したり。

「「ひぃぃぃ……っ。ひぁぁぁぁぁぁぁぁ……っっ」」
 野菜についた虫を取ったり。

 今日も2人は、休憩と昼食時以外は働きっぱなし。陽が沈むのを合図にハネスト家へ――実家より遥かに小さく小汚い家に戻り、ボロいお風呂に入って安っぽい食事を済ませて、狭い寝室に戻る。
 そして、

「もうちょっと……。もうちょっとの辛抱だ……っ」
「一か月間、経てば……。あの生活に、戻れる……っ」

 父様はオレ(俺)達に平民の生活を体験させて、心を入れ替えさせようとしている。
 反省したフリをしていれば、来月には何もかも元通りになる。
 我慢だ……っ。我慢だ……っっ。

 アルクとサイズはすっかり常套句となった言葉達を呟き、質素なベッドに入ったのでした。



 ――この時はまだ、微塵も懲りていない2人――。
 では彼らはその後なぜ、多くの民に支持される優秀な兄弟になったのでしょうか?
 その切っ掛けとなるのは、この日から12日後。平民生活が始まってから27日目に、アルクとサイズの心に変化が起きるのでした。

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