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第4話 作戦と手紙 ユリス視点(1)
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「……さて。どうするか」
椅子に深く腰をかけた俺は、ゆっくりと息を吐いて思考を巡らせる。
妹、父、母。あの家族から、あの状況から救い出すには、どうすればいい?
「…………最も早く解決できる方法は、力業。アリシア様にマチエス家との縁を切ってもらいウチで暮らす、だな」
一番金を出す者に売る、実質的な人身売買。そんな真似だけは絶対に阻止しなければならず、そのためには絶縁が最も手っ取り早い。
ただ――。
そうした場合マチエス家の人間は逆恨みをして、あの手この手でアリシア様を不幸にしようとしてくるだろう。ウチで匿えば『肉体』への攻撃からは確実に守れるが、捏造した悪評の流布など『精神』への攻撃は流石に守り切れない。
いずれ外を堂々と歩けなくなってしまう可能性が高いため、これは却下だ。
「となると、他には………………。脛の傷を探す、か」
一定以上の地位や金を持つは大抵、後ろめたいことを行っている。父のように『手を汚した者に幸せはやって来ない』と考えている人間はごく僅かで、あの様子ならば、マチエス家の当主夫妻も何かしらに手を染めているはず。
そこを調べ上げて脅せば、交換条件としてアリシア様を解放することができるだろう。
「幸い手元にはそういった戦力があり、実行も可能。しかしながら…………それには、デメリットも存在する」
それは、サーシャと両親が無傷だということ。
こういった取引の場合は証拠と交換が条件となり、以降はあちらを攻撃する武器がなくなってしまう。実質ノーダメージかつこちらに武器がないとなると、あの手の輩は反故にして何かしらの反撃に出る。
そうすればアリシア様は責任を感じてしまうし、下手に応戦してしまえばマチエス家にいるダニエル様にも悪影響が出てしまう。
したがって、これも却下だ。
「……そういったもの達を回避しつつ、全ての条件を満たす必要がある。そのためには、どうすればいい……?」
脚を組んで天井を見上げて、更に思考を練る。
敢えて頭を一度リセットして、一から考え直したり。俯瞰して全体を見下ろしてみたり。イザクが用意してくれたブラックコーヒーを飲んだり。
そういったものが、プラスに働いてくれたのだろう。思案を始めておよそ5時間後に、閃きがやって来た。
「…………ヒントは、ずっと傍にあったのか。あの時ダニエル様は……」
『サーシャ姉さんを、盲目的に可愛がっているわけではないんですよ……。ただ……。両親はとにかく、アリシア姉さんのことが面白くなくって……。サーシャ姉さんに攻撃される姿を笑って眺めていたり……。『見た目だけはいいから一番金を出す者に売って、そのお金で一勝負しよう』って2人で話していたり……。物、同然の扱いなんです……』
と仰っていた。
その言葉の中に出てきた2つの要素を利用すれば、できる。
リスクなしでアリシア様を救い出すことも、妹、父、母の3人にダメージを与えることも。
「仰られていたレベルの商人なら、そうすれば必ずああなる。……ダニエル様については、アレ、を行っておけば悪影響はないだろう。…………決まりだな」
無事パズルが完成した俺はペンを走らせて作戦と『とあること』を記し、手紙を作成。そうして完成したものは家の者によって、ダニエル様のもとへと運ばれることとなったのだった。
「ダニエル様、やはり貴方は立派な方だ。貴方の想いと勇気のおかげで、また一歩前進しましたよ」
椅子に深く腰をかけた俺は、ゆっくりと息を吐いて思考を巡らせる。
妹、父、母。あの家族から、あの状況から救い出すには、どうすればいい?
「…………最も早く解決できる方法は、力業。アリシア様にマチエス家との縁を切ってもらいウチで暮らす、だな」
一番金を出す者に売る、実質的な人身売買。そんな真似だけは絶対に阻止しなければならず、そのためには絶縁が最も手っ取り早い。
ただ――。
そうした場合マチエス家の人間は逆恨みをして、あの手この手でアリシア様を不幸にしようとしてくるだろう。ウチで匿えば『肉体』への攻撃からは確実に守れるが、捏造した悪評の流布など『精神』への攻撃は流石に守り切れない。
いずれ外を堂々と歩けなくなってしまう可能性が高いため、これは却下だ。
「となると、他には………………。脛の傷を探す、か」
一定以上の地位や金を持つは大抵、後ろめたいことを行っている。父のように『手を汚した者に幸せはやって来ない』と考えている人間はごく僅かで、あの様子ならば、マチエス家の当主夫妻も何かしらに手を染めているはず。
そこを調べ上げて脅せば、交換条件としてアリシア様を解放することができるだろう。
「幸い手元にはそういった戦力があり、実行も可能。しかしながら…………それには、デメリットも存在する」
それは、サーシャと両親が無傷だということ。
こういった取引の場合は証拠と交換が条件となり、以降はあちらを攻撃する武器がなくなってしまう。実質ノーダメージかつこちらに武器がないとなると、あの手の輩は反故にして何かしらの反撃に出る。
そうすればアリシア様は責任を感じてしまうし、下手に応戦してしまえばマチエス家にいるダニエル様にも悪影響が出てしまう。
したがって、これも却下だ。
「……そういったもの達を回避しつつ、全ての条件を満たす必要がある。そのためには、どうすればいい……?」
脚を組んで天井を見上げて、更に思考を練る。
敢えて頭を一度リセットして、一から考え直したり。俯瞰して全体を見下ろしてみたり。イザクが用意してくれたブラックコーヒーを飲んだり。
そういったものが、プラスに働いてくれたのだろう。思案を始めておよそ5時間後に、閃きがやって来た。
「…………ヒントは、ずっと傍にあったのか。あの時ダニエル様は……」
『サーシャ姉さんを、盲目的に可愛がっているわけではないんですよ……。ただ……。両親はとにかく、アリシア姉さんのことが面白くなくって……。サーシャ姉さんに攻撃される姿を笑って眺めていたり……。『見た目だけはいいから一番金を出す者に売って、そのお金で一勝負しよう』って2人で話していたり……。物、同然の扱いなんです……』
と仰っていた。
その言葉の中に出てきた2つの要素を利用すれば、できる。
リスクなしでアリシア様を救い出すことも、妹、父、母の3人にダメージを与えることも。
「仰られていたレベルの商人なら、そうすれば必ずああなる。……ダニエル様については、アレ、を行っておけば悪影響はないだろう。…………決まりだな」
無事パズルが完成した俺はペンを走らせて作戦と『とあること』を記し、手紙を作成。そうして完成したものは家の者によって、ダニエル様のもとへと運ばれることとなったのだった。
「ダニエル様、やはり貴方は立派な方だ。貴方の想いと勇気のおかげで、また一歩前進しましたよ」
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