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9話
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夜会の喧騒が遠ざかり、静寂の戻った皇帝の私室。
扉が閉まった瞬間に、エリュシオンの身体は壁へと押し付けられた。
「あ……っ、ゼノス……?」
見上げるゼノスの瞳は、夜会での冷徹なものとは異なり、どろりとした欲望の熱を帯びている。
彼はエリュシオンの首筋に顔を埋め、獲物の息の根を止めるかのように深く、その肌を吸い上げた。
「……よく頑張ったな、エリュシオン。あの程度の羽虫共に、お前の美しさを見せてやったのは癪だが……」
「痛、い……ゼノス、そんなに強く……」
「黙れ。今は誰にも邪魔させん。お前の身体に染み付いた、あの下俗な奴らの視線をすべて、俺の痕で上書きしてやる」
ゼノスの独占欲は、もはや制御不能な域に達していた。
彼はエリュシオンを軽々と抱き上げると、広い寝台へと放り投げる。
柔らかな毛皮の上に沈み込むエリュシオンを、逃がさないよう両腕で閉じ込めた。
「っ、んん……!」
重なる唇。夜会での優雅なエスコートとは対極にある、野獣のような荒々しい口づけ。
ゼノスの魔力が指先からエリュシオンの肌へと侵入し、強制的に身体を火照らせていく。
聖子としての冷たい魔力が、ゼノスの暴力的な熱に晒され、蒸発してしまいそうだ。
「あ、はぁ……っ、ゼノス、身体が……おかしいの……」
「おかしくはない。お前の身体が、俺を欲しがっているだけだ。……エリュシオン、俺の名前を呼べ。俺だけを見ろ」
ゼノスはエリュシオンの礼服を、布の裂ける音も厭わず剥ぎ取っていく。
露わになった白い肌に、月光が冷たく差し込むが、ゼノスに触れられている場所だけは焼けるように熱い。
ゼノスの手が、エリュシオンの敏感な場所をなぞるたび、エリュシオンの頭の中は真っ白に塗りつぶされた。
「ゼノス……っ、ゼノス……あ、ぁあ……!」
快楽の波に呑まれながら、エリュシオンは自分からゼノスの首に腕を回した。
地下牢で震えていた自分は、もうどこにもいない。
この男の愛という名の檻の中にいるときだけ、自分は「生きている」と感じられるのだ。
ゼノスはエリュシオンの潤んだ瞳を見つめ、低い声で笑った。
「そうだ、その顔だ……。お前のこの美しい表情を引き出せるのは、世界で俺一人だけでいい」
激しい愛撫が繰り返され、エリュシオンの指先がゼノスの背中に深く食い込む。
ゼノスの強大な魔力がエリュシオンの体内を満たし、共鳴し、二人の周囲には氷の粒と金の火花が舞い散る。
それは、この世のものとは思えないほど美しく、そして残酷な支配の儀式だった。
やがて、エリュシオンが疲労と快楽の極地で眠りについた後。
ゼノスは愛しげにその銀髪を撫でながら、寝台の脇に控えていた影に視線を向けた。
「……鼠どもが動いたか」
闇の中から、カインが静かに姿を現す。
「はい。軍部の過激派が、旧王国の残党と接触した模様です。目的は……エリュシオン様の持つ『聖力』の、軍事利用。彼を連れ去り、人型兵器として調整する計画のようです」
ゼノスの瞳から、一瞬にして愛が消え、冷徹な殺意が宿った。
「俺の小鳥を、兵器にだと? ……いいだろう。その身の程知らずな野望ごと、灰すら残さず焼き尽くしてやる」
眠るエリュシオンの頬に、ゼノスは誰にも見せないほど優しい、しかし狂気を孕んだキスを落とした。
「お前は、ただ俺の腕の中で溶けていればいいんだ、エリュシオン……」
幸福な眠りの裏側で、暗い策略が渦巻き始めていた。
扉が閉まった瞬間に、エリュシオンの身体は壁へと押し付けられた。
「あ……っ、ゼノス……?」
見上げるゼノスの瞳は、夜会での冷徹なものとは異なり、どろりとした欲望の熱を帯びている。
彼はエリュシオンの首筋に顔を埋め、獲物の息の根を止めるかのように深く、その肌を吸い上げた。
「……よく頑張ったな、エリュシオン。あの程度の羽虫共に、お前の美しさを見せてやったのは癪だが……」
「痛、い……ゼノス、そんなに強く……」
「黙れ。今は誰にも邪魔させん。お前の身体に染み付いた、あの下俗な奴らの視線をすべて、俺の痕で上書きしてやる」
ゼノスの独占欲は、もはや制御不能な域に達していた。
彼はエリュシオンを軽々と抱き上げると、広い寝台へと放り投げる。
柔らかな毛皮の上に沈み込むエリュシオンを、逃がさないよう両腕で閉じ込めた。
「っ、んん……!」
重なる唇。夜会での優雅なエスコートとは対極にある、野獣のような荒々しい口づけ。
ゼノスの魔力が指先からエリュシオンの肌へと侵入し、強制的に身体を火照らせていく。
聖子としての冷たい魔力が、ゼノスの暴力的な熱に晒され、蒸発してしまいそうだ。
「あ、はぁ……っ、ゼノス、身体が……おかしいの……」
「おかしくはない。お前の身体が、俺を欲しがっているだけだ。……エリュシオン、俺の名前を呼べ。俺だけを見ろ」
ゼノスはエリュシオンの礼服を、布の裂ける音も厭わず剥ぎ取っていく。
露わになった白い肌に、月光が冷たく差し込むが、ゼノスに触れられている場所だけは焼けるように熱い。
ゼノスの手が、エリュシオンの敏感な場所をなぞるたび、エリュシオンの頭の中は真っ白に塗りつぶされた。
「ゼノス……っ、ゼノス……あ、ぁあ……!」
快楽の波に呑まれながら、エリュシオンは自分からゼノスの首に腕を回した。
地下牢で震えていた自分は、もうどこにもいない。
この男の愛という名の檻の中にいるときだけ、自分は「生きている」と感じられるのだ。
ゼノスはエリュシオンの潤んだ瞳を見つめ、低い声で笑った。
「そうだ、その顔だ……。お前のこの美しい表情を引き出せるのは、世界で俺一人だけでいい」
激しい愛撫が繰り返され、エリュシオンの指先がゼノスの背中に深く食い込む。
ゼノスの強大な魔力がエリュシオンの体内を満たし、共鳴し、二人の周囲には氷の粒と金の火花が舞い散る。
それは、この世のものとは思えないほど美しく、そして残酷な支配の儀式だった。
やがて、エリュシオンが疲労と快楽の極地で眠りについた後。
ゼノスは愛しげにその銀髪を撫でながら、寝台の脇に控えていた影に視線を向けた。
「……鼠どもが動いたか」
闇の中から、カインが静かに姿を現す。
「はい。軍部の過激派が、旧王国の残党と接触した模様です。目的は……エリュシオン様の持つ『聖力』の、軍事利用。彼を連れ去り、人型兵器として調整する計画のようです」
ゼノスの瞳から、一瞬にして愛が消え、冷徹な殺意が宿った。
「俺の小鳥を、兵器にだと? ……いいだろう。その身の程知らずな野望ごと、灰すら残さず焼き尽くしてやる」
眠るエリュシオンの頬に、ゼノスは誰にも見せないほど優しい、しかし狂気を孕んだキスを落とした。
「お前は、ただ俺の腕の中で溶けていればいいんだ、エリュシオン……」
幸福な眠りの裏側で、暗い策略が渦巻き始めていた。
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