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第4話 作戦と手紙 ダニエル視点(2)
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「ダニエル、姉様ってばまだ落ち込んでいるみたい。はぁ~あ、まるで子ども。いつまでメソメソしてるのかしらね?」
ユリス様のもとを訪ねた日の、夜。僕の自室には今日もサーシャ姉さんが来ていて、アリシア姉さんの悪口で独り盛り上がっていた。
ずっと中立に見えるように動いている影響で、この人はいつもアリシア姉さんに愛想を尽かせようとしてくる――自分の側に引き込み、アリシア姉さんを完全に孤立させようとしてくるんだ……。
「コッソリ聞いてたら、アンタにも八つ当たりしてたわよ。『ダニエルは肝心な時に味方をしてくれない』『もう顔も見たいくない』ですって。酷いと思わない?」
「アリシア姉さんは、そんなことを言ってたんだ……。ひどい……。ショックだな……」((ふざけるな! 姉さんはそんなことは言わない! 僕は引き込もうとしても無駄だぞ!!))
おもわず叫びたくなる気持ちを必死に抑え、同意などを交えて話を合わせてゆく。そうして今日も僕は辛い日課に耐え、サーシャ姉さんが去ってしばらくすると――《トントン》。小さな、窓を叩く音がした。
「これは。もしかして…………………………やっぱりそうだ」
そっとカーテンを開けると、ガラスの下部に手紙が貼りついていた。エザント家に属する方が、届けてくださったんだ。
((まだ、半日も経っていないのに。……ありがとうございます))
静かに窓を開けてお手紙を回収し、まずは礼。手紙に向けてしっかりと頭を下げ、開封して中身を確認する。
「……………………そんな手があったんですね。……確かに、そうです。さすがはユリス様です」
そこにあった内容は、僕にとっては予想外のもの。父、母、サーシャ姉さんの性質を巧みに利用した、どこにも穴がないものだった。
《決行時刻は明日の午後5時。その時までに、アリシア様に作戦を伝えておいてください》
「…………分かりました、ユリス様。明日は、よろしくお願いします。……アリシア姉さんを、お救いください」
手紙を読み終えた僕は、家族が寝静まった頃コッソリと姉さんの部屋に移動――移動をする前に、身体全体を窓へと向ける。そうして運搬してくださった方、そしてユリス様へと改めて深く頭を下げてから出発。
手紙のことを伝えると姉さんの顔には血の気が戻り、さっきまでは違って――。嬉しさの涙が、たっぷり溢れたのだった。
((ユリス様、姉さんは元気になりました。姉さんが愛した人がユリス様で、ユリス様が愛した人が姉さんで、よかった))
ユリス様のもとを訪ねた日の、夜。僕の自室には今日もサーシャ姉さんが来ていて、アリシア姉さんの悪口で独り盛り上がっていた。
ずっと中立に見えるように動いている影響で、この人はいつもアリシア姉さんに愛想を尽かせようとしてくる――自分の側に引き込み、アリシア姉さんを完全に孤立させようとしてくるんだ……。
「コッソリ聞いてたら、アンタにも八つ当たりしてたわよ。『ダニエルは肝心な時に味方をしてくれない』『もう顔も見たいくない』ですって。酷いと思わない?」
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おもわず叫びたくなる気持ちを必死に抑え、同意などを交えて話を合わせてゆく。そうして今日も僕は辛い日課に耐え、サーシャ姉さんが去ってしばらくすると――《トントン》。小さな、窓を叩く音がした。
「これは。もしかして…………………………やっぱりそうだ」
そっとカーテンを開けると、ガラスの下部に手紙が貼りついていた。エザント家に属する方が、届けてくださったんだ。
((まだ、半日も経っていないのに。……ありがとうございます))
静かに窓を開けてお手紙を回収し、まずは礼。手紙に向けてしっかりと頭を下げ、開封して中身を確認する。
「……………………そんな手があったんですね。……確かに、そうです。さすがはユリス様です」
そこにあった内容は、僕にとっては予想外のもの。父、母、サーシャ姉さんの性質を巧みに利用した、どこにも穴がないものだった。
《決行時刻は明日の午後5時。その時までに、アリシア様に作戦を伝えておいてください》
「…………分かりました、ユリス様。明日は、よろしくお願いします。……アリシア姉さんを、お救いください」
手紙を読み終えた僕は、家族が寝静まった頃コッソリと姉さんの部屋に移動――移動をする前に、身体全体を窓へと向ける。そうして運搬してくださった方、そしてユリス様へと改めて深く頭を下げてから出発。
手紙のことを伝えると姉さんの顔には血の気が戻り、さっきまでは違って――。嬉しさの涙が、たっぷり溢れたのだった。
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