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第7話 土曜日 真鈴視点(4)
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「あんし」
「あーーーーー!! いっけない大事な用事を思い出しちゃったっ!! 水前寺くんごめんっ、急いで戻ろ!!」
水前寺くんが腰を上げた瞬間、私はそれよりも早い速度で立ち上がって水前寺くんの声をかき消して――。彼が目を丸くしている間に手を引っ張って、全力で走って公園を出た。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。セーフ」
幽霊が追いかけてくる気配は、なし。あんし、だけなら『声をかけた』には入らなかったみたい。
「セーフ……。もしかして……」
「そうだよ。アレは困ってる幽霊なんかじゃない。悪霊だよ」
黒のパンツスーツだったせいで、気付かなかった。パンツの裾の部分から、どす黒いオーラみたいなのがはみ出していることに。
「困っている幽霊の声を出す悪霊がいるなら、困っている幽霊になりすます悪霊がいるかも? って、ずっと思ってたんだよ。アレはソレだ」
「……生きている者を不幸にしようと、あの手この手を使ってくるんですね。市川さんのおかげで助かりました」
「私が見落しかけただけ、マッチポンプ? ってのだよ。危ない、騙されるところだった」
こんなにも上手く化けてくるなんてね。これからはもっともっと、慎重にいかないとだ。
「私がミスしたら、水前寺くんまで大変な目にあっちゃう。絶対に駄目」
「……市川さん。お優しいですよね」
「そう? 当たり前でしょ? 他の人のことを――水前寺くん? どうしたの?」
急に、クスッと笑った。
??? なに?
「すみません。市川さんもじゃないですか、と思いました」
「私も? どういうこと?」
「学校で、さらっと言えるなんて――って、僕を褒めてくれましたよね? 市川さんも、さらっとでしたよ」
あ。
全然気づかなかった。確かに、言ってる。
「同じ、でしたね?」
「んー、水前寺くんほど優しい人間じゃないと思うよ。私って」
だって、幽霊が見えるのに黙るつもりだったんだもん。この人ならそうしていないよね。
「全然――って、そんなことは今はどうでもいっか。次の案内をお願いしたいな」
チラッと空が見えたら、西の空に雨雲があった。
雨が降って来たら色々と面倒。次の幽霊がいるのはここから徒歩で30分くらいって言ってたし、天気が悪くなる前に行こう。
「そうですね。こちらになります」
東屋を見ないようにして身体の向きを変えて、出発。
次は厄介な悪霊じゃありませんように――。あでも、困っている幽霊がいない方がいいのかも――。
なんてことを頭の中で考えながら、私達は歩き出したのでした。
「あーーーーー!! いっけない大事な用事を思い出しちゃったっ!! 水前寺くんごめんっ、急いで戻ろ!!」
水前寺くんが腰を上げた瞬間、私はそれよりも早い速度で立ち上がって水前寺くんの声をかき消して――。彼が目を丸くしている間に手を引っ張って、全力で走って公園を出た。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。セーフ」
幽霊が追いかけてくる気配は、なし。あんし、だけなら『声をかけた』には入らなかったみたい。
「セーフ……。もしかして……」
「そうだよ。アレは困ってる幽霊なんかじゃない。悪霊だよ」
黒のパンツスーツだったせいで、気付かなかった。パンツの裾の部分から、どす黒いオーラみたいなのがはみ出していることに。
「困っている幽霊の声を出す悪霊がいるなら、困っている幽霊になりすます悪霊がいるかも? って、ずっと思ってたんだよ。アレはソレだ」
「……生きている者を不幸にしようと、あの手この手を使ってくるんですね。市川さんのおかげで助かりました」
「私が見落しかけただけ、マッチポンプ? ってのだよ。危ない、騙されるところだった」
こんなにも上手く化けてくるなんてね。これからはもっともっと、慎重にいかないとだ。
「私がミスしたら、水前寺くんまで大変な目にあっちゃう。絶対に駄目」
「……市川さん。お優しいですよね」
「そう? 当たり前でしょ? 他の人のことを――水前寺くん? どうしたの?」
急に、クスッと笑った。
??? なに?
「すみません。市川さんもじゃないですか、と思いました」
「私も? どういうこと?」
「学校で、さらっと言えるなんて――って、僕を褒めてくれましたよね? 市川さんも、さらっとでしたよ」
あ。
全然気づかなかった。確かに、言ってる。
「同じ、でしたね?」
「んー、水前寺くんほど優しい人間じゃないと思うよ。私って」
だって、幽霊が見えるのに黙るつもりだったんだもん。この人ならそうしていないよね。
「全然――って、そんなことは今はどうでもいっか。次の案内をお願いしたいな」
チラッと空が見えたら、西の空に雨雲があった。
雨が降って来たら色々と面倒。次の幽霊がいるのはここから徒歩で30分くらいって言ってたし、天気が悪くなる前に行こう。
「そうですね。こちらになります」
東屋を見ないようにして身体の向きを変えて、出発。
次は厄介な悪霊じゃありませんように――。あでも、困っている幽霊がいない方がいいのかも――。
なんてことを頭の中で考えながら、私達は歩き出したのでした。
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