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11話
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「……ねえ、ゼノさん。あの人、さっきから僕のこと見てない?」
王都の目抜き通り。魔導師団の備品を買い出しに来た僕の視線の先には、黄金の甲冑に身を包んだ、眩しすぎるほどのイケメンが立っていた。
ゼノが「月明かりの貴公子」なら、あちらは「太陽の王子」といった風情。
ウェーブがかった金髪をなびかせ、彼は真っ直ぐに僕たちの方へ歩いてきた。
「リト殿、見ないでください。目が腐ります。あれは隣国の聖騎士、レオンといって、中身が非常に残念な男です」
「お前が言うなよ」
ゼノが僕の肩を抱き寄せ、これ見よがしに威嚇の視線を送る。
しかし、金髪の聖騎士レオンは爽やかな笑みを絶やさず、僕の前で優雅に一礼した。
「……失礼。君が噂の『一撃で魔狼を更地にした魔導師』リト君だね? 想像していたよりもずっと可憐で、守ってあげたくなるような佇まいだ」
「あ、どうも。初めまして、嘱託魔導師のリトです。可憐っていうか、ただの寝不足ですけど」
「ふふ、謙遜することはない。君のような才能が、こんな暑苦しい男(ゼノ)の監視下に置かれているのは世界の損失だ。どうだい? 我が国に来ないか? 最高の待遇と、君専用の魔法庭園を約束しよう」
レオンが僕の手を取ろうと差し出した瞬間――。
バチッ!! と、激しい火花が散った。
ゼノが音速で僕とレオンの間に割り込み、その手を叩き落としたのだ。
「レオン。その汚い手でリト殿に触れようとするな。貴様の国など、私が三日で地図から消してやろうか?」
「おやおや、怖いねぇ。ゼノ、君は相変わらず独占欲が強すぎる。リト君は君の所有物じゃない。……だろう? リト君」
レオンが僕にウインクを投げてくる。
……正直、どっちもどっちである。
「あの、二人とも。僕はどこに行っても『定時で帰れる』なら文句ないんですけど。魔法庭園っていうのは、もふもふした動物もいますか?」
僕がそう尋ねると、レオンの目がキラリと光った。
「もちろんだとも。我が国には伝説の『飛天綿毛猫(フライング・ポム)』が生息している。君なら、彼らと一日中遊んで暮らせるはずだ」
「飛天綿毛猫……っ! 行きます!!」
「リト殿ォォォ!! 行かせません! 許しません! 行くなら私を殺してからにしてください!!」
ゼノが僕の腰にしがみつき、人目も憚らず泣き叫び始めた。
国宝級イケメン聖騎士が、路上で「行かないでー!」と駄々をこねる姿に、通行人たちが一斉に足を止める。
「離してくださいゼノさん、重い! 飛天綿毛猫ですよ!? 空飛ぶもふもふですよ!?」
「あんなもの、ただの浮遊する毛玉です! 欲しければ私が今すぐ全個体捕獲して、貴殿の寝室に詰め込みます! だから、あんな太陽のパチモンみたいな男に付いていかないでください!!」
「パチモンとは失礼な。リト君、彼は君を束縛することしか考えていない。私の元へ来れば、君に真の自由を与えよう」
レオンが僕の反対側の手を握ろうとする。
……が、その瞬間、僕の腕の中から「キャンッ!」という鋭い鳴き声が響いた。
ココだ。
ココがレオンの手に向かって、本気の「伝説の魔獣」としての威圧を放ったのだ。
「……っ!? なんだ、この小さな犬は……。私の聖騎士としての加護が、本能で危険を察知している……?」
「ココ、ナイス。……レオンさん。お誘いは嬉しいですけど、ココが嫌がってるみたいなんで、やっぱりやめときます」
「えっ? そんな理由で……?」
「僕にとっては、ココの意志が第一志望、定時退社が第二志望ですから」
僕はあっさりと勧誘を断り、泣きじゃくるゼノの頭をよしよしと撫でた。
「ほら、ゼノさん。行かないから泣き止んでください。かっこ悪いですよ」
「リト殿……! ああ、やはり貴殿は女神……いや、私だけの伴侶……! わかりました、今すぐレオンを国外追放にしてきます!!」
「それはやめて!!」
結局、レオンはゼノの殺気に押されて(半分くらい呆れて)退散していった。
だが、この日からゼノのガードはさらに厳しくなり、僕の執務室の周りには「ゼノ以外の全人類(イケメン含む)通行禁止」という不穏な結界が張られることになったのである。
「リト殿、もう一度言ってください。『ゼノさんが一番だ』と……!」
「はいはい、仕事の挨拶(愛してる)に関しては、ゼノさんが一番重いですよ」
「意味が違いますが、今はそれで手を打ちましょう!!」
ゼノの独占欲が大爆発した一日。
僕の平穏なスローライフへの道は、ライバルの登場によってさらに遠のいた気がした。
王都の目抜き通り。魔導師団の備品を買い出しに来た僕の視線の先には、黄金の甲冑に身を包んだ、眩しすぎるほどのイケメンが立っていた。
ゼノが「月明かりの貴公子」なら、あちらは「太陽の王子」といった風情。
ウェーブがかった金髪をなびかせ、彼は真っ直ぐに僕たちの方へ歩いてきた。
「リト殿、見ないでください。目が腐ります。あれは隣国の聖騎士、レオンといって、中身が非常に残念な男です」
「お前が言うなよ」
ゼノが僕の肩を抱き寄せ、これ見よがしに威嚇の視線を送る。
しかし、金髪の聖騎士レオンは爽やかな笑みを絶やさず、僕の前で優雅に一礼した。
「……失礼。君が噂の『一撃で魔狼を更地にした魔導師』リト君だね? 想像していたよりもずっと可憐で、守ってあげたくなるような佇まいだ」
「あ、どうも。初めまして、嘱託魔導師のリトです。可憐っていうか、ただの寝不足ですけど」
「ふふ、謙遜することはない。君のような才能が、こんな暑苦しい男(ゼノ)の監視下に置かれているのは世界の損失だ。どうだい? 我が国に来ないか? 最高の待遇と、君専用の魔法庭園を約束しよう」
レオンが僕の手を取ろうと差し出した瞬間――。
バチッ!! と、激しい火花が散った。
ゼノが音速で僕とレオンの間に割り込み、その手を叩き落としたのだ。
「レオン。その汚い手でリト殿に触れようとするな。貴様の国など、私が三日で地図から消してやろうか?」
「おやおや、怖いねぇ。ゼノ、君は相変わらず独占欲が強すぎる。リト君は君の所有物じゃない。……だろう? リト君」
レオンが僕にウインクを投げてくる。
……正直、どっちもどっちである。
「あの、二人とも。僕はどこに行っても『定時で帰れる』なら文句ないんですけど。魔法庭園っていうのは、もふもふした動物もいますか?」
僕がそう尋ねると、レオンの目がキラリと光った。
「もちろんだとも。我が国には伝説の『飛天綿毛猫(フライング・ポム)』が生息している。君なら、彼らと一日中遊んで暮らせるはずだ」
「飛天綿毛猫……っ! 行きます!!」
「リト殿ォォォ!! 行かせません! 許しません! 行くなら私を殺してからにしてください!!」
ゼノが僕の腰にしがみつき、人目も憚らず泣き叫び始めた。
国宝級イケメン聖騎士が、路上で「行かないでー!」と駄々をこねる姿に、通行人たちが一斉に足を止める。
「離してくださいゼノさん、重い! 飛天綿毛猫ですよ!? 空飛ぶもふもふですよ!?」
「あんなもの、ただの浮遊する毛玉です! 欲しければ私が今すぐ全個体捕獲して、貴殿の寝室に詰め込みます! だから、あんな太陽のパチモンみたいな男に付いていかないでください!!」
「パチモンとは失礼な。リト君、彼は君を束縛することしか考えていない。私の元へ来れば、君に真の自由を与えよう」
レオンが僕の反対側の手を握ろうとする。
……が、その瞬間、僕の腕の中から「キャンッ!」という鋭い鳴き声が響いた。
ココだ。
ココがレオンの手に向かって、本気の「伝説の魔獣」としての威圧を放ったのだ。
「……っ!? なんだ、この小さな犬は……。私の聖騎士としての加護が、本能で危険を察知している……?」
「ココ、ナイス。……レオンさん。お誘いは嬉しいですけど、ココが嫌がってるみたいなんで、やっぱりやめときます」
「えっ? そんな理由で……?」
「僕にとっては、ココの意志が第一志望、定時退社が第二志望ですから」
僕はあっさりと勧誘を断り、泣きじゃくるゼノの頭をよしよしと撫でた。
「ほら、ゼノさん。行かないから泣き止んでください。かっこ悪いですよ」
「リト殿……! ああ、やはり貴殿は女神……いや、私だけの伴侶……! わかりました、今すぐレオンを国外追放にしてきます!!」
「それはやめて!!」
結局、レオンはゼノの殺気に押されて(半分くらい呆れて)退散していった。
だが、この日からゼノのガードはさらに厳しくなり、僕の執務室の周りには「ゼノ以外の全人類(イケメン含む)通行禁止」という不穏な結界が張られることになったのである。
「リト殿、もう一度言ってください。『ゼノさんが一番だ』と……!」
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