プライベート・スペクタル

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第三話 第四章

第十三節

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「お待たせいたしました晴菜さん!」
「待ちくたびれたわよミコ。ふふッ……」
勢いよく部屋に飛び込んできたミコ。ブレイク達との間に立った彼女に晴菜は笑みで応じる。
マントとタイ付きの儀礼用の軍服を身に纏い。背には『月下の雫』。腰まで伸びる髪を彩るカチューシャ。そのどれもに、月と水雫のような意匠が施されている。
初めて出会った時の学生服を弄った姿を思わせるが、虚仮威しではない……特有の風格の様なモノをきちんと有している。コレが【星】夜剣・ミコだという理想を理解出来る凄みを纏っていた。
「早速で悪いけれど…任せて良いかしら?」
「ッ……ここまでありがとうございます晴菜さん!ここからはわた…いいえボクが引き受けます!」
「ええ、出会った時…その続きを見せてもらうわよ」
「はいッ!」
少し息詰まるような仕草を見せた後、ミコは元気よく頷いた。
「『コイツは確か…潜り込んでいた時のお前の仲間の一人だったよな…?』」
「あア…どうやら【星】に覚醒しタらしいな…」「少し前まデは【星具】を担いだだけのただの小娘だったんダが……」
「『成程…通りでテンションがアッパー気味になっているわけだ……』」
ミコの様子を見て軽く笑うR・R。
【星】に覚醒したての者は言い知れの全能感を得ている。その為程度に差があれどハイになっている者が多い。おそらくミコもそうなっているだろう。
だがハイになっている分、全能的に感じている自分の力も過信している。【星】ではない一般人に対してなら問題はないが、同じ【星】相手ならその過信は大きな弱点となる場合も多い。ミコには警戒は必要だがあまり問題じゃあないだろう。
「『だがブレイク。あの背負った【星具】『月下の雫』。あれだけは注意しろよ。アレはお前の天敵に近い筈だ…』」
この戦いを任されている以上、この城内で起こった情報は全て見ていたR・R。
その中でも中間地点手前の相対戦、従士の二名をコントロールしたこちら側の【星】の二名を遠隔で生命力を吸い取り戦闘不能にさせていた。
【演目】で作られたコードを経由して行っていた事を考えると、全てが同一であるブレイクは一体が吸われれば連鎖的に全員に影響を及ぼすだろう。
「アあッ…」「言わレなくともわかっテいるさ……」「アの場所に居たのだカらな…」「あの魔剣ノ性質上、一人が受ければ全員ニ連鎖するだロう…」
「ダが、生命力を吸収されルのは剣に触れテいる時ノみ!」「昔ノ偉い人もよく言っただろウ?」「「当たらなきゃどうという事はない」ト!」
そう言ってミコに向かって突っ込むブレイク。四方八方から一斉に殺到する。
そんなブレイクに対し背中からシャリンと『月下の雫』を抜き放ったミコ。柔らかな形で切っ先を向ける。
『この構えは…?』
「『先の様な抜刀術は使わないのか?』」
先の構えとは異なるいかにも突きを放つと予告した様な迎撃の構え。睦美とR・Rの双方ともに首を傾げる。
「喰らエ!」

【演目】『天使・戦技 トーレトス使天  ×8バイエイト

演たれたブレイクの【演目】。数字の通りの八方から完全差なしのシンクロ攻撃。
逃げ場のない打撃は空気が爆ぜる程の威力を叩き出す。
だが……。
「「「「「「「ナっ!?」」」」」」」「ぐッ!?」
ダメージを受けたのはブレイクの方、一人の肩から血が噴き出ていた。
対するミコはマントが少し傷つきつつも無傷であった。
「『何だ!?何が起こった!!?』」
「……今の見えた睦美?」
『ふむ…見たまましか言いようがありません。八方の打撃、それを全て丁寧に捌いて一撃を入れた…そうとしか言いようがありません』
睦美の応答こたえに晴菜も彼女も同じように見えていたのだと理解する。
言った通り、ミコはブレイクの【演目】を剣の切っ先を用いて逸らした。そして手近な一人を迎撃した。そうとしか言えないのである。
特殊な異能でも【演目】でもなくただ単純な身体能力。自前の速度のみでこの現象を引き起こしたのだ。
『馬鹿一号に師事しているが故に身に着いた精密な剣捌きもありますが……それを除いてもあの速度とそれに対応できる五感。ことその二点に関して言えば『創世神』(われわれ)の中でもトップクラスに値するかもしれません…』
「そうね…でも……」
「さ、騒ぐんジゃあねェR・Rッ!」「俺ノ【演目】を最適な動きで躱された上で一発貰ったノはかなりムカつくガ…」「ただ少シだけ刺さレただけに過ぎナい!」「それにこの小娘はパワーはそれ程じャあ無い!」
肩の傷を抑え叫ぶブレイク。傷は薄く突き刺した程度であり彼の言うように力の部分で言えば弱いようである。
とそこで傷にあるものを見つけたブレイク。それは微かに光る点であった。
「コ、これは?」
触って取ろうとするブレイク。だが、点は取ることが出来ずそこに在り続ける。
ポイント
ミコの言葉と共に灯された光は輝きを増す。
ライン
光は宙にラインを描き始め点が線へと変わる。
吸収アブソリュート
そして線がミコへと完全に伸び切った瞬間、傷をつけられたブレイクの肉体が急激に痩せ細り始めた。
「あぎゅ!!??…ああぁ…」「「「!!?」」」「まズい…」
ミイラの様に干からびていく自分に即座にそう感じたブレイク。躊躇なくその自分の首をへし折り始末をつける。
「こ…」「こレはッ…」「どうイうことだ……ッ!?」
生命力を吸収された事から、『月下の雫』の能力だという事は即座に察するブレイク。
だが以前は剣に触れない限り大丈夫だった筈である。
「『まさか……コレが本来の性能かッ!!?』」
R・Rがたてた推測。まさにその通り…これが『月下の雫』その真骨頂であった。
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