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第三章 仮想と現実
第51話: 黄金の晩餐、家族の肖像
しおりを挟む迷宮が消え去り、再び穏やかな風が吹き抜ける黄金の神域。
健太郎は、まだ少し涙の跡を残しながら自分の胸に顔を埋めているアイリスの頭を優しく撫でた。
「よし、アイリス。仲直りの印に、飯でも食うか。……まずは、その見事な稲穂の収穫だな」
アイリスは、先ほどの魔力暴走による激しい魔力喪失と、本音をさらけ出してしまった恥ずかしさから、第一形態の幼い姿のまま「う、うむ……あるじ……、頼むのじゃ……」と消え入りそうな声で答え、健太郎の服の裾をぎゅっと掴んで甘えていた。
健太郎と結衣は、たわわに実った黄金の稲穂に手をかける。
流石は神域の産物というべきか、収穫したばかりの籾は、ゲーム的な補正により乾燥の工程を必要とせず、剥いたそばから白く輝く瑞々しい米粒が顔を出した。
「すごい……。これなら、すぐに炊けますね」
結衣が驚きの声を上げる中、健太郎は手際よく工房の調理場に火を焚べた。
最高級の米に加え、地下の氷室に保存していた最上級のボア(大猪)とディア(巨鹿)の肉をふんだんに取り出す。
パチパチと薪が爆ぜる音と共に、米が炊き上がる甘い香りと、肉が焼ける芳醇な匂いが工房を満たしていく。
「ほら、アイリス。そんなに隅っこにいないで、こっちにこい」
結衣は、初めて見る幼い姿のアイリスに目を細めた。
大人びた時の威圧感はなく、今の彼女はただ守ってあげたくなるような愛らしさに満ちている。
「アイリスちゃん、本当に可愛い……。そんなに恥ずかしがらなくていいのよ?」
「……むぅ、小娘、あまり妾を子供扱いするでない……。んっ、な、撫でるなと言うに……」
アイリスはそっぽを向きながらも、結衣の優しい手つきに抗えず、どこか心地よさそうに身を委ねていた。
やがて、テーブルの上には贅沢かつ豪華な食事が並んだ。
ふっくらと立ち上がる湯気の向こうに輝く白米。肉汁溢れるボアとディアのステーキ。そして、三人の笑顔。
「いただきます!」
一斉に箸を伸ばす。
口いっぱいに広がる米の甘みと、野性味溢れる肉の旨み。
現実での契りを経て、神域での嵐を乗り越えた三人が囲む食卓は、これまでのどんな宴よりも濃密で、温かな「家族」の味がした。
【再始動、神域の狩猟】
豪華な晩餐で胃袋と心を満たした三人は、暖炉の火を眺めながら穏やかな余韻に浸っていた。
すると、結衣の膝の上でまどろんでいたアイリスが、ふと顔を上げて黄金の瞳を輝かせた。
「主よ……久しぶりに、昔のように『弓』に戻って狩りに行きたいのじゃ。この溢れる力を、獲物に叩き込みたくて体がうずうずするわい!」
その提案に、健太郎は自身の無骨な掌を見つめ、不敵に口角を上げた。
「そうだな……革の在庫も心もとなくなってきた。結衣との新しい生活のためにも、上質な素材を仕入れに行くか」
結衣は少し前の出来事を思い出し、懐かしそうに微笑む。
「『狩り』……少し前に、三人で白銀蜘蛛の糸を獲りに行ったのを思い出しますね。あの時も、健太郎さんの強さに驚きましたけど……」
健太郎は、傍らでふんぞり返るアイリスを見て、悪戯っぽく笑った。
「アイリス、覚えているか? 初めてお前を弓に変えて試射した時のことを。狙った獲物を仕留めるどころか、その一射で獲物ごと周囲を爆散させたじゃないか」
アイリスは図星を突かれたように頬を赤くしながらも、誇らしげに胸を張った。
「くっ、あったのう、そんなことも! あの時はまだ力の加減が分からなかったのじゃ。主も、あまりの威力に腰を抜かしておったではないか!」
二人の昔話を聞いて、結衣は目を丸くして驚いている。
そんな彼女を見て、アイリスは得意げに大人の姿へと一瞬で変貌し、長い銀髪をかき上げた。
「良いか結衣よ、よく見ておくがよい。妾が弓となり、主がそれを引く時、この神域に敵うものなどおらぬ。妾の真の威力を、その目に焼き付けてやるわい!」
意気揚々と立ち上がるアイリス。
健太郎は、使い込まれた狩猟用の籠手とレザージャケットを羽織り、結衣の手を引いた。
「よし、行くか。今日の獲物は、新しい『家族』の門出を祝うに相応しい大物にしよう」
三人は工房の扉を開き、月明かりに照らされた未知の原生林へと足を踏み出した。
それは、現実の絆を深めた三人が、初めて挑む「家族としての初陣」だった。
【光の連撃、爆砕の洗礼】
神域の原生林は、夜の帳が下りてもなお、植物たちが放つ微かな燐光によって淡く照らされていた。
健太郎は、手慣れた様子で周囲の気配を読み、結衣の肩を優しく叩いて前方の一角を指差す。
「見ていろ、結衣。まずは小慣らしだ」
そこには、かつて健太郎がこの世界で初めて狩った、懐かしき「ホーンラビット」が耳を立てて佇んでいた。
健太郎がアイリスの手を取ると、彼女の身体は瞬く間に黄金の粒子へと分解され、彼の左手の中に、重厚かつ繊細な装飾が施された「黒鋼樺の弓」へと姿を変えた。
「健太郎さん……矢は? 矢を持っていないようですが……」
結衣が不思議そうに尋ねた、その瞬間だった。
健太郎が弦を引き絞ると、周囲の魔力が一点に収縮し、眩いばかりの光の矢が形成された。
「矢ならここにある。アイリス自身が、最強の矢を編み出すのさ」
結衣はその光の筋を見て、息を呑んだ。
――あの日。自分が森でフォレストベアに襲われ、死を覚悟した瞬間。
巨獣の眉間を貫き、自分を救ったあの鮮烈な光の正体が、今、目の前にある「アイリスの矢」だったのだと確信した。
「あの時、私を助けてくれたのは……やっぱり、健太郎さんとアイリスちゃんだったんですね……」
健太郎は小さく頷くと、狙いを定めた。
「いくぞ、アイリス」
『いつでもよいぞ、主! 派手にやってやるわい!』
放たれた光の矢は、空気を切り裂く音さえ置き去りにして、一直線にホーンラビットへと吸い込まれた。
命中した、と思った次の瞬間。
――ドォォォォン!!
凄まじい衝撃波と共に、ホーンラビットがいた場所が爆散した。
土煙が舞い、光の余波が周囲の木々を震わせる。
跡形もなく消え去った獲物の後には、ただ焦げた地面だけが残されていた。
「あ……っ、えええっ!? 爆発、しました……?」
目を見開いて固まる結衣に、アイリスの誇らしげな声が弓から響く。
『ふふん、見たか結衣! これが妾の実力よ! 獲物の原型を留めぬのが玉に瑕(きず)じゃがな!』
健太郎は苦笑いしながら、弓の弦を軽く弾いた。
素材集めとしては少々手荒すぎる「爆砕の洗礼」。
しかし、その威力こそが三人の新たな門出を祝う、最強の号砲となった。
【健太郎(三神健太郎) スキル熟練度】
■ 生産系
• レザークラフト・マスタリー:Lv.6 (95/100)
• 料理マスタリー:Lv.7 (20/100)
• 土木・建築マスタリー:Lv.7 (50/100)
• 農業マスタリー:Lv.3 (20/100)
• 慈愛の加工:Lv.32 (60/100)
■ 戦闘系
• 弓術マスタリー:Lv.19 (10/100) (+Level Up!)
• アイリス(聖霊弓)との再同調による習熟。
• 気配察知:Lv.13 (60/100) (+20)
• 不屈の意志:Lv.11 (50/100)
■ 身体強化系
• 全生命力の解放:Lv.2 (90/100)
• 性技(手入れ):Lv.20 (80/100)
■ 特殊スキル
• 聖霊同調(神域):Lv.43 (20/300) (+Level Up!)
• 家長としての威厳:Lv.13 (40/100) (+20)
• 【工房主の刻印】:Lv.2 (90/100) (+10)
• 【神域の守護人】:Lv.4 (60/100) (+20)
【早川結衣(結衣) スキル熟練度】
• 裁縫マスタリー:Lv.13 (80/100)
• アイリス工房の一員:Lv.16 (80/100) (+20)
• 誠実な帰依:Lv.28 (80/100) (+20)
• 素顔の早川結衣:Lv.40 (80/100) (+20)
• 被覚醒:Lv.28 (80/100) (+30)
• 三位一体の悦楽:Lv.13 (80/100) (+30)
• 魂の契約:Lv.21 (0/100) (+Level Up!)
• 【正妻の余裕】:Lv.4 (50/100) (+20)
• 魔力付与(バフ):Lv.1 (40/100) (+30)
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