僕の王子様

くるむ

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第三章

どう反応していいのか困ります

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「こんにちはー」
「おーい、お前ら。本、借りて来たぞー」

ドアを開けて声を掛けると、既に来ていた先輩方がドカドカとやって来た。

「わー、重かったでしょ。ご苦労様」

千佳先輩がニコリと笑って労ってくれた。

男から見ても可愛い先輩だよな。
場を和ませてくれるマスコット的な存在って言っても言い過ぎじゃない。

「ホラよ」

礼人さんが持って来た荷物を千佳先輩に手渡した。

「わ、重っ。……あ、剛先輩が頼んでた数学の本が入ってるよ」

そう言いながら千佳先輩は、後からやって来た東郷先輩にトンともたれかかりながら上向いた。

「……可愛い」

「えっ?」
「なんだと?」

思わず漏れてしまった僕の声に、千佳先輩はキョトンとして東郷先輩はジロリと僕を睨んだ。

「ああっ、すみません! 先輩に可愛いだなんて、失礼な事を!」

パカン!

「って!」

え?

更に後から白石先輩と一緒に出て来た黒田先輩が、(なんと!)東郷先輩の頭を軽く叩いた。

「おま……っ! なにすんだ黒田!」
「無駄に後輩を威嚇しないでください」

「そうだよー。剛先輩威嚇し過ぎ! 俺が可愛いことくらい周知の事実でしょ! それに歩君は僕なんかに興味なんて無いよ。ね?」

ふえっ!?

「あ、あの……。えと、その……」

なに、なんなの。
こういう時どう返事したら正解なのかなんて分からないよ!

ぽすん。

え?

アウアウする僕の肩を礼人さんが引き寄せていた。
引き寄せた状態で、指をぽんぽんとして僕を宥める。

「千佳―、歩を困らせてんじゃないよ。剛先輩も、後輩を怖がらせないでください。……それにしてもクロ、お前成長したなー」

そう言いながら礼人さんは黒田先輩に視線を向けた。
表情は、何となくからかいを含んでいるようだ。

……?

「……そいつ、お前の大事な奴なんだろ? 紫藤には世話になってるからな」

え!?

黒田先輩の思いもよらない発言にびっくりした。

そいつって……、僕のこと……?
大事って、大事って今そう言ったよね!

礼人さんはというと、黒田先輩にそうシレっと返されて一瞬目を見開いた後、『参ったなー』と小さくつぶやいた。

「クロに揶揄われるようじゃ、俺も終わりだな。な、シロ?」
「ええ?」
「なに言ってんだ、バカ。……違わないんだろ?」
「…………」

黒田先輩は意味深な感じを崩そうとはしない。
礼人さんはそれには何も答えずに、こちらもまたなんだか意味深な表情で、黒田先輩に静かに微笑んでいた。
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