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第3話 知る ユリス視点
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「…………やはり……。思った通りだったのですね」
内密に接触を試みてくださった弟君、ダニエル様。彼のおかげで、アリシア様を取り巻く状況を把握することができた。
読み通り、これまで目にしてきたサーシャ様の姿は偽り。彼女の実態は表向きとは真逆の、とんでもない悪女だった。
「しかし、お父上とお母上の件は予想外――予想を大きく上回るものでした。まさかそこまで、贔屓が酷いとは……」
内容もそうだが、なにより唖然とさせたのはダニエル様の声音と表情だった。
『自分達こそ、ご先祖様が遺してくれたものを操っているだけの無能のくせに……!! 要らないのはどっちなんだよ……っ!!』
俺――他人の前でおもわず、ここまで感情的になってしまうだなんて。それほどまでに、酷い日常だったんだ。
「……アリシア姉さんが最初に懐いた相手は、自分達が大嫌いだった今は亡き祖父母。サーシャ姉さんが最初に懐いた相手は、父と母――自分達。たったそれだけの理由で、平気でああいったことをするんです……」
「……なんてことだ……」
赤ん坊の頃の行動なんて、他愛もないもの。そこを動機とするだんて、実に大人げなく愚かな者たちだ。
「サーシャ姉さんを、盲目的に可愛がっているわけではないんですよ……。ただ……。両親はとにかく、アリシア姉さんのことが面白くなくって……。サーシャ姉さんに攻撃される姿を笑って眺めていたり……。『見た目だけはいいから一番金を出す者に売って、そのお金で一勝負しよう』って2人で話していたり……。物、同然の扱いなんです……」
「……………………」
「なのに僕は、陰で支えることしかできなくて……。こうして、お伝えすることしかできなくて……。アリシア姉さんを助けたいのに殆ど何もできず、自分が情けないです……」
「いいえダニエル様、貴方は立派な御人だ。それに、『しか』ではありません。貴方の行動は、非常に有益なものでしたよ」
彼のおかげで、調査の必要がなくなった。動き出すまでの時間が大幅に短縮できたのは、とても有り難いことだ。
「これは、貴方にしかできない行動。立派な弟、功労者ですよ」
「ユリス様……! ありがとう、ございます……っ!」
「こちらこそ、ありがとうございます。……あとは、こちらにお任せください。必ずや、貴方のお姉様を幸せにしてみせます」
こんなにも情報をもらえたら、充分だ。
彼女を魔の手から救い出し、何の心配もしなくていいようにする。一切周りを気にせず、自分の本心を口にできるようにする。
彼へと手を伸ばし、しっかりと握手を交わして――。それらを約束した。
「これから早速、その作戦を立てたいと思います。こう見てもこの男は、そこそこ頭が切れるのですよ。大船に乗ったつもりで居てください」
「はい……っ。ユリス様、僕もお手伝いをさせてもらってもよろしいでしょうか?」
「聡明であり勇気のある方のご助力は、頼もしいですね。ただ――貴方には、別のお手伝いを頼みたいのですよ」
それは、いつも通りに過ごすこと。
何度も接触していれば怪しまれて今後の支障をきたす危険性がある上に、傍に居てもらえればアリシア様の心も和らぐ。
これは、彼にしかできない大事なものだ。
「作戦が決まれば…………そうですね。我が家(いえ)の者が、お部屋まで手紙をお届けします。ひとまずはそれまで、敵を欺いていてください」
「分かりました。ユリス様、よろしくお願いいたします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。ダニエル様、共に大切な人を救いましょう」
俺達は改めて握手を交わし、彼を見送って、自室にある愛用している椅子に深く座る。そうして一番頭が働く姿勢を作り、思案を始めたのだった。
内密に接触を試みてくださった弟君、ダニエル様。彼のおかげで、アリシア様を取り巻く状況を把握することができた。
読み通り、これまで目にしてきたサーシャ様の姿は偽り。彼女の実態は表向きとは真逆の、とんでもない悪女だった。
「しかし、お父上とお母上の件は予想外――予想を大きく上回るものでした。まさかそこまで、贔屓が酷いとは……」
内容もそうだが、なにより唖然とさせたのはダニエル様の声音と表情だった。
『自分達こそ、ご先祖様が遺してくれたものを操っているだけの無能のくせに……!! 要らないのはどっちなんだよ……っ!!』
俺――他人の前でおもわず、ここまで感情的になってしまうだなんて。それほどまでに、酷い日常だったんだ。
「……アリシア姉さんが最初に懐いた相手は、自分達が大嫌いだった今は亡き祖父母。サーシャ姉さんが最初に懐いた相手は、父と母――自分達。たったそれだけの理由で、平気でああいったことをするんです……」
「……なんてことだ……」
赤ん坊の頃の行動なんて、他愛もないもの。そこを動機とするだんて、実に大人げなく愚かな者たちだ。
「サーシャ姉さんを、盲目的に可愛がっているわけではないんですよ……。ただ……。両親はとにかく、アリシア姉さんのことが面白くなくって……。サーシャ姉さんに攻撃される姿を笑って眺めていたり……。『見た目だけはいいから一番金を出す者に売って、そのお金で一勝負しよう』って2人で話していたり……。物、同然の扱いなんです……」
「……………………」
「なのに僕は、陰で支えることしかできなくて……。こうして、お伝えすることしかできなくて……。アリシア姉さんを助けたいのに殆ど何もできず、自分が情けないです……」
「いいえダニエル様、貴方は立派な御人だ。それに、『しか』ではありません。貴方の行動は、非常に有益なものでしたよ」
彼のおかげで、調査の必要がなくなった。動き出すまでの時間が大幅に短縮できたのは、とても有り難いことだ。
「これは、貴方にしかできない行動。立派な弟、功労者ですよ」
「ユリス様……! ありがとう、ございます……っ!」
「こちらこそ、ありがとうございます。……あとは、こちらにお任せください。必ずや、貴方のお姉様を幸せにしてみせます」
こんなにも情報をもらえたら、充分だ。
彼女を魔の手から救い出し、何の心配もしなくていいようにする。一切周りを気にせず、自分の本心を口にできるようにする。
彼へと手を伸ばし、しっかりと握手を交わして――。それらを約束した。
「これから早速、その作戦を立てたいと思います。こう見てもこの男は、そこそこ頭が切れるのですよ。大船に乗ったつもりで居てください」
「はい……っ。ユリス様、僕もお手伝いをさせてもらってもよろしいでしょうか?」
「聡明であり勇気のある方のご助力は、頼もしいですね。ただ――貴方には、別のお手伝いを頼みたいのですよ」
それは、いつも通りに過ごすこと。
何度も接触していれば怪しまれて今後の支障をきたす危険性がある上に、傍に居てもらえればアリシア様の心も和らぐ。
これは、彼にしかできない大事なものだ。
「作戦が決まれば…………そうですね。我が家(いえ)の者が、お部屋まで手紙をお届けします。ひとまずはそれまで、敵を欺いていてください」
「分かりました。ユリス様、よろしくお願いいたします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。ダニエル様、共に大切な人を救いましょう」
俺達は改めて握手を交わし、彼を見送って、自室にある愛用している椅子に深く座る。そうして一番頭が働く姿勢を作り、思案を始めたのだった。
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