最愛の人と弟だけが味方でした

柚木ゆず

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第2話 事情を知る、弟 ダニエル視点

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「えっ!? アリシア姉さんが告白を断った!?」

 パーティーから帰ってきた姉さんの様子がおかしく、翌日になっても自分の部屋に籠ったまま。なので一緒に参加していたサーシャ姉さんに何か知らないか尋ねてみたら、おもわず声が裏返ってしまう情報を伝えられた。

「2人で抜け出していたから、こっそり後をつけてみたの。そうしたら姉様は断って、そのあとはお手洗いで泣いてたわ」

 サーシャ姉さんはケラケラ笑って、楽しそうにあの夜を振り返った。

「あの人はエザント様を好いていて、しかも初恋の人だったんですって。でもあたしに奪われると思って、迷惑がかからないように断ったみたいよ」
「……そう、だったんだ……。…………サーシャ姉さんは、それを見ても…………アリシア姉さんが断った理由を知っても、何も感じないの?」
「ちゃんと、感じてるわよ。最高、笑えちゃう。それと、姉様のくせに告白されるなんて生意気、ってね」

 サーシャ姉さんは、アリシア姉さんを見下している。
 本当は内面も容姿も数段劣っているのに、気付かない。勉学だって14歳の僕以下のあり様なのに、気にしない。父さんと母さんが『アリシアよりずっと』と持ち上げるから、余計に調子に乗っていく。
 コイツはまるで、愚王だ。

「あたしより先に、相手が見つかって幸せになるなんて許さない。あたしが幸せになるまで、そうやって落ち込み続けるといいわ」
「…………………………」

 ふざけるな! いい加減にしろ!! そう叫んで、アリシア姉さんに謝らせたい。
 でも毎回姉の肩を持っていれば下手に反論をしてしまえば、中立者でいられなくなってしまう――密かに、アリシア姉さんのフォローをできなくなってしまう。
 なので…………そうは、できない。けど……っ。

((姉さんの初恋。どうにかして、叶えてあげたい……。恩返しをしたい……!))


『…………ごめん、なさい」
『ダニエル? どうして謝るの?』
『だって……。アリシア姉さんに、いつも迷惑をかけてるから……』
『もう、何を言ってるの。違うよ、私はダニエルの看病をしに来てるんじゃないの。ダニエルと一緒にいると楽しいから、ダニエルのお部屋に遊びに来てるだけだよ」


 幼い頃の僕は病弱でいつも熱を出していて、そんな僕が寂しくならないようにアリシア姉さんはいつも一緒にいてくれた。
 朝も昼も夜も。家族の中で姉さんだけが嫌な顔一つせずに親身になってくれて、僕は救われたんだ。

((だから。今度は、僕が動く番だ))

 僕はこの家で一番下の子どもだし、まだ14歳。気持ちはあっても、直接行動することができない。
 でも! 間接的になら、行動できる。

((……姉さんに告白をされた、あの方に事実をお伝えすれば……))

 きっと、力になってくれる。
 そこで僕は、この日予定していた友人との約束をキャンセル。友人のお屋敷に行きお詫びをしたら即、ユリス・エザント様のもとを目指したのだった。
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