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第三章
礼人さん 2
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「お前、何か読みたいものある?」
図書館に着くと、紫藤さん……、違った、礼人さんが奥に足を進める。
ああ……、まだ礼人さんって呼ぶのに慣れない。
心の中で思うだけでもドキドキする。
「歩?」
「あ、はっはい! えと、そうですね。……僕の好みを言っちゃうと、ミステリーとかファンタジーとかですね。あんまり暗いのは苦手なんで、出来ればワクワクするようなやつがいいです」
「なるほど。数は多くないけど、一応ラノベとかも置いてあるぞ。ミステリーなら、本格的な物から有名どころのシリーズ物までそろってる」
そう言って礼人さんが僕を手招きして、本棚の位置を教えてくれた。
「あの……」
「うん?」
「しど……、礼人さんの好きな読み物は何ですか?」
「俺か―? 特には決まってないけど……。面白いと思うのは小説よりも、歴史の狭間で絶対に教科書には載せられないような隠された人物像とか出来こととか。そういうことが書かれている本に、ついつい手は伸びるかな」
「そうなんですかぁ。歴史とか好きなんですか?」
「結構な」
「へえ~、……僕も読んでみようかな」
「歩も好きなのか? そういうの」
「えっ? あ、えっと。面白そうかなと思って!」
「そっか」
一瞬紫藤さ……、礼人さんは僕のことをじっと見て、それからクスッと笑って本棚の方へと歩いて行った。
その後ろ姿を見て何となく思った。
紫藤さんはどちらかというと、僕とは違ってスポーツとかが似合いそうだ。
だって、身長も高いしスラッとした印象だけど、筋肉も程よくついていて体幹もよさそうに見えるし。静かに読書している姿も様にはなるんだろうけど、絶対にテニスとかバスケとか……、そういう系統の方があっているような気がするんだ。
そうして僕らが図書館で借りたのは、礼人さんに薦めてもらった歴史の裏話系の本を数冊。後は他の人たちも楽しめるような(もちろん僕も好きな)ファンタジー系やミステリー系、それと恐らく受験生用だろう数学の解説書のような本だ。
「結構借りれるんですね」
「ああ。一応読書同好会として図書館に申請してあるからな。少し配慮してもらってる」
同好会に向かう僕らの手には、何冊もの本を入れた重い袋。
本当は、僕の方が後輩なんだから大きい袋を持とうと思ったんだけど、礼人さんの「お前はちっこいから」の一言で小さい方を持たされた。
やっぱり礼人さんは優しい。
綺麗な顔に派手な頭だから、時々男子がやっかみでチャラそうだの性格悪そうだのと言う人がいるけど、それは絶対偏見だって断言できる。
……言えないけどさ。
だって、言ったら絶対に何でそんなことが言えるんだって聞かれちゃうだろうし。
そうなると、僕が同好会に入ってるって言わなきゃならないだろ?
喋っちゃいけないことだとは思わないけど、でもあの雰囲気は何となく……。
礼人さんを含めてみんなが壊したくないものだと思っていることは確かなようだから。
図書館に着くと、紫藤さん……、違った、礼人さんが奥に足を進める。
ああ……、まだ礼人さんって呼ぶのに慣れない。
心の中で思うだけでもドキドキする。
「歩?」
「あ、はっはい! えと、そうですね。……僕の好みを言っちゃうと、ミステリーとかファンタジーとかですね。あんまり暗いのは苦手なんで、出来ればワクワクするようなやつがいいです」
「なるほど。数は多くないけど、一応ラノベとかも置いてあるぞ。ミステリーなら、本格的な物から有名どころのシリーズ物までそろってる」
そう言って礼人さんが僕を手招きして、本棚の位置を教えてくれた。
「あの……」
「うん?」
「しど……、礼人さんの好きな読み物は何ですか?」
「俺か―? 特には決まってないけど……。面白いと思うのは小説よりも、歴史の狭間で絶対に教科書には載せられないような隠された人物像とか出来こととか。そういうことが書かれている本に、ついつい手は伸びるかな」
「そうなんですかぁ。歴史とか好きなんですか?」
「結構な」
「へえ~、……僕も読んでみようかな」
「歩も好きなのか? そういうの」
「えっ? あ、えっと。面白そうかなと思って!」
「そっか」
一瞬紫藤さ……、礼人さんは僕のことをじっと見て、それからクスッと笑って本棚の方へと歩いて行った。
その後ろ姿を見て何となく思った。
紫藤さんはどちらかというと、僕とは違ってスポーツとかが似合いそうだ。
だって、身長も高いしスラッとした印象だけど、筋肉も程よくついていて体幹もよさそうに見えるし。静かに読書している姿も様にはなるんだろうけど、絶対にテニスとかバスケとか……、そういう系統の方があっているような気がするんだ。
そうして僕らが図書館で借りたのは、礼人さんに薦めてもらった歴史の裏話系の本を数冊。後は他の人たちも楽しめるような(もちろん僕も好きな)ファンタジー系やミステリー系、それと恐らく受験生用だろう数学の解説書のような本だ。
「結構借りれるんですね」
「ああ。一応読書同好会として図書館に申請してあるからな。少し配慮してもらってる」
同好会に向かう僕らの手には、何冊もの本を入れた重い袋。
本当は、僕の方が後輩なんだから大きい袋を持とうと思ったんだけど、礼人さんの「お前はちっこいから」の一言で小さい方を持たされた。
やっぱり礼人さんは優しい。
綺麗な顔に派手な頭だから、時々男子がやっかみでチャラそうだの性格悪そうだのと言う人がいるけど、それは絶対偏見だって断言できる。
……言えないけどさ。
だって、言ったら絶対に何でそんなことが言えるんだって聞かれちゃうだろうし。
そうなると、僕が同好会に入ってるって言わなきゃならないだろ?
喋っちゃいけないことだとは思わないけど、でもあの雰囲気は何となく……。
礼人さんを含めてみんなが壊したくないものだと思っていることは確かなようだから。
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