幸せじゃないのは聖女が祈りを怠けたせい? でしたら、本当に怠けてみますね

柚木ゆず

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第5・5話 奮闘するリュシアン・ラズフ (俯瞰視点)

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「うっし。今日もはじめるっスよっ!」

 ここは、ラズフ家のキッチン。リュシアンは昨日に続いて・・・・・・エプロンを身につけ、母親が遺したレシピ表を見据えます。
 彼が前日から取り組んでいるのは、パン作り。バターと砂糖と卵をたっぷりと使った、お菓子に近いパン・『ブリオッシュ』を作ろうとしていました。

 ブリオッシュはリュシアンの好物であり、お祝いごとの日に食べられるもの。

 昨日は、クッキーのお返しとして。今日はそれに加えて、数日遅れの誕生日のお祝いとして。
 生まれて始めて、自作に挑戦しているのです。

「今回こそ……っ。今回こそは、成功させるっスよ……っ!」

 初心者がいきなり成功するはずはなく、昨夜は失敗の連続。7時間かけても、人に渡せるものはできませんでした。
 ですが――。同時にとある計画を進めているため、調理にたっぷり時間を使えるのは今日だけ。翌朝、朝食の際に出すと宣言しています。
 なので何としても成功させる必要があり、リュシアンは燃えていました。

「失敗は成功の素(もと)。詰まる所失敗をすればするほど『素(もと)』が貯まって、一定量集まれば成功への道が開かれるっス……!」

 彼は両頬を思い切り叩いて気合を入れ、うっかり顔を触ってしまったので手を洗います。そうして改めて清潔な状態にして、パン作りを始めました。

「強力粉、だったっスよね。これとか卵とか牛乳とかを入れて……。丁寧に混ぜて…………。全体が混ざったら、10分前後捏ねる……」

 強力粉260グラムや卵黄55グラムなどなど。母・ミルハが記したレシピを用いて、慎重に進めてゆきます。

「そしたら、棒で――めん棒で叩いて柔らかくして、バターをちぎって……。5回に分けて、生地に練り込んでいく……」

 この混ぜ込みは、昨日の大失敗の原因となったポイント。けれど彼が口にしていたように、失敗は成功の素。
 料理は努力が必ず報われるものであるため、今日は上手に仕上がりました。

「次は…………んーと、なんだ…………? 15分前後捏ねたら…………そうそうっスっ。発酵発酵っ!」

 生地が2倍近くになるまで発酵させ、ソレは80分程度で完了となりました。

「今度はこれを、ガス抜きってのをして……。それが終わったら…………また発酵させるんスね……」

 今度は6時間発酵させ、その間リュシアンは時計を眺め続けます。
 今日、父親と弟は――家族は全員留守で、寝てしまったら次はありません。彼は悲劇を防ぐために直立で直視を続け、

「………………………………………………………6時ぎゃん、たったスねい。気合を入れていくっスよっ!」

 もう一度両頬を叩き、もう一度両手を洗い、次の工程に移ります。
 完成後に7センチ程度になるよう生地を15等分にカットして、雪だるまのような形に形成。『くびれ』作りに手古摺ったもののどうにか成し遂げ、更にもう一度発酵させ、あとは焼くだけとなりました。

「で、できたっス。ここで失敗したら、台無しっスけど……。大丈夫っスよね、ブリオッシュさん……?」

 ここまでくれば、焼きすぎてしまう、以外での失敗はありません。そして彼は今回も直立と直視で見守るため、それは杞憂です。

 焼き始めてから、およそ15分後。ラズフ家のキッチンには、甘くて良い匂いが漂っていたのでした――。









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