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第12話 過去~好きになった理由~ エリオッツ視点(2)
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「ぇ……。おにい、ちゃん……? えっと……。あなた、は……?」
「あっ、わたしはアンっ。5歳っ。フェリルーザ家の長女で……えっと……。あなたの……しんせき? しんぞく? 家族みたいな人なんだよ」
これは、のちにケヴィックが酔った際に零したことなのだけれど。彼はある程度人格が形成する前に『平民生まれの男』を近づけると、知能が下がると考えしばらく接触させなかったそう。
そんな動機によって僕はその日初めてアンに会い、生まれて初めての経験をした。
「家族みたいな人だから、お呼びしてもいいかな? あなた、エリオッツくん。だから、エリオッツお兄様。ダメ?」
「…………………………」
「??? ね、ね? わたしのお声、聞こえてるかな? 聞こえてないかな?」
「ごっ、ごめんちゃんと聞こえてるよっ。あ、あの。ぼくは、お父さんとお母さんの本当の子どもじゃなくて……。養子っていって、貴族じゃなくて平民だったんだよ……。だからみんなイジメるんだけど……。君は……違うの……?」
「えっ、みんなイジメてるの!? ううんっ、わたしはしないよっ。せっかくお会いできたんだから仲良くなりたくってね、それでこうやってお話ししてるのっ。んとねんとね、わたしは平民とか貴族とか、ぜんぜん気にしないよっ」
それは、嘘みたいな言葉だった。夢を見ているのかと思った。
でも、夢じゃなかった。
アン・フェリルーザ。その子は初めて出会った、生まれで人を判断しない子。とっても温かくて、優しい子だった。
「だってエリオッツくんもわたしも、おんなじ人間だよっ。イジメられる理由なんてないよねっ? おかしいよ!」
「え? お兄様なんて呼んだら、わたしに迷惑がかかる? そんなことないよっ。だから呼ばせて欲しいなっ。エリオッツお兄様って呼ばせてっ」
ふふ。あの時の勢いは、本当にすごかったな。
僕が戸惑っているとグイグイ来て、その迫力に押されてしまって、
「う、うん。じゃあ、どうぞ」
「ありがとーっ。だったらわたしのことは、アンって呼んでね!」
「え……。養子の僕が、最初から貴族の君に――」
「さっき言ったでしょっ、関係ないのっ。それにお父様とかが何か言いそうになったら、わたしが止めるからっ。呼んでっ。わたしがそうして欲しいんだからね、わたしのために呼んで欲しいっ」
「わ、分かったよ。あ…………アン」
こんな風に、あっという間にお互いの呼称が決まる。
他にも、
「エリオッツお兄様も、今度のパーティーに出るんだよね? 一緒にいようねっ」
こんなことや、
「エリオッツお兄様、実は最近夢が出来たんです。聞いてもらえますか?」
こんなことがあった。
他の貴族が集まる場所では僕を守ってくれたり、僕だけに内緒で大事なことを明かしてくれる。
アンは成長しても、どんな時でも、ずっと変わらない。いつも僕を『人』として扱ってくれて、柔らかな温かさで包み込んでくれた。
だから、そうなるのは必然的だった。
((僕は……好きだ。アンが、大好きだ……))
家族――妹としてだけではなく、異性として大好き。LIKEではなくLOVEの感情が、芽生えたのだった。
「あっ、わたしはアンっ。5歳っ。フェリルーザ家の長女で……えっと……。あなたの……しんせき? しんぞく? 家族みたいな人なんだよ」
これは、のちにケヴィックが酔った際に零したことなのだけれど。彼はある程度人格が形成する前に『平民生まれの男』を近づけると、知能が下がると考えしばらく接触させなかったそう。
そんな動機によって僕はその日初めてアンに会い、生まれて初めての経験をした。
「家族みたいな人だから、お呼びしてもいいかな? あなた、エリオッツくん。だから、エリオッツお兄様。ダメ?」
「…………………………」
「??? ね、ね? わたしのお声、聞こえてるかな? 聞こえてないかな?」
「ごっ、ごめんちゃんと聞こえてるよっ。あ、あの。ぼくは、お父さんとお母さんの本当の子どもじゃなくて……。養子っていって、貴族じゃなくて平民だったんだよ……。だからみんなイジメるんだけど……。君は……違うの……?」
「えっ、みんなイジメてるの!? ううんっ、わたしはしないよっ。せっかくお会いできたんだから仲良くなりたくってね、それでこうやってお話ししてるのっ。んとねんとね、わたしは平民とか貴族とか、ぜんぜん気にしないよっ」
それは、嘘みたいな言葉だった。夢を見ているのかと思った。
でも、夢じゃなかった。
アン・フェリルーザ。その子は初めて出会った、生まれで人を判断しない子。とっても温かくて、優しい子だった。
「だってエリオッツくんもわたしも、おんなじ人間だよっ。イジメられる理由なんてないよねっ? おかしいよ!」
「え? お兄様なんて呼んだら、わたしに迷惑がかかる? そんなことないよっ。だから呼ばせて欲しいなっ。エリオッツお兄様って呼ばせてっ」
ふふ。あの時の勢いは、本当にすごかったな。
僕が戸惑っているとグイグイ来て、その迫力に押されてしまって、
「う、うん。じゃあ、どうぞ」
「ありがとーっ。だったらわたしのことは、アンって呼んでね!」
「え……。養子の僕が、最初から貴族の君に――」
「さっき言ったでしょっ、関係ないのっ。それにお父様とかが何か言いそうになったら、わたしが止めるからっ。呼んでっ。わたしがそうして欲しいんだからね、わたしのために呼んで欲しいっ」
「わ、分かったよ。あ…………アン」
こんな風に、あっという間にお互いの呼称が決まる。
他にも、
「エリオッツお兄様も、今度のパーティーに出るんだよね? 一緒にいようねっ」
こんなことや、
「エリオッツお兄様、実は最近夢が出来たんです。聞いてもらえますか?」
こんなことがあった。
他の貴族が集まる場所では僕を守ってくれたり、僕だけに内緒で大事なことを明かしてくれる。
アンは成長しても、どんな時でも、ずっと変わらない。いつも僕を『人』として扱ってくれて、柔らかな温かさで包み込んでくれた。
だから、そうなるのは必然的だった。
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