偽りの断罪で追放された悪役令嬢ですが、実は「豊穣の聖女」でした。辺境を開拓していたら、氷の辺境伯様からの溺愛が止まりません!

黒崎隼人

文字の大きさ
19 / 24

18 王都の浄化

 セレスティナとリアムが率いる一行が王都に到着した時、そこはすでに地獄のような光景と化していた。城壁は崩れ、街は魔物で溢れかえり、生き残った人々は恐怖に震えながら、王宮に立てこもっているだけだった。空は厚い暗雲に覆われ、太陽の光さえ届かない。

「セレスティナ様だ! 辺境の聖女様がお戻りになったぞ!」

 彼女の到着を知った人々から、かすかな希望の声が上がる。
 セレスティナは、リアムと兵士たちに守られながら、王宮の中心、かつては美しく咲き誇っていた庭園へと向かった。そこは今、すべての植物が枯れ果て、ひび割れた大地が剥き出しになった、死の庭園と化していた。

 セレスティナは、その庭園の中心に、一人で静かに立った。
 国王やアラン、貴族たち、そして城に避難していた多くの国民が、固唾をのんで彼女の姿を見守っている。

 彼女は、ゆっくりと大地に両手をついた。そして、目を閉じ、すべての想いを込めて、心からの祈りを捧げ始めた。

(この国を、愛する人々を、お救いください。失われた恵みを、温かい光を、どうかもう一度、この地にお与えください――)

 彼女の祈りは、もう個人的な願いではない。この国そのものを慈しみ、生命の循環を取り戻そうとする、星への祈りにも似ていた。

 すると、彼女の体から、天を衝くほどの巨大な光の柱が立ち上った。黄金の光は、空を覆っていた分厚い暗雲を吹き飛ばし、閉ざされていた空に、再び青空と太陽の光を取り戻した。

 降り注ぐ太陽の光を浴びて、セレスティナから放たれる光はさらに輝きを増し、まばゆい光の波となって王都全体を包み込んでいく。

 奇跡は、そこから始まった。

 光が触れた場所から、枯れた大地は息を吹き返し、みるみるうちに鮮やかな緑の絨毯へと変わっていく。枯れ木には新しい葉が芽吹き、花壇には色とりどりの花が、まるで魔法のように一斉に咲き誇った。涸れていた泉からは、清らかな水が再び湧き出した。

 そして、街を闊歩していた魔物たちは、その聖なる光に触れた瞬間、悲鳴を上げる間もなく浄化され、塵となって消えていった。

 王都を覆っていた絶望と死の匂いは完全に消え去り、後には生命力に満ちた草花の香りと、温かい陽の光だけが残された。

 人々は、目の前で起きた奇跡を、ただただ呆然と見つめていた。そして、誰からともなく、一人、また一人と、その場にひざまずき始めた。
 やがて、王宮にいたすべての国民が、庭園の中心に立つセレスティナに向かって深く頭を垂れ、本物の聖女がもたらした救済に、心からの感謝を捧げた。

 それは、偽りの聖女によって失われた国の信頼が、真の聖女によって取り戻された瞬間でもあった。

あなたにおすすめの小説

ベールを上げた新郎は『君じゃない』と叫んだ

ハートリオ
恋愛
結婚式で新郎に『君じゃない』と叫ばれたのはウィオラ。 スピーナ子爵家の次女。 どうやら新郎が結婚する積りだったのは姉のリリウム。 ウィオラはいつも『じゃない方』 認められない、 選ばれない… そんなウィオラは―― 中世ヨーロッパ風異世界でのお話です。 よろしくお願いします。

【結婚式当日に捨てられました】身代わりの役目は不要だと姉を選んだ王子は、隣国皇帝が私を国ごと奪いに来てから後悔しても手遅れです。

唯崎りいち
恋愛
結婚式当日、私は“替え玉”として捨てられた。 本物の姉が戻ってきたから、もう必要ないのだと。 けれど—— 私こそが、誰も知らなかった“本物の価値”を持っていた。 世界でただ一人、すべてを癒す力。 そして、その価値を知るただ一人の人が、皇帝となって私を迎えに来る。 これは、すべてを失った少女が、本当に必要とされる場所へ辿り着く物語。

『魔力ゼロの欠陥品』と蔑まれた伯爵令嬢、卒業パーティーで婚約破棄された瞬間に古代魔法が覚醒する ~虐げられ続けた三年間、倍返しでは足りない~

スカッと文庫
恋愛
「貴様のような無能、我が国の王妃には相応しくない。婚約を破棄し、学園から追放する!」 王立魔道学園の卒業パーティー。きらびやかなシャンデリアの下、王太子エドワードの声が冷酷に響いた。彼の隣には、愛くるしい表情で私を嵌めた男爵令嬢、ミナが勝ち誇ったように寄り添っている。 伯爵令嬢のリリアーヌは、入学以来三年間、「魔力ゼロの欠陥品」として学園中の嘲笑を浴び続けてきた。 婚約者であるエドワードからは一度も顧みられず、同級生からはゴミのように扱われ、ミナの自作自演による「いじめ」の濡れ衣まで着せられ……。 それでも、父との「力を隠せ」という約束を守るため、泥を啜るような屈辱に耐え抜いてきた。 ――だが、国からも学園からも捨てられた今、もうその約束を守る必要はない。 「さようなら、皆様。……私が消えた後、この国がどうなろうと知ったことではありませんわ」 リリアーヌが身につけていた「魔力封印の首飾り」を自ら引き千切った瞬間、会場は漆黒の魔力に包まれた。 彼女は無能などではない。失われた「古代魔法」をその身に宿す、真の魔道の主だったのだ。 絶望する王太子たちを余目に、隣国の伝説の魔術師アルベルトに拾われたリリアーヌ。 彼女の、残酷で、甘美な復讐劇が今、幕を開ける――。

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった

歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。 だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」 追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。 一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。 誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。 「その言葉は、もう翻訳できません」

悪役令嬢発溺愛幼女着

みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」  わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。  響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。  わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。  冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。  どうして。  誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。

婚約破棄されたので、隠していた聖女の力で聖樹を咲かせてみました

Megumi
恋愛
偽聖女と蔑まれ、婚約破棄されたイザベラ。 「お前は地味で、暗くて、何の取り柄もない」 元婚約者である王子はそう言い放った。 十年間、寡黙な令嬢を演じ続けた彼女。 その沈黙には、理由があった。 その夜、王都を照らす奇跡の光。 枯れた聖樹が満開に咲き誇り、人々は囁いた。 「真の聖女が目覚めた」と——

【完結】追放された地味令嬢、実は王国唯一の“魔力翻訳者”でした 〜役立たずと言われましたが、もう契約は終了です〜

あめとおと
恋愛
王太子から「魔法が何も起こらない役立たず」と断罪され、婚約破棄された伯爵令嬢リリア。 追放された彼女の能力は―― 魔法の“意味”を読み解き、術式そのものを理解する力《魔力翻訳》。 辺境の魔導研究所でその才能を見出された彼女は、 三百年解読不能だった古代魔法を次々と再生させていく。 一方、彼女を失った王都では魔法事故が連鎖。 国家結界すら崩壊寸前に――。 「戻ってきてほしい」 そう告げられても、もう遅い。 私を必要としてくれる場所は、 すでに別にあるのだから。 これは、役立たずと呼ばれた令嬢が 本当の居場所と理解者を見つける物語。