[R18]2度目の人生でスローライフ?ハーレムだっていいじゃないか

白猫 おたこ

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第三章 仮想と現実

第50話:神域の嫉妬、暴走する聖霊

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 視界が白光に包まれ、現実の意識がデジタルへと変換される。
二人が『アイリス工房』へと降り立つと、そこにはいつもとは明らかに違う、張り詰めた空気が漂っていた。

「……主、遅すぎるのじゃ!!」

 神域の中央、黄金の稲穂が揺れる向こう側で、アイリスが立っていた。
 少女の姿ではなく、成熟した大人の美しさを湛えた姿。
しかし、その完璧な美貌は怒りで真っ赤に染まり、頬をこれでもかというほど膨らませて、健太郎と結衣を睨みつけていた。

「妾を一人残して、現実(あちら)で何をしていたのじゃ! 待てど暮らせど主の気配が戻らぬから、妾は……妾は……!」

 アイリスの声が震える。だが、彼女の言葉が止まった。
 精霊としての鋭敏な感覚が、二人の間に流れる「変化」を瞬時に捉えたのだ。
 健太郎の魂に深く刻まれた、新たな、そして濃厚な女の情愛。
 そして結衣の全身から溢れ出し、魔力と混じり合っている健太郎の「証(しるし)」。

「……!? なん……だと……?」

 アイリスの瞳が大きく見開かれる。彼女の視線が、健太郎の隣で少し恥ずかしそうに、けれど誇らしげに寄り添う結衣へと向けられた。
「主……。主は、この小娘と……現実でも、交わったのじゃな? 魂の芯まで、泥臭く、深く……っ!」

 事実を悟った瞬間、アイリスの周囲の魔力が爆発的に膨れ上がった。
 彼女にとって、健太郎は自分が司る神域の主であり、魂を分かち合った半身。
それを、現実の女に奪われた(と感じた)衝撃は、精霊の矜持を粉々に砕いた。

「許さぬ……許さぬぞ! 妾を差し置いて、現実の女が先に主の『真(まこと)』を手に入れるなど……断じて認めぬっ!」

 アイリスの髪が逆立ち、工房全体が激しく揺れ始める。
黄金の稲穂は暴風に晒されたように乱れ、空の色は嫉妬の色を写したかのように禍々しい紫へと変色していく。

「アイリス、落ち着け! 確かにそうだが、お前だって大切な……」

「黙るのじゃ! 主は妾の、妾だけのものなのじゃ!!」

 嫉妬により暴走を始めたアイリスの背後から、無数の魔力の触手が溢れ出し、工房の壁を、そして健太郎たちの周囲を侵食し始める。
 神域の管理者である彼女が我を忘れた今、アイリス工房は崩壊の危機を孕んだ「嫉妬の迷宮」へと変貌しようとしていた。

【深層の迷宮、精霊の慟哭】

 黄金の稲穂が揺れていたはずの工房は、一瞬にしてその姿を消した。
 アイリスの魔力暴走によって歪められた空間。
そこに現れたのは、上下左右の概念すら曖昧な、無数に連なる「扉」の迷宮だった。

「これは……アイリスの心象風景か……っ」

 健太郎と結衣は、浮遊する足場の上で周囲を見渡した。
 何百、何千とある扉の数々。
その一つ一つには、アイリスがこれまで健太郎と過ごしてきた記憶や、精霊として独りで過ごしてきた悠久の時間の思い出が刻まれている。
 扉の隙間から、アイリスの声が重なり合って聞こえてくる。

『主、今日は何を創るのじゃ?』

『妾は、主とずっとここにいたい……』

『嫌じゃ、主をあの女に取られたくない……!』

「健太郎さん、あそこ!」

 結衣が指差した先、迷宮の最深部。そこには、赤黒い魔力の渦に包まれ、膝を抱えて震えるアイリスの姿があった。
彼女の周囲には、健太郎とのこれまで過ごした彼女の記憶が、ガラスの破片のように鋭く浮遊している。

「来ないで……っ! どいつもこいつも、妾を一人にして消えてしまうのじゃ! 現実なんて、妾には行けぬ場所へ、主まで行ってしまった……っ!」

 嫉妬という名の激しい拒絶反応。
彼女は、自分が現実の肉体を持たない「データ」に過ぎないという事実に、改めて絶望していたのだ。
健太郎と結衣が結ばれたことで、自分だけが取り残されたような疎外感が、彼女を狂わせた。
 健太郎は、襲い来る魔力の触手を跳ね除け、アイリスへと歩みを進める。

「アイリス! 俺はどこへも行かない! ここにいる俺も、あっちにいる俺も、お前を創った俺なんだ!」

「嘘じゃ! 主はあの女を抱いた! 妾の知らぬ熱を、あやつに与えたのじゃろう!?」

 アイリスが叫ぶと、迷宮の扉が一斉に開き、中から彼女の「寂しさ」の記憶が溢れ出した。
 健太郎は、その激しい感情の奔流を受け止めながら、ついに彼女の目の前へと到達する。

「……結衣を抱いたのは、事実だ。だが、お前を想う気持ちが消えたわけじゃない。むしろ、愛することを知ったからこそ、お前の寂しさも、今の痛みも、もっと深く理解できる」

 健太郎は、暴走する魔力で傷つくのも厭わず、赤黒い渦の中へ腕を差し入れた。
職人の、温かく、確かな体温。
彼はそのまま、泣き叫ぶ大人の姿のアイリスを、強く、強く抱きしめた。

「アイリス。俺のすべてで、お前の深層(なか)を鎮めてやる……。俺を、お前の一部として受け入れろ!」

 魂と魂が直接ぶつかり合う、聖霊同調を超えた「深層融解」。
健太郎の決意に呼応し、迷宮全体が激しく光り輝き始めた。

【聖霊の涙、再編される絆】

 健太郎の腕の中で、赤黒い魔力の渦が次第に浄化され、大人の姿をしていたアイリスの輪郭が揺らぎ始めた。
激しい嫉妬の嵐が凪いでいくと共に、彼女の姿は、出会った当初の、あの幼く愛らしい第一形態へと戻っていく。

「……あ、う……あるじ……っ、あるじぃ……!」
 幼いアイリスは、健太郎の胸に顔を埋め、子供のように声を上げて泣きじゃくった。
 迷宮の中に浮遊していたガラスの破片のような記憶たちが、柔らかな光を帯びて二人の周りをゆっくりと旋回し始める。

 そこには、聖霊として初めて顕現した時の、震えるような喜び。

 まだ何もない荒野に、健太郎と二人三脚で小さな「工房」の土台を築き上げた、土の匂いのする記憶。

 二人きりで分け合って食べた、塩辛いけれどこの世の何よりも美味しかった干し肉の味。

 そして、その記憶の環の中に、一際輝く新しい光があった。

 今の『アイリス工房』の立派な食卓を囲み、健太郎と、そして結衣と三人で、笑いながら食事を共にしている光景――。

「……アイリス、お前……」

 健太郎は気づいた。アイリスは、ただ嫉妬に狂っていたわけではない。
彼女の心の奥底では、結衣という存在を既に受け入れ、三人で過ごす賑やかな日常を「幸せ」だと認めていたのだ。
認めていたからこそ、自分だけが現実という壁に阻まれ、その輪から取り残される恐怖に耐えきれなかった。

「妾も……あの中にいたいのじゃ……。あの、温かい食事の場所に、ずっと……っ。結衣を、追い出したくない……でも、主を奪われるのは、嫌なのじゃぁ……っ!」

 アイリスの本音に、健太郎は一層強く彼女を抱きしめた。
そして、背後で静かに見守っていた結衣が、二人のもとへ歩み寄り、アイリスの小さな背中にそっと手を添える。

「アイリスちゃん……ごめんね、寂しい思いをさせて。でも、私はアイリスちゃんから健太郎さんを奪ったりしないわ。私たちは、三人で一つ。……でしょ?」

 結衣の優しく、かつ「正妻」としての包容力に満ちた言葉が、アイリスの心を完全に解きほぐした。
 迷宮の扉が次々と光に溶け、禍々しい紫の空は、再び穏やかな黄金の神域へと戻っていく。
 聖霊の涙は、神域の糧となり、工房をより強固なものへと再編していく。

 現実での契りと、神域での和解。
二つの世界が、今、三人の絆によって完全に一つに重なろうとしていた。

【健太郎(三神健太郎) スキル熟練度】
■ 生産系
• レザークラフト・マスタリー:Lv.6 (95/100)
• 料理マスタリー:Lv.6 (60/100)
• 土木・建築マスタリー:Lv.7 (50/100)
• 農業マスタリー:Lv.2 (30/100)
• 慈愛の加工:Lv.32 (0/100) (+Level Up!)
• 聖霊の原初の記憶を修復し、絆を再定義した。
■ 戦闘系
• 気配察知:Lv.13 (20/100)
• 不屈の意志:Lv.11 (50/100)
■ 身体強化系
• 全生命力の解放:Lv.2 (90/100)
• 性技(手入れ):Lv.20 (80/100)
■ 特殊スキル
• 聖霊同調(神域):Lv.42 (50/300) (+Level Up!)
• アイリスの幼子のような原初の魂と深く共鳴した。
• 家長としての威厳:Lv.12 (50/100) (+50)
• 【工房主の刻印】:Lv.2 (50/100) (+40)
• 【神域の守護人】:Lv.4 (0/100) (+Level Up!)

【早川結衣(結衣) スキル熟練度】
• 裁縫マスタリー:Lv.13 (80/100)
• アイリス工房の一員:Lv.16 (0/100) (+Level Up!)
• 誠実な帰依:Lv.28 (0/100) (+Level Up!)
• 素顔の早川結衣:Lv.40 (0/100)
• 被覚醒:Lv.28 (0/100) (+Level Up!)
• 三位一体の悦楽:Lv.13 (0/100) (+Level Up!)
• アイリスとの和解により、精神的な「三位一体」が完成。
• 魂の契約:Lv.20 (0/100) (+Level Up!)
• 【正妻の余裕】:Lv.3 (50/100) (+Level Up!)
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