2 / 17
勝手に呼んでおいてチェンジとか。
しおりを挟む
周囲がぐるぐる回っている。
まるで、洗濯機の中に放り込まれたような酷いめまいだ。
多分私は倒れているんだろうけれど、めまいが酷くて、天地の区別がつかない。
薄暗い感じは同じだけれど、さっきまでいたトイレではない、と漠然とわかる。
周囲のざわつき、たき火のような煙の匂い。
どこなんだろう、とかそんなことより、気持ち悪さが勝ってそれどころじゃなかった。
◇
「おい、なんだこいつは!」
すぐそばで誰かが怒鳴っている。
広いホールのような場所なのか、男の声が反響した。
「これが番様だと!?男だろう!見ろ、この髪を!」
うう、気持ち悪い。
めまいのせいで吐き気が強まる。
「もう一回やり直せないのか?だって男だぞ?間違えたということだろう?」
周りのザワザワする声に比べて、男の話す声はよく通り、耳に入ってきた。
「今ならまだやり直しきくんじゃないか?ムリ?一応確認を?俺がか?お前たちは・・・まだ結界に入って来れないのか?・・はぁ、難儀だな」
吐き気と戦う私のそばで、さっきから偉そうにがなりたてているこの男は何なんだ。
(うるさっ・・それに多分だけどさっきから私のこと、男の人と間違えてるよね?)
吐き気とイライラを募らせる私に、とうとう男が話しかけてきた。
「おい、そこのお前!聞いてるのか!いつまで這いつくばっているつもりだ!」
頭のすぐ上の方から声がする。
ちょっとだけめまいはよくなり、視界が開けてきた。
私はうつ伏せに伏せっていたらしい。
目の前には靴。
金の刺繍がされた黒いブーツだった。
このブーツの主が、今話しかけてきてる男だろう。
「お前、名前は何と言う・・おい、いつまで寝てるつもりだ。不敬だぞ!」
すぐ真上から降ってくる声。
私に向かって言っているに違いない。
気持ち悪いのに勘弁して欲しい。
「すみません、吐きそうで・・」
必死の思いで、そう弁明する私の声を相手は聞き取れなかったようだ。
「なんだ?聞こえんぞ!表を上げろ!ほら!」と手を引いて私を起こした。
思いの外、力強く、グイッと持ち上げられ、立たせられる。
「お前、名前は何と・・ん?なんだ、その顔・・お前、女か?」
頭ひとつ分ほど高いその男を見上げる。
肩より少し長い黒髪を上の方だけ括ったその男は、白装束のような格好をしていた。
鼻筋の通った、整った顔立ちなのに、その口元は不満げに歪められている。
凛々しいながらも目尻が少し垂れていて、目元はなんとなく佑太に似て見えた。
男は眉を顰めて「顔が白すぎるな」と怪訝そうにした後、「で、結局お前は」と言いかけた。
彼は最後まで言い切れなかった。
なぜなら吐き気の限界を迎えた私が、男の胸元へ、マーライオンよろしく勢いよく戻したからだ。
「ギャァアアアア!」
男の絶叫が響き渡った。
まるで、洗濯機の中に放り込まれたような酷いめまいだ。
多分私は倒れているんだろうけれど、めまいが酷くて、天地の区別がつかない。
薄暗い感じは同じだけれど、さっきまでいたトイレではない、と漠然とわかる。
周囲のざわつき、たき火のような煙の匂い。
どこなんだろう、とかそんなことより、気持ち悪さが勝ってそれどころじゃなかった。
◇
「おい、なんだこいつは!」
すぐそばで誰かが怒鳴っている。
広いホールのような場所なのか、男の声が反響した。
「これが番様だと!?男だろう!見ろ、この髪を!」
うう、気持ち悪い。
めまいのせいで吐き気が強まる。
「もう一回やり直せないのか?だって男だぞ?間違えたということだろう?」
周りのザワザワする声に比べて、男の話す声はよく通り、耳に入ってきた。
「今ならまだやり直しきくんじゃないか?ムリ?一応確認を?俺がか?お前たちは・・・まだ結界に入って来れないのか?・・はぁ、難儀だな」
吐き気と戦う私のそばで、さっきから偉そうにがなりたてているこの男は何なんだ。
(うるさっ・・それに多分だけどさっきから私のこと、男の人と間違えてるよね?)
吐き気とイライラを募らせる私に、とうとう男が話しかけてきた。
「おい、そこのお前!聞いてるのか!いつまで這いつくばっているつもりだ!」
頭のすぐ上の方から声がする。
ちょっとだけめまいはよくなり、視界が開けてきた。
私はうつ伏せに伏せっていたらしい。
目の前には靴。
金の刺繍がされた黒いブーツだった。
このブーツの主が、今話しかけてきてる男だろう。
「お前、名前は何と言う・・おい、いつまで寝てるつもりだ。不敬だぞ!」
すぐ真上から降ってくる声。
私に向かって言っているに違いない。
気持ち悪いのに勘弁して欲しい。
「すみません、吐きそうで・・」
必死の思いで、そう弁明する私の声を相手は聞き取れなかったようだ。
「なんだ?聞こえんぞ!表を上げろ!ほら!」と手を引いて私を起こした。
思いの外、力強く、グイッと持ち上げられ、立たせられる。
「お前、名前は何と・・ん?なんだ、その顔・・お前、女か?」
頭ひとつ分ほど高いその男を見上げる。
肩より少し長い黒髪を上の方だけ括ったその男は、白装束のような格好をしていた。
鼻筋の通った、整った顔立ちなのに、その口元は不満げに歪められている。
凛々しいながらも目尻が少し垂れていて、目元はなんとなく佑太に似て見えた。
男は眉を顰めて「顔が白すぎるな」と怪訝そうにした後、「で、結局お前は」と言いかけた。
彼は最後まで言い切れなかった。
なぜなら吐き気の限界を迎えた私が、男の胸元へ、マーライオンよろしく勢いよく戻したからだ。
「ギャァアアアア!」
男の絶叫が響き渡った。
127
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
「ひきこもり王子」に再嫁したら「憎悪しか抱けない『お下がり令嬢』は、侍女の真似事でもやっていろ」と言われましたので、素直に従うことにしました
ぽんた
恋愛
「おれがおまえの姉ディアーヌといい仲だということは知っているよな?ディアーヌの離縁の決着がついた。だからやっと、彼女を妻に迎えられる。というわけで、おまえはもう用済みだ。そうだな。どうせだから、異母弟のところに行くといい。もともと、あいつはディアーヌと結婚するはずだったんだ。妹のおまえでもかまわないだろう」
この日、リン・オリヴィエは夫であるバロワン王国の第一王子マリユス・ノディエに告げられた。
選択肢のないリンは、「ひきこもり王子」と名高いクロード・ノディエのいる辺境の地へ向かう。
そこで彼女が会ったのは、噂の「ひきこもり王子」とはまったく違う気性が荒く傲慢な将軍だった。
クロードは、幼少の頃から自分や弟を守る為に「ひきこもり王子」を演じていたのである。その彼は、以前リンの姉ディアーヌに手痛い目にあったことがあった。その為、人間不信、とくに女性を敵視している。彼は、ディアーヌの妹であるリンを憎み、侍女扱いする。
しかし、あることがきっかけで二人の距離が急激に狭まる。が、それも束の間、王都が隣国のスパイの工作により、壊滅状態になっているいう報が入る。しかも、そのスパイの正体は、リンの知る人だった。
※全三十九話。ハッピーエンドっぽく完結します。ゆるゆる設定です。ご容赦ください。
【完結】死の4番隊隊長の花嫁候補に選ばれました~鈍感女は溺愛になかなか気付かない~
白井ライス
恋愛
時は血で血を洗う戦乱の世の中。
国の戦闘部隊“黒炎の龍”に入隊が叶わなかった主人公アイリーン・シュバイツァー。
幼馴染みで喧嘩仲間でもあったショーン・マクレイリーがかの有名な特効部隊でもある4番隊隊長に就任したことを知る。
いよいよ、隣国との戦争が間近に迫ったある日、アイリーンはショーンから決闘を申し込まれる。
これは脳筋女と恋に不器用な魔術師が結ばれるお話。
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
湊一桜
恋愛
王宮薬師のアンは、国王に毒を盛った罪を着せられて王宮を追放された。幼少期に両親を亡くして王宮に引き取られたアンは、頼れる兄弟や親戚もいなかった。
森を彷徨って数日、倒れている男性を見つける。男性は高熱と怪我で、意識が朦朧としていた。
オオカミの襲撃にも遭いながら、必死で男性を看病すること二日後、とうとう男性が目を覚ました。ジョーという名のこの男性はとても強く、軽々とオオカミを撃退した。そんなジョーの姿に、不覚にもときめいてしまうアン。
行くあてもないアンは、ジョーと彼の故郷オストワル辺境伯領を目指すことになった。
そして辿り着いたオストワル辺境伯領で待っていたのは、ジョーとの甘い甘い時間だった。
※『小説家になろう』様、『ベリーズカフェ』様でも公開中です。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
嫌われ公女に転生したけど、愛されたい願望を捨てたら全員がデレてきた
桃瀬さら
恋愛
嫌われ公女ナディアは、婚約破棄され学園で孤立し、家族からも見放されていた。
どれほど努力しようが周囲からは「嫌われ公女」と蔑まれ、誰も味方なんていない。
「もういい。愛されたいなんて、くだらない」
そう心に誓った瞬間から、状況が一変した。
第二王子が婚約破棄を撤回し跪き、寡黙な騎士団長が「君を守りたい」と熱く迫ってくる。
そして、冷ややかな兄まで「婚約など認めない。家を出ることは許さない」と……。
愛されることを諦めた途端、なぜか執着される。
『あなたを捨てたのは、私です』 〜冷酷公爵を追い出した元恋人ですが、隠し子ごと溺愛されています〜
ria_alphapolis
恋愛
「あなたを捨てたのは、私です」
そう告げて、公爵である彼を追い出した日から数年。
私は一人で、彼との子どもを育てていた。
愛していた。
だからこそ、彼の未来とこの子を守るために、
“嫌われ役”になることを選んだ――その真実を、彼は知らない。
再会した彼は、冷酷公爵と噂されるほど別人のようだった。
けれど、私と子どもを見るその瞳だけは、昔と変わらない。
「今度こそ、離さない」
父親だと気づいた瞬間から始まる、後悔と執着。
拒み続ける私と、手放す気のない彼。
そして、何も知らないはずの子どもが抱える“秘密”。
これは、
愛していたからこそ別れを選んだ女と、
捨てられたと思い続けてきた男が、
“家族になるまで”の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる