17 / 45
第7話 土曜日 真鈴視点(3)
しおりを挟む
「声の大きさから推測するに、幽霊がいるのはあの辺りだと思います」
「大正解。あそこにいるね」
公園の入り口から見て、左斜め前の方向にある東屋(あずまや)。その真ん中に、女性が立っているのが見えた。
「幽霊は、いかがですか……?」
「年齢は、20代の後半かな? 身長は160センチくらいのやせ型で、パンツスーツ姿。ここから見る分には、害はなさそうだね」
普通のOLさんの幽霊、に見える。
「あの幽霊は、なんて言ってるのかな?」
「『全部、忘れてしまった……。わたしを、会社に連れていって……』。と繰り返しています」
「んー、危険な場所に誘導したがっているように聞こえなくもないような。今までこういうタイプの幽霊って、いた?」
「はい、怪我をするまでに2人出会いました。何らかの理由で、生前の記憶の一部を失っている場合があるそうです」
水前寺くんは幽霊助けをしようと決めた時、インターネットや本で幽霊について詳しく調べた。その中にそんな情報があって、安心して声をかけて、その時は最後まで悪いことはなかったみたい。
「だったら、内容もおかしくはないね」(ベンチで休むフリをして、もうちょっと詳しく確認してみるよ)
(お願いします)
判断を間違ったら大変な目にあっちゃって、しかもそうなるのは私だけじゃない。いつもよりも慎重にならないといけないのです。
幽霊に聞こえない大きさでやり取りをして東屋に入って、適当にお喋りをしながら腰かけた。
((…………やっぱり、見た目はヘンじゃないね))
顔にも髪の毛にも身体にもおかしなポイントはなくって、街中にいたら私達とおんなじ人間だと勘違いしちゃいそうになるくらい普通。こないだの女の子ちゃん、美緒ちゃんと同じ存在に感じる。
((表情だって不安そうにしてて、本当に困っているように見える))
焦りや不安。忘れてしまっている雰囲気も連れていって欲しがっている雰囲気もちゃんとあって、違和感はない。
((……………………………………大丈夫そう、だね))
見た目ヨシ。雰囲気ヨシ。表情ヨシ。台詞ヨシ。
これくらい『大丈夫』があったら、大丈夫。そこにいる幽霊は、悪霊なんかじゃない。
私は、右隣にいる水前寺くんに小さく頷いて――
「大正解。あそこにいるね」
公園の入り口から見て、左斜め前の方向にある東屋(あずまや)。その真ん中に、女性が立っているのが見えた。
「幽霊は、いかがですか……?」
「年齢は、20代の後半かな? 身長は160センチくらいのやせ型で、パンツスーツ姿。ここから見る分には、害はなさそうだね」
普通のOLさんの幽霊、に見える。
「あの幽霊は、なんて言ってるのかな?」
「『全部、忘れてしまった……。わたしを、会社に連れていって……』。と繰り返しています」
「んー、危険な場所に誘導したがっているように聞こえなくもないような。今までこういうタイプの幽霊って、いた?」
「はい、怪我をするまでに2人出会いました。何らかの理由で、生前の記憶の一部を失っている場合があるそうです」
水前寺くんは幽霊助けをしようと決めた時、インターネットや本で幽霊について詳しく調べた。その中にそんな情報があって、安心して声をかけて、その時は最後まで悪いことはなかったみたい。
「だったら、内容もおかしくはないね」(ベンチで休むフリをして、もうちょっと詳しく確認してみるよ)
(お願いします)
判断を間違ったら大変な目にあっちゃって、しかもそうなるのは私だけじゃない。いつもよりも慎重にならないといけないのです。
幽霊に聞こえない大きさでやり取りをして東屋に入って、適当にお喋りをしながら腰かけた。
((…………やっぱり、見た目はヘンじゃないね))
顔にも髪の毛にも身体にもおかしなポイントはなくって、街中にいたら私達とおんなじ人間だと勘違いしちゃいそうになるくらい普通。こないだの女の子ちゃん、美緒ちゃんと同じ存在に感じる。
((表情だって不安そうにしてて、本当に困っているように見える))
焦りや不安。忘れてしまっている雰囲気も連れていって欲しがっている雰囲気もちゃんとあって、違和感はない。
((……………………………………大丈夫そう、だね))
見た目ヨシ。雰囲気ヨシ。表情ヨシ。台詞ヨシ。
これくらい『大丈夫』があったら、大丈夫。そこにいる幽霊は、悪霊なんかじゃない。
私は、右隣にいる水前寺くんに小さく頷いて――
28
あなたにおすすめの小説
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
中学生ユーチューバーの心霊スポットMAP
じゅん
児童書・童話
【第1回「きずな児童書大賞」大賞 受賞👑】
悪霊のいる場所では、居合わせた人に「霊障」を可視化させる体質を持つ「霊感少女」のアカリ(中学1年生)。
「ユーチューバーになりたい」幼なじみと、「心霊スポットMAPを作りたい」友達に巻き込まれて、心霊現象を検証することになる。
いくつか心霊スポットを回るうちに、最近増えている心霊現象の原因は、霊を悪霊化させている「ボス」のせいだとわかり――
クスっと笑えながらも、ゾッとする連作短編。
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
VTuberデビュー! ~自分の声が苦手だったわたしが、VTuberになることになりました~
柚木ゆず
児童書・童話
「君の声はすごく可愛くて、僕の描いたキャラクターにピッタリなんです。もしよろしければ、VTuberになってくれませんか?」
声が変だと同級生や教師に笑われ続けたことが原因で、その時からずっと家族の前以外では声を出せなくなっていた女の子・佐倉美月。
そんな美月はある日偶然、隣家に引っ越してきた同い年の少年・田宮翔と――SNSで人気の中学生絵師に声を聞かれたことが切っ掛けとなり、やがて自分の声に対する認識が変わってゆくことになるのでした。
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
グリモワールなメモワール、それはめくるめくメメントモリ
和本明子
児童書・童話
あの夏、ぼくたちは“本”の中にいた。
夏休みのある日。図書館で宿題をしていた「チハル」と「レン」は、『なんでも願いが叶う本』を探している少女「マリン」と出会う。
空想めいた話しに興味を抱いた二人は本探しを手伝うことに。
三人は図書館の立入禁止の先にある地下室で、光を放つ不思議な一冊の本を見つける。
手に取ろうとした瞬間、なんとその本の中に吸いこまれてしまう。
気がつくとそこは、幼い頃に読んだことがある児童文学作品の世界だった。
現実世界に戻る手がかりもないまま、チハルたちは作中の主人公のように物語を進める――ページをめくるように、様々な『物語の世界』をめぐることになる。
やがて、ある『未完の物語の世界』に辿り着き、そこでマリンが叶えたかった願いとは――
大切なものは物語の中で、ずっと待っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる