35 / 39
第13話 知って、また知る アン視点(1)
しおりを挟む
「…………そう、だったのですね……」
お兄様の言葉、わたしに対する特別な感情のお話。それを聞いたわたしは、おもわず目を見開いてしまった。
エリオッツお兄様がそんな風に想ってくださっていただなんて……。気付きませんでした。
「想いを打ち明けても迷惑がかかるだけ、そう思ってずっと隠してきましたからね。気付かないのは当たり前ですよ」
お兄様は、また。自嘲含みで口元を緩め、ご自身の胸元に右手を当てたあと、再びわたしへと視線を移した。
「僕は単に、自分に自信がなかったんですよ。『自分なんかが』――。あらゆる場面で頭の中にその言葉が浮かび上がり、事あるごとに自分を鎖でがんじがらめにしていたんです」
「おにい、さま……」
「だから想いを告げられなかったし、ずっと考えていたのに『その2』に関する行動も取れずにいた。自分にはどうせ無理だと、諦めてしまっていたのですよ」
より自嘲を孕んだ言葉を口にした、お兄様。そんなお兄様は「でも」と、イブライム様達がいた場所を一瞥された。
「前当主の独断で、バッドエンドが確定している婚約が決まる。それにより、期せずして――いいえ、情けないことに、が適切でしょうね。ようやく、鎖を断ち切ろうとし始めるのですよ」
「くさりを、たちきる……」
「このままでは、アンが――いつも優しくしてくれていた、心を救ってくれた人が、悲劇を迎えてしまう。誰かが止めないとソレを阻止できない状況。即ち『やれるかどうかじゃなくて、自分が絶対にやらないといけないんだ』。そんな状態が自分でかけていた鎖を壊す切っ掛けを作り、『お前なら必ず出来る』と己を鼓舞するようになって――。これまで蓄えた知識を総動員し、間に合わせるべく水面下で動き回っていたのですよ」
「…………だから、だったのですね……」
久しぶりにお会いした時に覚えた、もう一つの違和感。その正体は、お兄様の雰囲気。
前回お会いした時とは別人のようなオーラを纏っていたので、すぐにお返事をできなかったんです。
「これが先ほど口にした、『やっと気付けた』理由。僕は自分の可能性を自分で潰し、行動を大きく制限し続けていたんですよ」
三回目となるソレは、固い意志も含んだ微笑。これまでの二回とは異なる性質を含めて口元を緩めたお兄様は、改めてわたしを見つめて――
お兄様の言葉、わたしに対する特別な感情のお話。それを聞いたわたしは、おもわず目を見開いてしまった。
エリオッツお兄様がそんな風に想ってくださっていただなんて……。気付きませんでした。
「想いを打ち明けても迷惑がかかるだけ、そう思ってずっと隠してきましたからね。気付かないのは当たり前ですよ」
お兄様は、また。自嘲含みで口元を緩め、ご自身の胸元に右手を当てたあと、再びわたしへと視線を移した。
「僕は単に、自分に自信がなかったんですよ。『自分なんかが』――。あらゆる場面で頭の中にその言葉が浮かび上がり、事あるごとに自分を鎖でがんじがらめにしていたんです」
「おにい、さま……」
「だから想いを告げられなかったし、ずっと考えていたのに『その2』に関する行動も取れずにいた。自分にはどうせ無理だと、諦めてしまっていたのですよ」
より自嘲を孕んだ言葉を口にした、お兄様。そんなお兄様は「でも」と、イブライム様達がいた場所を一瞥された。
「前当主の独断で、バッドエンドが確定している婚約が決まる。それにより、期せずして――いいえ、情けないことに、が適切でしょうね。ようやく、鎖を断ち切ろうとし始めるのですよ」
「くさりを、たちきる……」
「このままでは、アンが――いつも優しくしてくれていた、心を救ってくれた人が、悲劇を迎えてしまう。誰かが止めないとソレを阻止できない状況。即ち『やれるかどうかじゃなくて、自分が絶対にやらないといけないんだ』。そんな状態が自分でかけていた鎖を壊す切っ掛けを作り、『お前なら必ず出来る』と己を鼓舞するようになって――。これまで蓄えた知識を総動員し、間に合わせるべく水面下で動き回っていたのですよ」
「…………だから、だったのですね……」
久しぶりにお会いした時に覚えた、もう一つの違和感。その正体は、お兄様の雰囲気。
前回お会いした時とは別人のようなオーラを纏っていたので、すぐにお返事をできなかったんです。
「これが先ほど口にした、『やっと気付けた』理由。僕は自分の可能性を自分で潰し、行動を大きく制限し続けていたんですよ」
三回目となるソレは、固い意志も含んだ微笑。これまでの二回とは異なる性質を含めて口元を緩めたお兄様は、改めてわたしを見つめて――
190
あなたにおすすめの小説
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。
義妹が聖女を引き継ぎましたが無理だと思います
成行任世
恋愛
稀少な聖属性を持つ義妹が聖女の役も婚約者も引き継ぐ(奪う)というので聖女の祈りを義妹に託したら王都が壊滅の危機だそうですが、私はもう聖女ではないので知りません。
その支払い、どこから出ていると思ってまして?
ばぅ
恋愛
「真実の愛を見つけた!婚約破棄だ!」と騒ぐ王太子。
でもその真実の愛の相手に贈ったドレスも宝石も、出所は全部うちの金なんですけど!?
国の財政の半分を支える公爵家の娘であるセレスティアに見限られた途端、
王家に課せられた融資は 即時全額返済へと切り替わる。
「愛で国は救えませんわ。
救えるのは――責任と実務能力です。」
金の力で国を支える公爵令嬢の、
爽快ザマァ逆転ストーリー!
⚫︎カクヨム、なろうにも投稿中
婚約破棄で見限られたもの
志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。
すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥
よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。
「本当の自分になりたい」って婚約破棄しましたよね?今さら婚約し直すと思っているんですか?
水垣するめ
恋愛
「本当の自分を見て欲しい」と言って、ジョン王子はシャロンとの婚約を解消した。
王族としての務めを果たさずにそんなことを言い放ったジョン王子にシャロンは失望し、婚約解消を受け入れる。
しかし、ジョン王子はすぐに後悔することになる。
王妃教育を受けてきたシャロンは非の打ち所がない完璧な人物だったのだ。
ジョン王子はすぐに後悔して「婚約し直してくれ!」と頼むが、当然シャロンは受け入れるはずがなく……。
「役立たず」と婚約破棄されたけれど、私の価値に気づいたのは国中であなた一人だけでしたね?
ゆっこ
恋愛
「――リリアーヌ、お前との婚約は今日限りで破棄する」
王城の謁見の間。高い天井に声が響いた。
そう告げたのは、私の婚約者である第二王子アレクシス殿下だった。
周囲の貴族たちがくすくすと笑うのが聞こえる。彼らは、殿下の隣に寄り添う美しい茶髪の令嬢――伯爵令嬢ミリアが勝ち誇ったように微笑んでいるのを見て、もうすべてを察していた。
「理由は……何でしょうか?」
私は静かに問う。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる