《カクヨム様で50000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう

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二章 黒曜麒麟

九十七話

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ボッケは一瞬だけ迷うが、自分の剣を地面に置いた。

――少しでも、軽くなるように。

手に残したのは盾だけ。
防具であり、仲間を守るための象徴。

次の瞬間、ボッケは黒曜麒麟へと駆け出した。

自身のスキルの身体強化を発動する。

筋肉が軋み、地面を蹴るたびに衝撃が走る。

それを見たリンは、すぐに理解した。

マルコを逃がすため。
黒曜麒麟の標的を、自分に向けるため。

リンは今できる全て支援魔法をボッケに発動する。

筋肉強化
速度上昇
反応速度向上
空気抵抗の無効化

次々と魔法をかけてボッケは体がさらに軽くなる。

「――っ!」

ボッケは歯を食いしばり、加速する。速く、さらに速く。

そして黒曜麒麟が、マルコへと突進しようと体を沈めた――

まさにその瞬間、流星のような影が横合いから飛び込んだ。

――ドンッ!!

盾が、黒曜麒麟の体に叩き込まれる。

重く、鈍い衝撃音が響き渡る。

それは、この戦いの中でボッケが初めて、黒曜麒麟にまともに与えた一撃だった。

完全なダメージではない。
それでも無視できるほどの衝撃ではない。

黒曜麒麟の動きが、ほんの一瞬止まる。

その隙を逃さず、ファラがマルコを引きずるようにして戦線から離脱する。

ボッケは盾を構え直し、黒曜麒麟の正面に立つ。

ボッケのやることは、先ほどと本質的には変わらない。

黒曜麒麟に致命的なダメージを与えることではない。

ただひたすら標的を自分に向けさせ、背後にいる仲間たちへ意識を向けさせないこと。

それだけだ。

だが、その難易度は先ほどまでとは比べものにならなかった。

ハーデンが離脱し、その救助のためにソラも前線を離れている。

この二人がいないという事実が、この戦場の前衛の重要度を一気に変えた。

今、黒曜麒麟の正面に立っているのは――
ほぼ、ボッケ一人。

学生が、たった一人で、
Bランクダンジョンの主の注意を引き続ける。

正気の沙汰ではない。その危険性をボッケは理解していた。

自分を過大評価するほど、愚かでも無謀でもない。

だからこそ、ボッケは悟る。

――今までの戦い方じゃ、持たない。

ダメージを狙う必要もない。

この盾のみが自分の武器だ。

そして、敵の攻撃を受ける必要もない。受け流せばいい。

黒曜麒麟と相対してから、
いや、それ以前から。

力を込めて踏ん張る。
衝撃を正面から受け止める。

そんな、いつもの戦い方をボッケは意識的に捨てた。

肩の力を抜く
呼吸を整える
盾を構える角度を、ほんのわずかに変える。

重心を低く、しかし固定はしない。
流れるように、動くために。

土壇場で思いついた、
それでいて、どこか“しっくりくる”感覚。

ボッケは、黒曜麒麟を正面に見据えながら、
わずかに息を吐く。

黒曜麒麟はボッケに狙いを定める。

低く身を沈め、筋肉をうねらせた次の瞬間

突進

巨体に見合った質量と馬鹿げた速度。
それが正面からボッケを飲み込もうとする。

盾を構えた瞬間、衝撃が全身を貫いた。

骨が軋み、内臓が揺さぶられる感覚。
ボッケは歯を食いしばり、盾をわずかに傾ける。

(逸らせ!!)

力を正面で受け止めるのではなく、横へ、斜めへ。
衝撃を逃がす。

結果、致命的な直撃は避けられた。
だが完全ではない。

盾を握る両腕に強烈な痺れが走る。
指の感覚が一瞬、消えた。

「……っ!」

歯を食いしばり、唇を噛み、震える腕を根性で押さえつける。

盾を、離すわけにはいかない。

だが、そんなボッケに対して黒曜麒麟は止まらない。

続けざまに体を振るい、追撃の一撃を放つ。

ボッケは一瞬で理解した。
(……これは受けられる!)

攻撃の軌道、力の流れ。

それら感じ取り、攻撃と同じ方向へ盾を滑らせる。

ガンッ――という鈍い音。

今度は、はっきりと衝撃が軽い。

(……いける)

自分でも驚くほど、自然に体が動いた。

受け流せる攻撃は受け流す。

受け流せない攻撃は、飛び込むように回避して距離を取る。

そして、すぐに構え直す。

その繰り返し。

黒曜麒麟の攻撃は苛烈で、一撃一撃が致命傷になり得る。

それでも、ボッケは立ち続けた。

いつの間にか全身は水に濡れ、
防具は削れ、盾は見る影もないほど傷だらけになっていた。

華やかさなど、欠片もない。

だが、泥だらけでも、格好悪くても

仲間を守る
自分を守る

それが、今の自分にできる最善で、最高の戦い方だ。

そう言わんばかりに、
ボッケは黒曜麒麟と正面から向き合い続けた。

それでもボッケが稼げた時間は、二分にも満たない。

命を削り、
仲間の支援を受け、
限界まで引き出した、その二分。

その二分で――

「ごめん! 待たせた!」

ソラが前線へと戻ってきた。

息を切らしながら、剣を構えるその姿に、
ボッケは思わず笑う。

満身創痍の体で、軽口を叩く。

「ちょうど体が……温まってきたところだ!」

戦いはついにクライマックスを迎えようとしていた。
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