この二人の政略結婚に異議ある者は、今すぐ申し出よ。さもなくば永遠に沈黙せよ。

待鳥園子

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08 救いの天使

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「私が来て……助かったの?」

「ええ。姉は僕のことを異常に執着していて、さっきは結婚するなら殺すと刃物を出したところだったんです。ふと何かに呼ばれた気がして見れば、そこにシェリルの姿が」

「まあ!」

 刃物ですって! しかも、義弟であるノアに懸想して……!? 信じられないわ。嘘でしょう。

 とんでもない話を聞いて、口を両手で押さえた。私の護衛騎士たち……あれは寄り添っているように見えて、あの彼女を捕らえているんだわ!

「……そうなんです。僕はあの姉の支配から、幼いころから逃れたかった。シェリルとの縁談が来て、ようやく逃れることが出来て……本当にありがとう。シェリル。君はいつも僕を救ってくれる天使だ」

 そこで、ノアは私を抱きしめたので、私はこれまでに知らない事実が明かされ、目を瞬かせるしかなかった。

「……あの、ノア。私との縁談が来て、貴方は喜んでいたの?」

 私は震える声で、今までに聞きたかったけれど、聞けなかったことを聞いた。

「もちろんです。僕は実は、縁談が来る前に、ロバートのところに遊びに行ったことがあって……その時に、シェリルに会えるかと聞いたんですが、まだ社交界デビューも済ませていないからと、流石に会わせてもらえなくて……」

 私の質問に力強く頷いたノアは、目をキラキラとさせていた。

 ……今までの憂鬱な表情、それはもしかして、彼が義姉からの執着に悩んでいたから……?

「そ、そうだったの……?」

 確かに、ノアはルーシャン公爵家を去る時、名残惜しそうに振り返っていたわ。

 あれは……ロバートの妹である私と会いたかったから?

「それが、打算的な望みであったことは、認めます。ロバートから妹はいつも可愛いと自慢されていたので……ルーシャン公爵家の娘と結婚するならば、姉は何も言えない。だから、シェリルと婚約出来たら良いのにと願っていました。そして、奇跡的にルーシャン公爵家から縁談が来て……姉が可愛い伯父も、公爵令嬢であるシェリルと結婚することを望みました」

「まあ……そ……そうだったの」

 そうなのね。私、全く自覚なく、望まぬ相手と結婚させられそうなノアを救っていたんだわ。

 嬉しくもあるけれど、なんだか複雑……これまで、何も知らなかったもの。

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