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03 三日前
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◇◆◇
「……シェリル。どうかしましたか? もしかして、気分が優れませんか?」
白いドレスを前にして俯いていた私の顔を、背の高いノアは背中をかがめて覗き込んだ。整った顔の中には緑色の眼差し……それは、何年か前の私が何をしてでもと求めてやまなかったものだ。
そこには、彼の意志なんて無関係だと思えるほどに。激しく。
「い! いいえ。大丈夫よ。ごめんなさい。私もなんだか、緊張してしまって」
明後日には私たちの盛大な結婚式が開かれるはずの教会の控え室で、既に準備されている結婚式用の白いドレスを見ていた。
ああ、なんてこと……私はいまさら、何を後悔しているのだろう。
ノアと婚約をしたのは、三年前……結婚に向けてのすべての準備は整い、あとは明後日を迎えるだけ。
明後日、私はノア・ウェインと結婚して、いずれはウェイン伯爵夫人と呼ばれることになる。
そうなることを望んだのは自分なのに、今になって罪悪感を覚えるなんて、私はどうかしているわ。
「無理もありません。明後日は、いよいよ結婚式……シェリルはこのところ、とても大変でしたからね」
ノアは微笑んで、そう言った。何故だろう。彼はこういう何気ない笑顔にも、憂いがあるように思える。
……政略的な理由で婚約した公爵令嬢の私と、結婚をしたくなかったから?
わからない。私はずるくて臆病で傷つきたくなくて、彼に真意を聞くことはこれまで叶わなかった。
「あ……そうね。ふふ。なんだか、疲れていたみたい。駄目ね。明後日の方が大変だと言うのに」
私は貴族の慣例通り、ウェイン伯爵家女主人となる初仕事として結婚式の準備を取り仕切った。
母や華やかな従姉妹たちと相談しながら、今の流行りも取り入れて自分らしい結婚式のしつらえを選ぶことは全く苦ではなかった。
ルーシャン公爵家とウェイン伯爵家の結婚は、お互いの領地が近いこともあり、当主たちも喜ばしいと祝杯を挙げるような関係性だ。遠縁の親戚たちもお祝いに駆けつけてくるので、かなりの数の列席者になってしまう。
私たち二人はそんな盛大な式の主役で、そんな彼らに挨拶をしてまわらなければいけないのだ。
「そうですね。長い日になるでしょう。そろそろ帰りましょう。シェリルはゆっくり休んだ方が良い」
顔を覗き込んだノアはそう言って、優しく私の背中を押した。
……長い日になる。彼の言葉を受けて、私はポッと顔に熱が集まるのを感じた。
ああ。そうだ。結婚式が終われば、初夜が待っている。
肉体関係のない貴族夫婦は、夫婦として認められない。肉体関係さえなければ、婚姻無効も申請出来る。
初夜を過ごして私たちは名実ともに夫婦となり、これで貴族として一人前と認められるのだ。
ノア……ああ。ノア。私の好きな人。大好きなノアと、結婚できる事は嬉しい……嬉しいけれど、私はどうしても胸が苦しくなってしまうのだ。
政略結婚を装い、狡い手段で彼を手に入れた罪悪感で。
「……シェリル。どうかしましたか? もしかして、気分が優れませんか?」
白いドレスを前にして俯いていた私の顔を、背の高いノアは背中をかがめて覗き込んだ。整った顔の中には緑色の眼差し……それは、何年か前の私が何をしてでもと求めてやまなかったものだ。
そこには、彼の意志なんて無関係だと思えるほどに。激しく。
「い! いいえ。大丈夫よ。ごめんなさい。私もなんだか、緊張してしまって」
明後日には私たちの盛大な結婚式が開かれるはずの教会の控え室で、既に準備されている結婚式用の白いドレスを見ていた。
ああ、なんてこと……私はいまさら、何を後悔しているのだろう。
ノアと婚約をしたのは、三年前……結婚に向けてのすべての準備は整い、あとは明後日を迎えるだけ。
明後日、私はノア・ウェインと結婚して、いずれはウェイン伯爵夫人と呼ばれることになる。
そうなることを望んだのは自分なのに、今になって罪悪感を覚えるなんて、私はどうかしているわ。
「無理もありません。明後日は、いよいよ結婚式……シェリルはこのところ、とても大変でしたからね」
ノアは微笑んで、そう言った。何故だろう。彼はこういう何気ない笑顔にも、憂いがあるように思える。
……政略的な理由で婚約した公爵令嬢の私と、結婚をしたくなかったから?
わからない。私はずるくて臆病で傷つきたくなくて、彼に真意を聞くことはこれまで叶わなかった。
「あ……そうね。ふふ。なんだか、疲れていたみたい。駄目ね。明後日の方が大変だと言うのに」
私は貴族の慣例通り、ウェイン伯爵家女主人となる初仕事として結婚式の準備を取り仕切った。
母や華やかな従姉妹たちと相談しながら、今の流行りも取り入れて自分らしい結婚式のしつらえを選ぶことは全く苦ではなかった。
ルーシャン公爵家とウェイン伯爵家の結婚は、お互いの領地が近いこともあり、当主たちも喜ばしいと祝杯を挙げるような関係性だ。遠縁の親戚たちもお祝いに駆けつけてくるので、かなりの数の列席者になってしまう。
私たち二人はそんな盛大な式の主役で、そんな彼らに挨拶をしてまわらなければいけないのだ。
「そうですね。長い日になるでしょう。そろそろ帰りましょう。シェリルはゆっくり休んだ方が良い」
顔を覗き込んだノアはそう言って、優しく私の背中を押した。
……長い日になる。彼の言葉を受けて、私はポッと顔に熱が集まるのを感じた。
ああ。そうだ。結婚式が終われば、初夜が待っている。
肉体関係のない貴族夫婦は、夫婦として認められない。肉体関係さえなければ、婚姻無効も申請出来る。
初夜を過ごして私たちは名実ともに夫婦となり、これで貴族として一人前と認められるのだ。
ノア……ああ。ノア。私の好きな人。大好きなノアと、結婚できる事は嬉しい……嬉しいけれど、私はどうしても胸が苦しくなってしまうのだ。
政略結婚を装い、狡い手段で彼を手に入れた罪悪感で。
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