偽りの断罪で追放された悪役令嬢ですが、実は「豊穣の聖女」でした。辺境を開拓していたら、氷の辺境伯様からの溺愛が止まりません!

黒崎隼人

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19 ざまぁと本当の幸せ

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 王都が浄化され、国が救われた後、裁きの時が訪れた。

 すべての罪が暴かれた偽りの聖女リリアナは、聖なる力を完全に失い、ただの魔力を持たない少女に戻っていた。国を未曾有の危機に陥れた大罪人として、彼女には最も重い罰が下されるはずだった。しかし、セレスティナの「彼女から奪うものはもう何もありません」という言葉により、死罪は免れ、二度とこの国の土を踏むことが許されない国外追放の刑となった。全ての栄光と魔力を失い、誰からも見向きもされず、たった一人で国を去っていく彼女の背中は、哀れなほどに小さかった。

 そして、元凶であるリリアナを盲信し、セレスティナを断罪し、国を危機に導いたアラン王子。彼は自らの愚かさをようやく認め、国民の前で土下座して謝罪した。しかし、犯した過ちはあまりにも大きい。彼は王位継承権を完全に剥奪され、王宮の一角にある塔に幽閉されることとなった。これから一生、彼は自分の犯した罪と向き合いながら、孤独に生きていくことになる。これ以上ないほどの、自業自得の結末だった。

 国王は、セレスティナとリアムの前に深く頭を下げた。

「セレスティナ殿、リアム辺境伯。この国を救ってくれたこと、そして、我らの愚かな行いを、心から謝罪する。本当に、申し訳なかった」

 そして、国王は続けた。
「セレスティナ殿。君こそが、この国の真の聖女だ。どうか、王都に残り、我らを導いてはくれまいか。君が望むものは、何でも与えよう。地位も、富も、名誉も、すべて君のものだ」

 それは、国で最も高い地位への誘いだった。誰もが、彼女はそれを受け入れるだろうと思った。
 しかし、セレスティナは静かに首を振った。

「陛下、お言葉ですが、お断りいたします」

 彼女の答えに、その場にいた誰もが驚いた。セレスティナは、隣に立つリアムの手をそっと握り、国王に向かって穏やかに微笑んだ。

「わたくしが望むものは、地位や富ではございません。わたくしが望む幸せは、もう、この手の中にありますから」

 彼女は、愛おしそうにリアムを見上げた。リアムもまた、優しい眼差しで彼女を見つめ返す。

「わたくしが望みますのは、ただ一つ。リアム様との正式な結婚をお認めいただき、そして、わたくしたちが愛する北の辺境で、穏やかに暮らす許可をいただくこと。それだけでございます」

 彼女にとって、本当の幸せは、きらびやかな王都ではなく、愛する人と共に過ごす、あの緑豊かな辺境の地にあったのだ。

 その清廉で、どこまでも気高い彼女の願いに、国王は深く感銘を受けた。
「……分かった。君の望み、確かに受け取った。国を挙げて、二人の結婚を祝福しよう」

 こうして、偽りの者たちは罰を受け、真実の愛を選んだ聖女は、最高の幸せを手に入れた。これ以上ないほどすっきりとした、完璧なざまぁと、本当の幸福の始まりだった。
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