この二人の政略結婚に異議ある者は、今すぐ申し出よ。さもなくば永遠に沈黙せよ。

待鳥園子

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04 眠れない夜

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 とてもとても、素敵な男性だ。三年間もの時を過ごした婚約者として、それは保証出来る。

 私は彼と結婚すれば、幸せな貴族夫人として盤石な生活を送ることが出来る。

 ……私はノアと結婚するために、祖父へと頼み込んだ。ウェイン伯爵の息子と結婚したいから、あの家へ縁談を申し込んで欲しい……と。

 当主同士が納得している政略結婚なのだから、ノアは決して断らない。いいえ。断れない。格上の公爵令嬢との縁談を、ウェイン伯爵が断るわけがないのだから。

 ただ、ノアは私と、結婚したかったわけではない。本来ならば、作法無視(イレギュラー)なやり方で、私は彼のことを手に入れた。

んだことなのに、そんな彼にはまだそれを言い出せずにいる。

 ノアのことが好きだからこそ、こんな卑怯な手で彼を手に入れて良いものか、どうしても……自分の中で納得させることは、難しかった。

 その日の夜、私はベッドに横になり眠ろうと思った。

 眠ろう眠らなければと思う度に、眠れなかった。私たちの結婚をお祝いする周囲の空気に包まれて、より罪悪感は増したかもしれない。

 ひと足先に結婚した兄夫婦は実家であるルーシャン公爵家で寝泊まりして、私の結婚式の準備の手伝いをしてくれているし、昨年宰相を引退した祖父は可愛い孫娘の晴れ姿を見ることが楽しみ過ぎて、先ほどの晩餐では涙を流してしまっていた。

 可愛がってくださるお祖父様に喜んでもらえることは嬉しい……嬉しいけれど、好きな人を姑息な手段で手に入れることには私はどうしても抵抗を感じていた。

 ……こんなこと、しなければ良かった。大きな権力を持つ祖父に頼み込んで、好きな男性を手に入れるなんて。

 もっと正当な手段、兄に紹介してもらって、その上でノアが私ともっと話したいと望み、関係を深めて結婚することになれば、こんな思いを抱かなくて良かったのに。

 ああ。そうよ。私ったら、何を考えているのかしら。

 私はノアのことが好きだと、まだ伝えていないのよ。婚約している時も、家同士が決めたことだから政略結婚として仕方ないという態度を崩さなかった。

 私はとても狡い女なのだ。

 それなのに、大好きな人と結婚する……ノアは貴族の務めとして、私と結婚をするだけなのに。


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