この二人の政略結婚に異議ある者は、今すぐ申し出よ。さもなくば永遠に沈黙せよ。

待鳥園子

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09 政略結婚

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「ああ……僕の天使。どうか誤解しないでください。僕が愛しているのはシェリルだけです。支配的な姉から解放してくれて、つい先ほども命を救ってくれました」

「あの、そうです……それは、本当に良かったわ」

 ええ。良かった。私はノアを大好きで、姑息な手段でもと、彼と結婚することを望んでいたのだから。

 驚くような真相を目の前に、動揺をしているけれど、愛するノアを窮地から救うことが出来て、それは良かったんだわ。

「政略結婚であることは、承知しています。僕を愛していないことも……ですが、僕はシェリルを愛しているんです」

「……嘘でしょう?」

 私の唇からは、そんな言葉がこぼれ落ちていた。

「嘘ではありません! どうして、そんな誤解を?」

 ノアは不可解そうにしていた。だって、私は……私、そうよ。

 ノアは私のことを好きではないと思って、過ごしていたわ。彼と同じように。

「けど、私に触れなかったわ。こうして、抱きしめることも、これまでは……」

「……結婚前に、僕を嫌がられては困ると思って。すみません。僕は打算的でした。反省しています」

 ノアは切なそうにそう言った。もしかして、これを言えば、私に嫌われると思っている……?

 そんなわけはない。だって、私は……。

「いえ。だって、私だって打算的だったもの。私は貴方に一目惚れして、祖父に頼み込んだの。政略結婚と称して、ノアを手に入れたわ」

 私がそう言えば彼は、目を大きく見開いた。

 ああ……私たち、互いに誤解し合っていたのだわ。嘘でしょう。もう……そういうことなのよ。

 お互いに打算的だと思いながら、実のところ、互いに惹かれ合っていたのだわ。夢みたい。

「僕を手に入れた……?」

「そうなの。私はお祖父様に、お願いしたのよ。ウェイン伯爵の後継ぎと結婚したいって……だから、この結婚は私が望んだことで、政略結婚ではないのよ」

 真実を告げる私の声は震えていて、どんどん小さくなっていった。恥ずかしい。こんなさもしい手段で彼を手に入れることを、本人に告白することになるなんて。

 けれど、いつかはしなければいけないことだった。もし、ノアを本当に愛しく思うのなら。

「いいえ。それは、僕が望んだことを叶えてくれただけです。あの時……僕は思ったんですよ。ルーシャン公爵家令嬢ならば、誰も文句は言わない。どうか、ロバートの妹が僕を望んでくれないか……と」

 ノアは私のことをぎゅっと抱きしめてそう言い、私はよくわからないけれど目隠しをしたまま幸運な偶然を手にすることが出来たことに感謝し、彼の身体を同じように抱きしめた。

Fin

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