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番外編(リクエスト)
番外編その2 アルクとサイズの平民生活~ダメ息子と農業とリナとレオの言葉~(2)
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「アルクサイズっ。これ食ってみろ」
あの日から12日間後。平民生活が始まって27日目の事でした。農業の師匠であるゲイルが、2人の前に真っ赤なトマトを差し出しました。
「「……え? いえ……。遠慮しておきます……」」
今日も今日とて虫に悪戦苦闘して、おまけにさっきは――
『『ぎやああああああああっ!! 虫が落ちたっ!! 腕に落ちてきたぁっ!!』』
兄弟仲良く、右腕をゾワゾワと這われてしまいました。
元々虫が苦手な彼らには、それは大ダメージで。いつも以上に疲弊しており、力なく首を左右に振りました。
「「……お気持ちだけ、頂いておきます……。はい……」」
「おいおい、そんな事言うなって。このトマトはお前達がこの畑に来て、初めて世話をしたやつなんだぞ? 記念に食ってみろよ」
「「……トマトは、何百回も食べてるから……。結構で――」」
「自分が携わったもんは、一味も二味も違うんだよ。いいから食ってみろって!」
嬉々として手の平に置かれ、アルクとサイズは顔を見合わせ、程なく揃って頷きます。
この様子だと、返しても返される。食べた方が、労力が少なくても済む。
2人は抵抗を諦め、渡されたトマトにかぶりつきました。
「「もぐもぐ……。もぐもぐ………」」
「アルク、サイズ。どうだ? いつものトマト、だったか?」
「「…………………………違う。全然、違う。すごく美味しい……っ!」」
瑞々しさとか果肉の食感とかは、はっきり言って高級品には及ばない。なのに、遥かに美味しい。美味しくて、止まらないっ!
2人はトマトを夢中で食べ続け、あっという間に完食してしまいました。
「こんなの、初めてだ。自分でも、ビックリしてる……」
「オレも、こんなに夢中になったのは初めてだよ……。どうなってるんだろう、これ……?」
「ははっ、そんなの決まってるだろ。お前達がその手で、作ったものだからだよ」
ポカンと呆けてしまっていたアルクとサイズに、快活な笑みが届きます。
「どっさり汗水流して世話をした、子供のようなものだ。お前らは嫌々やってたけどよ、それでもしっかりと働いたのは事実。こいつにはお前らの努力が詰まってるから、旨いんだよ」
「「………………。努力……」」
「ぶっちゃけ他人からすれば、何の変哲もないトマトだけどよ。作り手にとっては、ちょいと特別なもの。少々大袈裟だが作った側の歴史が一つ一つに詰まっていて、それが味を引き立てるんだよ」
「「………………」」
「これは作る側だけが味わえる、農家の特権、ってヤツだわな。野菜一つ一つの値段はまあ安いし、そこまでいい生活はできないけどよ。食ってくれた人が笑ってくれたり、こういう事があったりするから、辞められねえんだわ」
そう語るゲイルは、キラキラとしていて。アルクとサイズは無意識的に、こんなことを思っていました。
……今まで、考えたこともなかった……。オレ(俺)達のもとに届く前には、沢山の苦労があるだなんて。
……今まで、知らなかった……。こんな喜びがあるだなんて。
農家って、すごい。農業って面白い。
ゲイルさんは輝いていて、カッコいい!
これまで抱いていたものが、180度変わっていました。
「「……ゲイルさんっ!」」」
「お、おう? 一斉にどうした?」
「実はオレ、農業をバカにしていて……。一か月間、適当に終わらそうとしてました」
「俺も、兄さんと同じでした。いい加減な気持ちで、やろうとしてました」
2人は視線を正し、揃って頭を下げます。腰を90度に折り曲げ、正直に打ち明けました。
「でもっ。今からは違います」
「貴方とこの仕事は、尊敬に値します。これからは心を込めて、一生懸命やらせていただきます……っ」
やりたいことができたため、農業には携われないけれど。この期間は自分の為にも、キッチリとします。
口に出せない部分は心の中で喋り、2人は今一度頭を下げました。
「ゲイルさん、残り3日間よろしくお願いします……っ」
「ビシバシ扱いてください。よろしくお願いします……っ」
「…………よく分からんねぇけど、目が別人みたいになったな。こいつは教えがいがありそうだぜ」
呆気に取られていたゲイルは、破顔一笑。アルクとサイズの肩を力強く叩き、彼ら3人は気合十分で仕事を再開させたのでした。
――こうして目を覚ました、アルクとサイズ――。
無事に勘当されない条件を満たして安泰となった2人でしたが、その2日後。平民生活29日目に、彼らは未曽有の決断を迫られる事になるのでした――。
あの日から12日間後。平民生活が始まって27日目の事でした。農業の師匠であるゲイルが、2人の前に真っ赤なトマトを差し出しました。
「「……え? いえ……。遠慮しておきます……」」
今日も今日とて虫に悪戦苦闘して、おまけにさっきは――
『『ぎやああああああああっ!! 虫が落ちたっ!! 腕に落ちてきたぁっ!!』』
兄弟仲良く、右腕をゾワゾワと這われてしまいました。
元々虫が苦手な彼らには、それは大ダメージで。いつも以上に疲弊しており、力なく首を左右に振りました。
「「……お気持ちだけ、頂いておきます……。はい……」」
「おいおい、そんな事言うなって。このトマトはお前達がこの畑に来て、初めて世話をしたやつなんだぞ? 記念に食ってみろよ」
「「……トマトは、何百回も食べてるから……。結構で――」」
「自分が携わったもんは、一味も二味も違うんだよ。いいから食ってみろって!」
嬉々として手の平に置かれ、アルクとサイズは顔を見合わせ、程なく揃って頷きます。
この様子だと、返しても返される。食べた方が、労力が少なくても済む。
2人は抵抗を諦め、渡されたトマトにかぶりつきました。
「「もぐもぐ……。もぐもぐ………」」
「アルク、サイズ。どうだ? いつものトマト、だったか?」
「「…………………………違う。全然、違う。すごく美味しい……っ!」」
瑞々しさとか果肉の食感とかは、はっきり言って高級品には及ばない。なのに、遥かに美味しい。美味しくて、止まらないっ!
2人はトマトを夢中で食べ続け、あっという間に完食してしまいました。
「こんなの、初めてだ。自分でも、ビックリしてる……」
「オレも、こんなに夢中になったのは初めてだよ……。どうなってるんだろう、これ……?」
「ははっ、そんなの決まってるだろ。お前達がその手で、作ったものだからだよ」
ポカンと呆けてしまっていたアルクとサイズに、快活な笑みが届きます。
「どっさり汗水流して世話をした、子供のようなものだ。お前らは嫌々やってたけどよ、それでもしっかりと働いたのは事実。こいつにはお前らの努力が詰まってるから、旨いんだよ」
「「………………。努力……」」
「ぶっちゃけ他人からすれば、何の変哲もないトマトだけどよ。作り手にとっては、ちょいと特別なもの。少々大袈裟だが作った側の歴史が一つ一つに詰まっていて、それが味を引き立てるんだよ」
「「………………」」
「これは作る側だけが味わえる、農家の特権、ってヤツだわな。野菜一つ一つの値段はまあ安いし、そこまでいい生活はできないけどよ。食ってくれた人が笑ってくれたり、こういう事があったりするから、辞められねえんだわ」
そう語るゲイルは、キラキラとしていて。アルクとサイズは無意識的に、こんなことを思っていました。
……今まで、考えたこともなかった……。オレ(俺)達のもとに届く前には、沢山の苦労があるだなんて。
……今まで、知らなかった……。こんな喜びがあるだなんて。
農家って、すごい。農業って面白い。
ゲイルさんは輝いていて、カッコいい!
これまで抱いていたものが、180度変わっていました。
「「……ゲイルさんっ!」」」
「お、おう? 一斉にどうした?」
「実はオレ、農業をバカにしていて……。一か月間、適当に終わらそうとしてました」
「俺も、兄さんと同じでした。いい加減な気持ちで、やろうとしてました」
2人は視線を正し、揃って頭を下げます。腰を90度に折り曲げ、正直に打ち明けました。
「でもっ。今からは違います」
「貴方とこの仕事は、尊敬に値します。これからは心を込めて、一生懸命やらせていただきます……っ」
やりたいことができたため、農業には携われないけれど。この期間は自分の為にも、キッチリとします。
口に出せない部分は心の中で喋り、2人は今一度頭を下げました。
「ゲイルさん、残り3日間よろしくお願いします……っ」
「ビシバシ扱いてください。よろしくお願いします……っ」
「…………よく分からんねぇけど、目が別人みたいになったな。こいつは教えがいがありそうだぜ」
呆気に取られていたゲイルは、破顔一笑。アルクとサイズの肩を力強く叩き、彼ら3人は気合十分で仕事を再開させたのでした。
――こうして目を覚ました、アルクとサイズ――。
無事に勘当されない条件を満たして安泰となった2人でしたが、その2日後。平民生活29日目に、彼らは未曽有の決断を迫られる事になるのでした――。
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