見える私と聞こえる転校生

柚木ゆず

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第10話 北山さんの家 真鈴視点(1)

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「おはよ、水前寺くん。どうだった?」
「おはようございます、市川さん。こちらは駄目でした。そちらも……」
「うん、おんなじ。水前寺くんにメッセージを送ったあとも、全然繋がらなかったよ」

 昨日と一緒の、午前9時ちょうど。駅に集合した私達は、まずは連絡の確認をする。
 朝起きて1回、朝ご飯を食べて1回、来る途中で1回。今日になってからも3回かけてみたものの、連絡はつかなかった。

「昨日からずっと留守ってことは、土日を使って遠くに出かけてるのかな? 早く戻ってきてくれるといいね」
「勝手なお願いですが、できるだけ早くに戻ってきていただけるといいですね」

 息子さんの春斗くんは現在小学4年生で、明日の月曜日に学校がある。多分今日中には帰ってくるはずで、早かったら北山さんに会ってもらえる。
 できたら、午後3時頃までには戻っててほしい。

「今朝見た占いで、水前寺くんは良いことがあるって言ってたし。きっと上手くいくよ」
「そうだったのですか。でしたら、会えそうですね」

 普段は全然見ない占いを偶然見たってことは、占いが『大丈夫だよ!』ってアピールしてきてる証。のはず。
 私は――水前寺くんも占いを信じて頷き合い、昨日とは反対方向に動く電車に乗る。

「………………出ませんね」

「次は、私がかけてみるよ。………………バッテン」

「もうそろそろ着きますね。到着する前に、もう一回かけてみます」
「………………」
「………………駄目でした」

 移動中にもお客さんの迷惑にならないようにしながら電話をしてみて、3回かけてみたけど繋がらなかった。なので電車を降りて、バス停に向かう前にちょっとだけ予定を変更。

「いただきます」
「いただきます」

 このまま北山さんの家に着いても待つことになりそうだから、バス停を目指している途中にあったコンビニのイートインコーナーでお昼ご飯。私はサンドウィッチとグレープジュース、水前寺くんは鮭おにぎり2つと緑茶を食べて飲んで、バスに乗り込んだ。

(………………駄目。まだ出ない)

(………………出ませんね)

 バスの中でコッソリ2回かけても出なくって、降りて歩き始めてからもう2回かけても出なくって――。結局繋がらないまま、北山さんの家に到着したのでした。

「って、んん? 車がある。戻ってきた――別の車に乗ってってるだけだね」

 少しでも早くご家族にも知らせたくって、最後に電話をしたのが2分前。2分じゃ、門を開けて車を入れて門を閉めて家に入れないよね。

「ちょうどこちらが日陰になっています。この場所で待たせてもらいましょう」
「そうさせてもらおっか。外にお邪魔しま――んん?」

 あれ……? それって……?

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