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第5話 困り顔 真鈴視点(2)
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「この漫画は4年前に連載が終わっていて、その」(あまり人気がなかったみたいじゃないですか)「よく分かりましたね?」
「私の趣味は、家の中でできること全部。できるだけ家から出ないようにしてたのが、役に立ったんだよ」
親戚のお姉ちゃんが少女漫画好きで、要らなくなった雑誌は全部送ってもらってた。中学生になるまではスマホがなくてやれることが今よりも少ないから、もらった雑誌は隅々まで何回も何回も読んでいて、そのおかげでマイナーな作品も覚えていたのです。
「この本は本屋さんにはないけど、電子書籍で――スマホなら、すぐに読めるんだ。こっちでもいいかな?」
「いいそうです。ありがとうございます、って言っていますよ」
「よかった。じゃあ買っちゃうね――」
「お願いしたのは僕です。大した活躍もできていませんし、僕に出させてください」
「い――分かったよ。お願いするね」
私が支払ったらずっと気にしてくれそうだし、どっちが出すか長々話してたら女の子ちゃんも気にしちゃうかもしれない。帰りにコンビニでアイスをご馳走することにして、お任せした。
「お店には申し訳ありませんが、ここで読ませてもらいましょう。……どうぞ。僕がスライドさせていきますので、このページを読み終わったら言ってくださいね」
幽霊は色んなタイプがいて、この子の場合は書店から出られないみたい。本当はマナー違反だけどごめんなさいをして、小さな読書会が始まった。
「わあ……! わぁ……っ!」
((ふふ。大好きなお話と再会できて、よかったね))
鈍感×ライバルは当時の連載作品の中で一番人気がなくて、単行本2冊が出ただけで終わったお話。それでも面白い面白くないは人それぞれで、女の子ちゃんにとっては最高のお話。
水前寺くんがページをめくるたびに表情がコロコロ変わって、眺めているとこっちまでひとりでに笑顔になっていた。
「……………………おしまい、ですね。どうでしたか?」
ソレも、声が聞こえなくても分かる。
満面の笑み。
女の子ちゃんは、最高! って思ってる。
「『楽しかった~!』『お兄ちゃんお姉ちゃん、ありがとうございますっ!』『夢が叶いました~!』、と言ってくれています。嬉しいですね」
「だよね。よかった」
幽霊になってこの世界に残り続けるくらい、気になってたんだもん。叶えられてよかったよ。
「長い間、ずっと呼びかけてたんだもんね? 本当によかった。女の子ちゃん――あ。これって」
「はい。未練がなくなった証。天に昇る合図です」
突然女の子の身体がキラキラ輝くようになって、透明になり始めた。
やっぱり。そうだったんだ。
「『お兄ちゃんとお姉ちゃんのことね、ずっと忘れません!』、『美緒(みお)うれしい!』、『お兄ちゃん、お姉ちゃん、大好き!』。と言ってくれていますよ」
「わたしも、ずっと忘れないよ。美緒ちゃん、おめでとう。バイバイ。いつか上で会えるといいな」
たくさんの嬉し涙を流す美緒ちゃんに、二人で一緒に手を振って――美緒ちゃんは笑顔でコクコク頷いたあと、パッと光になって消えた。
やりたいことをやれて、幸せに旅立っていった。
「ありがとうございます。あの子を――美緒さんを幸せにできたのは、市川さんのおかげです」
「水前寺くんが幽霊助けをしてるって言わなかったらココにいないし、ココにいたとしても声が聞こえなかったら何もしてあげられなかったでしょ? 水前寺くんも滅茶苦茶頑張った。ふたりのおかげだよ」
「そう、ですね。はいっ。ふたりのおかげです。お疲れ様でした」
「ん。お疲れ様でした」
そうそう、それでいいのです。
私達は美緒ちゃんがいた場所で喜びを共有して、爽やかな気持ちでハイタッチをしたのでした。
「私の趣味は、家の中でできること全部。できるだけ家から出ないようにしてたのが、役に立ったんだよ」
親戚のお姉ちゃんが少女漫画好きで、要らなくなった雑誌は全部送ってもらってた。中学生になるまではスマホがなくてやれることが今よりも少ないから、もらった雑誌は隅々まで何回も何回も読んでいて、そのおかげでマイナーな作品も覚えていたのです。
「この本は本屋さんにはないけど、電子書籍で――スマホなら、すぐに読めるんだ。こっちでもいいかな?」
「いいそうです。ありがとうございます、って言っていますよ」
「よかった。じゃあ買っちゃうね――」
「お願いしたのは僕です。大した活躍もできていませんし、僕に出させてください」
「い――分かったよ。お願いするね」
私が支払ったらずっと気にしてくれそうだし、どっちが出すか長々話してたら女の子ちゃんも気にしちゃうかもしれない。帰りにコンビニでアイスをご馳走することにして、お任せした。
「お店には申し訳ありませんが、ここで読ませてもらいましょう。……どうぞ。僕がスライドさせていきますので、このページを読み終わったら言ってくださいね」
幽霊は色んなタイプがいて、この子の場合は書店から出られないみたい。本当はマナー違反だけどごめんなさいをして、小さな読書会が始まった。
「わあ……! わぁ……っ!」
((ふふ。大好きなお話と再会できて、よかったね))
鈍感×ライバルは当時の連載作品の中で一番人気がなくて、単行本2冊が出ただけで終わったお話。それでも面白い面白くないは人それぞれで、女の子ちゃんにとっては最高のお話。
水前寺くんがページをめくるたびに表情がコロコロ変わって、眺めているとこっちまでひとりでに笑顔になっていた。
「……………………おしまい、ですね。どうでしたか?」
ソレも、声が聞こえなくても分かる。
満面の笑み。
女の子ちゃんは、最高! って思ってる。
「『楽しかった~!』『お兄ちゃんお姉ちゃん、ありがとうございますっ!』『夢が叶いました~!』、と言ってくれています。嬉しいですね」
「だよね。よかった」
幽霊になってこの世界に残り続けるくらい、気になってたんだもん。叶えられてよかったよ。
「長い間、ずっと呼びかけてたんだもんね? 本当によかった。女の子ちゃん――あ。これって」
「はい。未練がなくなった証。天に昇る合図です」
突然女の子の身体がキラキラ輝くようになって、透明になり始めた。
やっぱり。そうだったんだ。
「『お兄ちゃんとお姉ちゃんのことね、ずっと忘れません!』、『美緒(みお)うれしい!』、『お兄ちゃん、お姉ちゃん、大好き!』。と言ってくれていますよ」
「わたしも、ずっと忘れないよ。美緒ちゃん、おめでとう。バイバイ。いつか上で会えるといいな」
たくさんの嬉し涙を流す美緒ちゃんに、二人で一緒に手を振って――美緒ちゃんは笑顔でコクコク頷いたあと、パッと光になって消えた。
やりたいことをやれて、幸せに旅立っていった。
「ありがとうございます。あの子を――美緒さんを幸せにできたのは、市川さんのおかげです」
「水前寺くんが幽霊助けをしてるって言わなかったらココにいないし、ココにいたとしても声が聞こえなかったら何もしてあげられなかったでしょ? 水前寺くんも滅茶苦茶頑張った。ふたりのおかげだよ」
「そう、ですね。はいっ。ふたりのおかげです。お疲れ様でした」
「ん。お疲れ様でした」
そうそう、それでいいのです。
私達は美緒ちゃんがいた場所で喜びを共有して、爽やかな気持ちでハイタッチをしたのでした。
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