見える私と聞こえる転校生

柚木ゆず

文字の大きさ
25 / 45

第10話 北山さんの家 真鈴視点(2)

しおりを挟む
「? 市川さん?」
「…………見間違い、じゃないね。あそこ見て、水前寺くん。1階にある室外機が動いてる」

 停まっている車の左側にある窓の傍に置かれている、クーラーの室外機。ソレのファンがクルクル回ってた。

「もしかして、ご家族さんがいる?」
「北山さんは、ペットは飼っていないそうです。いらっしゃるような気がしますね」
「だよね。押してみよっか」

 電話は出なかったし、2分で戻ってくるとは思えない。でも室外機が回ってて、クーラーがかかってる。
 押しても、お金がかかるわけじゃないしね。近くにいる私がインターホンのボタンをポチッと押して――

『はい、北山です』

 ――っ!? スピーカから、女性の声が響いてきた。

「水前寺くん……」
「い、いらっしゃりましたね……」
『??? お嬢ちゃんたち……? どうかしたのかしら?』
「あっ、失礼しました。実はご用事がありまして、私達昨日から何度もお電話をしていたんです。一度も――ついさっきかけても出なかったので、お留守だと思い込んでいて驚いてしまったんです」
『あらまぁ、あなた達だったのね。ごめんなさい。ウチはね、知っている番号以外は出ないようにしているの』

 私達の番号はお伝えしてない。ずっといらっしゃっていて、知らない番号だから出なかっただけだったんだ。

((……知ってる人、だけ……))

 そういうお家は初めて聞いて、理由が気になる。気になるけど、プライベートなことだもんね。
 疑問は口にせずに、北山さん――北山裕介さんのお話を始める。

「あなたは、北山奈々子さん。お子さんは、春斗くんですよね?」
『え、ええ、そうですよ。わたし達両方に、用事があるのかな?』
「そうなんです。……驚くと思いますが、落ち着いて聞いてください。私達は、去年亡くなられた裕介さんからメッセージを託されているんです」
「これから僕が、その証拠をお伝えします。お聞きください」

 裕介さんしか知らない情報を私達が言えたら、裕介さんに頼まれているって信じてもらえる。水前寺くんは、インターホンをあるカメラを見つめて――

『あなた達も仲間だったのね!? いい加減にしてっっ!! 今すぐここから消えなさいっ!! 消えろ!!』

 ――見つめていると耳が割れそうなくらいの大声が聞こえてきて、乱暴にインターホンが切られてしまったのでした。


しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

中学生ユーチューバーの心霊スポットMAP

じゅん
児童書・童話
【第1回「きずな児童書大賞」大賞 受賞👑】  悪霊のいる場所では、居合わせた人に「霊障」を可視化させる体質を持つ「霊感少女」のアカリ(中学1年生)。  「ユーチューバーになりたい」幼なじみと、「心霊スポットMAPを作りたい」友達に巻き込まれて、心霊現象を検証することになる。  いくつか心霊スポットを回るうちに、最近増えている心霊現象の原因は、霊を悪霊化させている「ボス」のせいだとわかり――  クスっと笑えながらも、ゾッとする連作短編。

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

VTuberデビュー! ~自分の声が苦手だったわたしが、VTuberになることになりました~ 

柚木ゆず
児童書・童話
「君の声はすごく可愛くて、僕の描いたキャラクターにピッタリなんです。もしよろしければ、VTuberになってくれませんか?」  声が変だと同級生や教師に笑われ続けたことが原因で、その時からずっと家族の前以外では声を出せなくなっていた女の子・佐倉美月。  そんな美月はある日偶然、隣家に引っ越してきた同い年の少年・田宮翔と――SNSで人気の中学生絵師に声を聞かれたことが切っ掛けとなり、やがて自分の声に対する認識が変わってゆくことになるのでした。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

城下のインフルエンサー永遠姫の日常

ぺきぺき
児童書・童話
永遠(とわ)姫は貴族・九条家に生まれたお姫様。大好きな父上と母上との楽しい日常を守るために小さな体で今日も奮闘中。 全5話。

処理中です...