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第9話 四人目の幽霊 真鈴視点
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「年齢は、30代の真ん中くらい。身長は175センチ前後、かな。中肉中背で、眼鏡をかけた優しそうな顔をしてる。服装はスーツ。…………おかしなところはないよ」
さっきのことがあるから、今までの倍以上かけてチェックした。
雰囲気や見た目におかしなところはなかったし、色んな角度から見ても黒いオーラみたいなのが漏れてなかったし、水前寺くんが調べた情報とおんなじくらいの年齢だった。
信じて、いいと思う。
「僕は、市川さんの目を信じています。声をかけてみますね」
「ありがと。お願い」
ほんと、すごいよね水前寺くんって。
自分は見えないのに、不安とか心配とかをしてる感じが全然ない。まったく迷いがなくって、笑顔で幽霊に話しかけた。
「僕は貴方の声が聞こえて、隣にいる女の子は貴方の姿が見えるんです。僕達が貴方の願いを叶えますよ」
…………。
幽霊の男性はしばらくポカンとして、水前寺くん、私の順に見て、
っ!
表情が、一気に明るくなった。
「ええ、この通り聞こえていますよ。はい、はい、はい。『気付いてくれる人がいると思いませんでした。ありがとうございます』と仰っていますよ」
「喜んでもらえて嬉しいです。私達は一昨日、同じように困っている幽霊の女の子を助けているんです。任せてください」
「貴方の望みは聞こえています。ご家族がいる場所を、覚えていらっしゃいますか?」
男性の口が、スラスラと動いてる。
よかった。記憶を失ってはいないみたい。
「こちらの方は、北山裕介(きたやまゆうすけ)さん。奥さんの奈々子(ななこ)さん、息子さんの春斗(はると)さんの3人家族で、ふたつ隣の『春野市』にご自宅があるそうです」
ここ来栖市とは逆で、私達が住んでいる市の西隣にある市。そこに北山さんの家族がいて、まずは春斗くんに代わりに謝って、春斗くんと奈々子さんと会わせられたら救える。
「数か月前からその日の夜に野球を観に行く約束をしていて、守れなかったことがずっと気になっていたそうです。今念のために、北山さんからのメッセージを書き留めています。少しお時間をいただきますね」
((……北山裕介さん。優しいお父さんだったんだな))
水前寺くんがメモ帳に書いている文章を見ていたら、子どもへの愛がたくさん伝わって来た。
約束を破ったのが申し訳なくって、ずっと悔やんでいた。
ますます、何とかしたくなった。
「…………お待たせしました。北山さんは、この場を離れられません。このメッセージを持ってお家に伺い、ここに来ていただきましょう」
「そうだね。お家は、春野市のどこらへん?」
「スマホで出しますね。この住所は………………ありました。こちらです」
聞いた住所を打ち込むと地図が出てきて、更にタップするとその地点の画像が出て来た。
オレンジ色の屋根の、庭がある2階建ての建物。次の目的地は、ここだ。
「今から向かいたい、けど……。ん~、今日は難しそうだね」
「ですね。僕もそう思っていました」
ご自宅があるところは駅から遠くて、車かバスに乗らないと無理。今から移動すると暗くなって、帰りのバスがなくなっちゃう。
「水前寺くんのお父さんとお母さんも、今日も明日もお忙しいもんね? 行くのは早くて明日で、明日も時間ってある?」
「あります。市川さんさえよければ、よろしくお願いします」
「もちろん行くよ。……今日お家には行けないけど、電話ならできる。先に番号を聞いてかけてみようよ」
電話に距離は関係ないもんね。水前寺くんにご自宅の番号を聞いてもらって、かけてみて――
「…………出ませんね」
「出ないね」
――何回も鳴らしてみたものの、繋がらなかった。
「留守のようですね。またあとでかけてみましょう」
「私の方でも、挑戦してみとくよ」
その場でご家族の声を聞かせてあげたかったけど、しょうがない。北山さんに『絶対届けますから』と約束してそれぞれ家に帰って、次の日の午前9時に再集合するようになったのでした。
「…………………………んー、まだ出ないや。夜の9時以降は失礼だし、今日はここまでだね」
さっきのことがあるから、今までの倍以上かけてチェックした。
雰囲気や見た目におかしなところはなかったし、色んな角度から見ても黒いオーラみたいなのが漏れてなかったし、水前寺くんが調べた情報とおんなじくらいの年齢だった。
信じて、いいと思う。
「僕は、市川さんの目を信じています。声をかけてみますね」
「ありがと。お願い」
ほんと、すごいよね水前寺くんって。
自分は見えないのに、不安とか心配とかをしてる感じが全然ない。まったく迷いがなくって、笑顔で幽霊に話しかけた。
「僕は貴方の声が聞こえて、隣にいる女の子は貴方の姿が見えるんです。僕達が貴方の願いを叶えますよ」
…………。
幽霊の男性はしばらくポカンとして、水前寺くん、私の順に見て、
っ!
表情が、一気に明るくなった。
「ええ、この通り聞こえていますよ。はい、はい、はい。『気付いてくれる人がいると思いませんでした。ありがとうございます』と仰っていますよ」
「喜んでもらえて嬉しいです。私達は一昨日、同じように困っている幽霊の女の子を助けているんです。任せてください」
「貴方の望みは聞こえています。ご家族がいる場所を、覚えていらっしゃいますか?」
男性の口が、スラスラと動いてる。
よかった。記憶を失ってはいないみたい。
「こちらの方は、北山裕介(きたやまゆうすけ)さん。奥さんの奈々子(ななこ)さん、息子さんの春斗(はると)さんの3人家族で、ふたつ隣の『春野市』にご自宅があるそうです」
ここ来栖市とは逆で、私達が住んでいる市の西隣にある市。そこに北山さんの家族がいて、まずは春斗くんに代わりに謝って、春斗くんと奈々子さんと会わせられたら救える。
「数か月前からその日の夜に野球を観に行く約束をしていて、守れなかったことがずっと気になっていたそうです。今念のために、北山さんからのメッセージを書き留めています。少しお時間をいただきますね」
((……北山裕介さん。優しいお父さんだったんだな))
水前寺くんがメモ帳に書いている文章を見ていたら、子どもへの愛がたくさん伝わって来た。
約束を破ったのが申し訳なくって、ずっと悔やんでいた。
ますます、何とかしたくなった。
「…………お待たせしました。北山さんは、この場を離れられません。このメッセージを持ってお家に伺い、ここに来ていただきましょう」
「そうだね。お家は、春野市のどこらへん?」
「スマホで出しますね。この住所は………………ありました。こちらです」
聞いた住所を打ち込むと地図が出てきて、更にタップするとその地点の画像が出て来た。
オレンジ色の屋根の、庭がある2階建ての建物。次の目的地は、ここだ。
「今から向かいたい、けど……。ん~、今日は難しそうだね」
「ですね。僕もそう思っていました」
ご自宅があるところは駅から遠くて、車かバスに乗らないと無理。今から移動すると暗くなって、帰りのバスがなくなっちゃう。
「水前寺くんのお父さんとお母さんも、今日も明日もお忙しいもんね? 行くのは早くて明日で、明日も時間ってある?」
「あります。市川さんさえよければ、よろしくお願いします」
「もちろん行くよ。……今日お家には行けないけど、電話ならできる。先に番号を聞いてかけてみようよ」
電話に距離は関係ないもんね。水前寺くんにご自宅の番号を聞いてもらって、かけてみて――
「…………出ませんね」
「出ないね」
――何回も鳴らしてみたものの、繋がらなかった。
「留守のようですね。またあとでかけてみましょう」
「私の方でも、挑戦してみとくよ」
その場でご家族の声を聞かせてあげたかったけど、しょうがない。北山さんに『絶対届けますから』と約束してそれぞれ家に帰って、次の日の午前9時に再集合するようになったのでした。
「…………………………んー、まだ出ないや。夜の9時以降は失礼だし、今日はここまでだね」
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