《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう

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二章 黒曜麒麟

九十六話

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ソラとハーデンは、互いの肩を支え合うようにして、なんとか九階へと辿り着いた。

階段を上りきったところで、二人はその場に腰を落とす。

荒い呼吸だけが、静かな階層に残った。

「……助かったよ、ソラ君」

ハーデンはそう言って、小さく頭を下げた。

「それと……すまない。結果的に、私が足を引っ張ってしまった」

苦々しい表情で続ける。

自分が狙われ、倒れたことで仲間に余計な危険を背負わせた。その自覚が、言葉の端々に滲んでいた。

ソラはすぐに首を振る。

「そんなことないです」

はっきりと、迷いなく言った。

「黒曜麒麟が、あんな風に攻撃してくるなんて……誰も予想できませんよ。先生のせいじゃありません」

しばし、沈黙が落ちる。

遠くから微かに響く衝撃音が、今なお戦いが続いていることを物語っていた。

やがて、ハーデンが静かに口を開く。

「……こんなことを言える立場ではないのだが」

一度言葉を切り、ソラを見る。

「皆に、引くよう伝えてくれないか。これ以上は……」

その言葉を、ソラは最後まで聞かなかった。

首を、ゆっくりと横に振る。

「……もう少しなんです、先生」

その声には、確かな熱がこもっていた。

「さっき――マルコが魔法で黒曜麒麟を殴り飛ばした時……」

ソラは思い出すように、視線を伏せる。

「……角に、ほんの僅かですけど。ヒビが入ったのを、確かに見たんです」

ハーデンの目が、わずかに見開かれる。

「あと、ほんの少しなんです」

ソラは拳を握りしめる。

「今なら、届くかもしれない。みんなも……そのために戦ってます」

ソラはそう言って立ち上がりみんなの元に向かおうと再び歩き出す。

「危険だ……やめるんだ、ソラ君……!」

ハーデンは痺れる体に無理やり力を込め、ソラの腕を掴もうとする。

足は思うように動かず、膝が笑い、立ち上がることすらままならない。それでも必死だった。

――自分は、もう戦えない。

だからこそ、これ以上生徒たちを前線に立たせるわけにはいかなかった。

教師として、また短い時間とはいえ同じダンジョンで戦ったシーカーの仲間として。

「私が戦えない以上……君たちだけで、Bランクダンジョンのボスに挑ませることはできない……!」

声が震える。

「理屈ではない……ただ、誰にも死んでほしくないんだ……!」

それは命令でも忠告でもなく、もはや懇願に近い響きだった。

だが――

ソラが振り返った瞬間、ハーデンは悟ってしまう。

止められない、と。

ソラの目は、まっすぐだった。

恐怖も迷いも抱えたまま、それでも前を向く覚悟を宿した目。

その眼差しを見た瞬間、ハーデンの胸の奥で何かが弾けた。

(……ああ)

脳裏に、鮮やかな記憶が蘇る。

仲間と笑い、依頼を無事に完了し、そして酒を飲む…辛くても楽しいと感じていた自分が若かったあの頃を。

黄金色に輝いていたわけじゃない。

だが、黄金よりも楽しく、眩しく、二度と戻らない時間。

忘れたくて、忘れられなかった過去。

「……止められない、か」

ハーデンは小さく息を吐く。

教師としての理性が、仲間としての恐れが、過去の後悔が――すべて重なり合い、それでもなおソラの覚悟を否定できなかった。

ソラは、かつてのあの子とあまりにもよく似ていた。

そしてハーデンは知っている。

こういう目をした者を、力ずくで止めることはできないということを。

戦いは、選ばれてしまったのだ。





ソラとハーデンが階段へと向かった直後、
マルコの魔法の水の魔神と黒曜麒麟の戦いは、
一瞬で様相を変えた。

それは、まるで映画のワンシーンのような激しさだった。

水の魔神がうねる水流を無理やり形に保ったまま黒曜麒麟へと覆いかぶさり、その巨体を押し倒して、勢いよく拳を振り下ろした。

――ドゴッ!!

水とは思えない、重く鈍い衝撃音が階層全体に響き渡る。

地面が揺れ、足首まで満ちた水面が大きく波打った。

黒曜麒麟も黙って殴られているわけではない。

雷を纏った体を激しく震わせ、水の魔神を振り払おうと暴れる。

雷光が走り、火花が散る。

あまりの圧に、誰一人として割り込むことができない。

だが、黒曜麒麟がその身に纏った雷を一気に解き放った。

轟音とともに雷が炸裂し、水の魔神の体が内側から弾ける。

巨大な水の巨人は形を保てず、霧となって空気中に散っていった。

「……!」

黒曜麒麟は、勝利を確信したかのようにゆっくりと身を起こす。

その瞬間にユナが氷魔法を解き放つ。

天井近くに生成された巨大な氷の塊――ツララが、黒曜麒麟に吸い込まれるように落下する。

一直線に、黒曜麒麟の顔面へ。

鈍く、しかし確かな手応えとともに、氷は砕け散った。

黒曜麒麟が低く唸り、後退する。

そしてついに、誰の目にも分かるほど角に走るヒビが、明確に広がっていた。

「あっ……!」

誰かが声を漏らす。

見間違いではない。

遠目からでも確認できるほど、黒曜麒麟の角は確実に砕けへと近づいている。

「いける……!」

「もう少しだ……!」

希望が、戦場に満ちる。

全員の気持ちが、自然と前のめりになる。

――だが。

その高揚の中で、ふとした違和感に誰かが気づく。

「……マルコ?」

視線の先。

黒曜麒麟のすぐ近く――

マルコが、まだそこから離れていなかった。




水の魔神が撃ち倒された瞬間、
マルコの視界は一気に白く滲んだ。

頭がぐらりと揺れ、耳鳴りがする。

まるで急激な貧血に襲われたかのように、体から力が抜けていく。

――当然である。

《水の魔神》は、今のマルコにとって明らかに背伸びした魔法だった。

一度使えばこうなることは、本人が一番よく分かっていた。

それでも。

(……後悔は、ない)

ハーデンを救うには、あの瞬間に使うしかなかった。

他に選択肢はなかったのだと、マルコは自分に言い聞かせる。

言うことを聞かない体に、無理やり力を込める。

膝が震え足元がふらつくが、それでも視線だけは逸らさない。

マルコは、黒曜麒麟を見据えた。

黒曜麒麟もまた、体勢を立て直している。

雷は纏っていない――だが、それでも十分すぎるほどの脅威だった。

素の状態ですら、マルコにとっては一撃で致命傷になりかねない。

マルコは、かすれる声で呟く。

「……来るがいい、バケモノめ……」

次の瞬間。

黒曜麒麟が地を蹴り、突進の構えを取った。

――間に合わない。

誰もがそう思うその刹那。

「うぉぉぉぉぉ!!」

咆哮とともに、横合いから巨体が飛び込んできた。

ボッケだった。

リンの支援魔法を限界まで重ねがけされたその体で、
盾を振り抜き、黒曜麒麟の側頭部へと叩き込む。

――ガンッ!!

鈍く、重い音。

致命打には程遠い。

だが、その一撃は確かに黒曜麒麟の動きを止めた。

ほんの一瞬――ほんの僅かな怯み。

その“隙”を、仲間は逃さない。

「今!」

ファラが駆け寄り、迷いなくマルコの肩を担ぎ上げる。

マルコの体が抵抗する間もなく、戦線から引き離される。
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