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第二章北方四島の絆
16従弟
しおりを挟む秋とは言えど、北の領地は真冬のように寒い。
王都暮らしの人間には厳しい季節に冷水を浴びればどうなるか。
「お止めください叔父上!」
「フィルベルト!」
「何故二人に…エグバートは貴方様の息子とナージャは!」
急いで二人を立たせようとするも、エグバートもナージャも動かなかった。
「フィルベルト様、良いのです」
「水を被ったのは私達の意思です」
「何を馬鹿な事を」
二人は懺悔するような表情で、よく見ると貴族にしてはあまりにも質素な装いだった。
高位貴族である二人がありえない。
「叔父上、二人は何も悪くないというのに」
「悪くない…本気で申しているのか」
「私と弟の事は全てにおいて私に非があります。何よりエグバートが私の傍を離れたのは派閥争いを激化させない為ではありませんか」
そう、エグバートは本来ならば俺の側近になる予定だった。
だけど、派閥の事もあり。
俺と親しい間柄のエグバートはアルセウスの傍の方が後に安全だった。
アルセウスの側近としても申し分ないし、婚約者のナージャはマリアンナと親友だったのだから。
「殿下…申し訳ありません」
「この度の不祥事に私達は何もできず」
「マリアンナ嬢との事は気にするな。悪いのは私だ…だから」
「違うのです!」
ナージャが泣きそうな顔で訴えた。
「フィルベルト様には何も非がないのです」
「アルセウス様は野心家な方でありました。故に私達はあの方の側近となりました。内乱となるのを防ぐために」
「は?」
望んで側近になったんじゃなかったのか?
これではまるで、アルセウスに忠誠を誓っていないと言っているようなものじゃないか。
「勿論、私は誠心誠意お仕えするつもりでした」
「失礼ながらアルセウス様は才を持っておられましても、足りない物が多すぎるのです」
確かにアルセウスは俺が一年かかって習得したスキルを一週間で習得できる程の才を持ち。
マリアンナ嬢も10歳で政治が語る事ができた。
「どんなに才があれど人の善悪を区別できなかった幼子と同じでした」
「独りよがりな考えをお持ちでしたので…」
確かに天才は周りと合わせることができない。
それでも理解しようとしてくれる人がいれば、例え難しくても努力できる。
「ですが、アルセウス様は誰かに合わせられる方ではありませんでした」
「むしろ王族が何故そんなことをと…マリアンナも自分の考えが正しいと譲りませんでした」
周りにいた者に恵まれなかったのか。
俺は物心つく前からマルシェが育ててくれて、世話係のじいやは高齢だったからなのもあるが。
頭ごなしに怒る事はなかったし。
だからと言って二人だけの責任じゃないだろ?
人間関係が上手く行かないのはお互い様なのだから。
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