見える私と聞こえる転校生

柚木ゆず

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第7話 土曜日 真鈴視点(3)

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「声の大きさから推測するに、幽霊がいるのはあの辺りだと思います」
「大正解。あそこにいるね」

 公園の入り口から見て、左斜め前の方向にある東屋(あずまや)。その真ん中に、女性が立っているのが見えた。

「幽霊は、いかがですか……?」
「年齢は、20代の後半かな? 身長は160センチくらいのやせ型で、パンツスーツ姿。ここから見る分には、害はなさそうだね」

 普通のOLさんの幽霊、に見える。

「あの幽霊は、なんて言ってるのかな?」
「『全部、忘れてしまった……。わたしを、会社に連れていって……』。と繰り返しています」
「んー、危険な場所に誘導したがっているように聞こえなくもないような。今までこういうタイプの幽霊って、いた?」
「はい、怪我をするまでに2人出会いました。何らかの理由で、生前の記憶の一部を失っている場合があるそうです」

 水前寺くんは幽霊助けをしようと決めた時、インターネットや本で幽霊について詳しく調べた。その中にそんな情報があって、安心して声をかけて、その時は最後まで悪いことはなかったみたい。

「だったら、内容もおかしくはないね」(ベンチで休むフリをして、もうちょっと詳しく確認してみるよ)
(お願いします)

 判断を間違ったら大変な目にあっちゃって、しかもそうなるのは私だけじゃない。いつもよりも慎重にならないといけないのです。
 幽霊に聞こえない大きさでやり取りをして東屋に入って、適当にお喋りをしながら腰かけた。

((…………やっぱり、見た目はヘンじゃないね))

 顔にも髪の毛にも身体にもおかしなポイントはなくって、街中にいたら私達とおんなじ人間だと勘違いしちゃいそうになるくらい普通。こないだの女の子ちゃん、美緒ちゃんと同じ存在に感じる。

((表情だって不安そうにしてて、本当に困っているように見える))

 焦りや不安。忘れてしまっている雰囲気も連れていって欲しがっている雰囲気もちゃんとあって、違和感はない。

((……………………………………大丈夫そう、だね))

 見た目ヨシ。雰囲気ヨシ。表情ヨシ。台詞ヨシ。
 これくらい『大丈夫』があったら、大丈夫。そこにいる幽霊は、悪霊なんかじゃない。
 私は、右隣にいる水前寺くんに小さく頷いて――

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