プライベート・スペクタル

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第三話 第四章

第十二節

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「ここ…ね、それらしい部屋じゃあない……」
辺り一面に建ち並ぶコンピューターサーバーの様な機械類。様々な電子音や回転音。熱暴走を防ぐために室温は低く。大穴が空いていても息が白くなるほどだ。
古城の外観とは明らかに異なる異質さ…これまで操って来た機械類を考えるとここが何らかの重要な部屋である事を確信した。
「どうする……一応、全てぶっ壊しておく?」
『考え方が蛮族のソレ…ですが晴菜の残り時間も考えると、やるだけの価値は十二分にありそうですね…』
『炎装』を演じてかなりの時間が経つ。早いうちに決着を付けなければならない。
睦美の返事に炎の拳銃を構えた晴菜。引き金に指を絡める。
とその時…。
「『困るんだよなァ…』」
引き金を引く瞬間、ふと聞こえたR・Rの声。
それも相当近くにいるのか気配の様なモノすら感じることが出来る。
「『この機械達は俺自身のモノでな…自分の金で買ったし、ここまでエイコラサッサ運んだ大切なモノなんだ……そんな軽い引き金一つでそれを無駄にしないでくれ…』」
溜息を吐いたような声色のR・R。
未だに通信機越しの様な声は若干奇妙だが晴菜はR・Rがこの部屋にいる事を確信した。
「『…まあ敵であり艱難辛苦を乗り込んだ『爆炎』殿にはそんなの知ったこっちゃあないだろうし、グズグズしていたら機械とブレイクの奴が雪崩れ込んでくるだろう。急ぎたいのも分かる』」
「…じゃあ…どうするの?大切なモノの為に貴方自身が代わりに吹き飛ばされてみる?」
「『うーん、そうだなァ…そっちの方が良いな、そうさせてもらおう』」
「ッ!?」
晴菜の言葉にあっさりと応じたR・R。すると部屋奥の奇妙な位置に置かれた機械に光が点る。
「『ここまで辿り着いた者の顔を見るのはトワさんに任された『将』の責務だろうし…』」
玉座の様に鎮座し、一昔もふた昔も前、箱のような形状のパソコンが二つ積まれたような形状。光はその二つある画面が映ったモノだ。
画面にはスーツを着た男の後姿が見える。
「『それに俺も『爆炎』の姿を己が目で見たかったしね……』」
『まさか…』
そこで画面のスーツの男が振り返った。
「『それでは『創世神』のお二方。俺がR・R。この一戦の『将』を任された【星】だ…』」
恭しい動作でお辞儀をした画面の中の男。否、R・Rはそう名乗る。
『こんな、奇妙な姿の【星】が存在するとは……』
軽く絶叫する睦美。これまで異形の姿をした【星】を決して少なくない数見て来たが、まさかここまで珍妙奇天烈な姿は初めてであった。
「『世間一般じゃあ珍妙かと思うかもしれんが、今や骨董品のこのボックスの肉体にも結構愛着があるものだよ……それでもわかったろ?とても人前には見せれる姿じゃあないって事が…』」
「ええ物理的に無理ね…」
脚はおろか車輪も付いていないオブジェクトの様な姿。動くには人の手を借りて台車の上に乗る必要があるだろう。何とも日常生活をどう送るか非常に気になる姿である。
『晴菜?』
「っと…そうだったわね」
とそこで気持ちを元に戻した晴菜。追手に『炎装』コチラには時間制限があるのだ。相手のキングの駒が目の前にいる以上、斃してさっさとここの戦いを終わらせるべきである。
「吹き飛ばされるのは自分で良いって最初に言っていたわよね!?だったら望み通りにしてあげるわ!喰らいなさい!!」
炎のミサイルを顕現させ撃ち込んだ晴菜。ミサイルはR・Rの画面の身体に直撃し大きな爆発と共に黒煙が立ち上る。
だが……。
「『ああ、ほんの少し前に俺自身が言った事だからな、忘れる訳ないさ……』」
「…ッ!?」
「『ただ………』」
黒煙の中より聞こえるR・Rの声。確実に直撃、命中した筈なのにまるで何ともないかのような口調。
「『素直にかどうかはどうかは、話は別になるがな……』」
直後、高速で振るわれたロボットアーム。晴菜を殴りつける。
(速ッ!?)
想定外且つ死角からであったが普通に防御は出来た晴菜。引き金を引き絞り引き続けてR・Rへ弾丸を叩き込む。
だがそれも現れたロボットアームにより止められた。
「『速いだろう?そりゃあ…カメラ越しの様な遠隔ではない近距離…つまりは直だ。ラジコンと自分の身体なら速度も精密性も何もかも違うのは当然の事だろ?』」
ドンドンと現れるロボットアームや機械を操りながらそう発するR・R。
まるで【星】にも近しき挙動や力強さ。『炎装』の晴菜は問題なく対応出来てはいるが四方八方から襲い距離を開けられるような立ち回りにR・R本体を叩くにはなかなか至れていなかった。
「…くッ……」
(本体は一切動いていないのに……硬過ぎでしょ………)
アームを次々に破壊していく晴菜。
だが、ある瞬間に急に炎が弱まった。
「ッ…!?」
急に限界が来たかのように下がっていく炎の出力と比例するかのように増していく疲労感。
身に纏う炎もその形を保てず消え失せ、身体の輝きも失う。
(嘘でしょ…ここで…ッ!?)
『……ッ、まさかこのタイミングで……』
晴菜の『炎装』その限界が訪れてしまったのだ。
足元がぐらりと崩れる晴菜。その出来上がった大きな隙に躊躇なくアーム群の打撃を叩き込まれる。
防御も出来ずに直撃し吹き飛ばされた晴菜。壁に強く叩きつけられた。
「『時間切れだな…薄々察してはいたが、その強化形態やはり時間制限があったか……もう少し後に使われたと思うとゾッとしたが……ブレイクの奴のおかげで助かったな…』」
『晴菜ッ!?』
「大丈夫よ睦美…大丈夫……」
呼びかけにそう返してはいる晴菜。だが息も絶え絶え身体を起こそうと力を込めているようだが指先一つ動かせていない。
どう見ても限界である。
更に……。
「ふゥ…」「ようやく追イついたぜ」「まサか、こんな閉所で撒かれるとは…」
『マズイ…』
本来の入り口である扉が開きブレイクも雪崩れ込んで来た。
「『称賛をすれば、だな……少しお前のおかげと言っただけだ。このタイミングで来るとは中々に卑しい奴だなお前』」
「おいおいオイオイ」「折角、この戦いの王、『将』でアるお前の元に…」「『爆炎』が向かったト思い駆けつけてやッタのに……」「大丈夫と思った俺ガ馬鹿みたイだろうが…」
「『なぁにちょっとした皮肉だろ。それぐらい何も言わずに聞き流せ』」
「ムカつくナぁ…お前…」「だガ…」
「「「丁度いいタイミングで来れタから不問にすルかァ…」」」
「くッ…」
倒れている晴菜の姿を見てブレイクはにやりと笑みを浮かべた。

(まずいまずいまずいマズイマズイマズイ……)
このままでは晴菜が斃される。
四面楚歌、絶体絶命の状況が映る画面に睦美は打開案を思案する為に必死に頭を回す。
R・Rの機械を奪い取ってブレイクにぶつけ同士討ちで時間を稼ぐ?通信で後続の第三者に助けを求める?ナビゲーターの自分が使える手で有効な案としてこれぐらいしかさっと思い浮かばない。
だが晴菜はいつ回復できるのか?そもそも今現在後続はいるのか?そして間に合うのか?どれもこれも不確定で望み薄だ。
しかしここで何かをしないと晴菜が斃される事だけは確かであった。
「晴菜。私が機械をハッキングして可能な限り時間を稼ぎます。晴菜は少しでも動かせるようになったら全力で撤退を……」
兎にも角にも動かねばならない。晴菜に指示を与えつつ睦美はハッキングを試みようと端末に触れる。
とそこで通信が入る。
『……さん…睦美さん…ッ!』
「その声ミコですかッ!?」
声の主、それはミコであった。
「意識が戻ったんですね、良かった!?」
『はいッ!これからという時に気絶してしまい申し訳ありません!』
元気のよい返答に、その点に関しては睦美は安堵する。
『ところで睦美さん。晴菜さんはピンチなんですよね!?』
「えっ…ええそうですが……」
『今私が向かっています!安心して下さい!!』
「ミコが!?」
思いもよらない援軍。だが睦美の気持ちとしては一概には喜べずにいる。
援軍として嬉しいのは確かだ。だが今、場にいるのは『魔女の旅団』の構成員の二名だ。
ミコが果たして大丈夫かどうか…。最悪、晴菜共々斃されてしまうかもしれない。
『…睦美さんの心配も分かります。晴菜さんが苦戦している状況…そんなのに私が居て良いものか……』
「…ッ、それは…」
『ですが今は私を信じてみてください。私が何とかします!…いいえ、して見せます!!』
「ミコ……わかりました」
そこであることを察した睦美。
仲間がここまで言うのだ。信じずに何が仲間だ。
「道はナビせずとも簡単です。壁が穿たれた事による大穴そこを突っ切ってください!」
『了解!わかりましたァ!』
それに睦美の想定が正しければ、ミコは……。

『晴菜聞こえましたか?…今からそこにミコが……』
「…ええ、聞こえているわよ………」
二人のやり取りを聞いていた晴菜。絶体絶命の状況、これまでの戦いでも何とかなった。
どうやら今回の戦いでもそうらしい。そんな確信がある。
それにこの戦い。最初から最後まで彼女が主役だったようだ…。だったら主役の花道を飾ってやるのも先輩としての役目だろう。
「ブレイクにR・R…どうやらアンタたち何処までもツキが無かったようね…」
「『ん?…』」
「一体何ヲ…」「言っテいるんだ…」
「今回の戦い。その真打の登場よ……」
『お任せください晴菜さん!この夜剣・ミコ!!』
隠れていた月。その雲がようやく晴れるのだ。

「【星】としての初舞台キッチリと果たせて見せましょう!!」

大きな足音を響かせ、装いを新たにした【星】ミコが部屋へと飛び込んで来た。

※次回更新は5月11日(土)予定となります。
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