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2章 大切な友達
16.大切な友達の笑顔
しおりを挟むタクシーを使って大我くんが住んでるアパートまで行くと、ちょうど歩いていた大我くんと鉢合わせた。あ、大我くんも出掛けていたのか。
アパートの前にいる俺を見つけた大我くんが、「あ」と声を出して近付いて来た。
「よう!ナオキングの方が早かったみたいだな」
「今着いた所だよ。大我くん、今日バイトは?」
「焼肉屋やって来た。そんでこの後コンビニ~」
「えっ、この後!?」
大我くんから聞いていたから掛け持ちをしているのは知っていたけど、この後入っているとは思わなかった。と言うか、大我くんがこの後話そうって……
俺が戸惑っていると、大我くんはニッと笑ってアパートの階段を上がって行った。
「すぐ行かなきゃだけど、まぁ上がれや」
「う、うん」
俺来て良かったのかな?
すぐに行かなきゃいけないのにちゃんと話せるのかなぁ?
大我くんのアパートには何度か来た事がある。
大我くんはとてもワイルドな生活をしている。
まず、部屋の中がとてもワイルドだ。物がたくさんあって初めて来た時は、伊吹さんの家とは違う意味で身動きが取れなかった。
玄関でずっと固まっていたら、適当に踏んで中に進めと言われたけど、人様の家で人様の物の上を歩くなんてそんな事出来る訳もなく、障害物を端に避けたり、何とか足場を見付けて進んだんだ。
そんな大我くんの部屋だけど、今日もそうだとばかり思っていたら、少し違った。まず玄関に中身がパンパンに詰まったゴミ袋が三袋置いてあった。そして部屋まで続く廊下の床が見えていた。
「ゴミの日まだだからよ。それ避けて入ってくれや」
「うん。掃除したんだね」
「まぁな。伊吹が引いてたからな」
「…………」
伊吹さんの名前が出てドキッとしてしまう。
大我くんは伊吹さんの為に部屋の掃除をしたんだ……
サラッと言う大我くんのその言葉を聞いて、俺は改めて大我くんは伊吹さんの事を本気で好きなんだと実感した。
「ってもまだ途中だけどな!ほら部屋ん中はまだこんな感じ~」
短い廊下の突き当たり部屋、ドアが開きっぱなしだったから既に見えているけど、そこも中心部は割と片付いていた。あまり広いとは言えない大きさの部屋だけど、それでも学生一人が暮らすには十分だと思う。部屋にはキッチンも併設されていて、その奥が部屋になっている。いつ来ても敷いてあった布団は今では乱雑に畳まれて部屋の隅に追いやられていた。
そのおかげか少し広くなった気がした。
「よし、時間がねぇから手短に話すぞー?」
「うん」
そう言いながら大我くんは着ていたTシャツを脱ぎ始めた。さっきからずっと大我くんから焼肉屋さんの良い匂いがしていた。この後のコンビニのバイトの為に着替えるんだろう。
上半身裸になった大我くんはとても男らしい体付きをしていた。筋肉質とまでは行かないけど、無駄の無い体には何もしなくても分かるぐらいの程良い筋肉が付いている。
そして大我くんの体で目を引くと言えば、右腕に入ったトライバルタトゥーだ。堂々とした鳳凰が彫られていて、とても大我くんに似合っていて少しだけかっこいいなと思っている。
身長は俺とそれ程変わらないけど、その体格差もあって大我くんの方が大きく見えるんだ。
大我くんはその辺に落ちていたTシャツを着ながら話し始めた。
「この前伊吹とここで三人で会っただろ?そん時から俺は学校へ行ってない」
「そうだね」
「俺はこのままだと単位が足りなくなる!」
「う、うん。危ないよね」
「そこでだ!ナオキングに助けてもらいたい!」
「えっ!俺に!?」
まさかの話題に俺は驚いていた。てっきり伊吹さんとの事かと思っていた。いや、俺と大我くんが気まずくなった原因はそれしかないから、まさか単位の相談をされるとは思っていなかった。今まで大我くんはそんな心配してる様子も無かったから。
「ナオキングって優等生じゃん?一番適任じゃん?なぁ頼むよ~!俺、二年やるとかやだよ~」
「でも、俺と大我くんて学部が違うし、これから単位を落とさないようにコツコツ授業に出て成果を出すしかないんじゃないかな?」
「バイト掛け持ち始めてから昼間は眠くてよ~。つい寝過ごしちまうんだわ」
「それって、俺に大我くんの代わりに授業に出てくれって事?それは無理だよっ!」
「代返を頼んでんじゃねぇよ。そんなのクソ真面目なナオキングがやる訳ないのは分かってら~」
「それじゃあ何を協力すればいいの?俺、工学部じゃないし専門的な事は教えられないよ?」
たまにやってる人を見かけるけど、いくら大切な友達の為とは言え、代返だなんてそんな悪い事出来る訳ないよ。そもそも大我くんとは学部が違うから、取ってる授業もほとんど被らないんだ。俺が協力出来る事なんて思い付かないけど。
困ってると、髪型を直していた大我くんはニシシと笑ってこう言った。
「授業関係は自分で何とかするよ!ただナオキングには毎朝起こしに来てもらいてぇんだ♪」
「大我くんを起こす……迎えに来て欲しいのか」
「そ♪ナオキングなら毎日朝から授業出てんだろ?こんなの頼めるのナオキングしかいねぇんだよ!な?頼むよ~」
「電話をするのじゃダメなの?」
「俺は目覚まし掛けても無理なんだ。電話ぐれぇで起きられる訳ねぇだろ」
そんなの知らないよっ!随分上から言うけど、とても大我くんらしいなとか思っちゃったよ!
でも、大我くんちは大学の近くにあって、朝ここへ寄るだけなんだよな。それなら出来なくは無い事だ。
それに、友達に頼られるのってなんだか嬉しい。
「コンビニ終わるの朝方でよ~、帰って寝るともう昼過ぎてんの!だからさ、俺の事殴ってでも起こしてくれよ~。頼む!」
「いいよ。俺も朝から大我くんと学校に行けるの楽しみだから」
「本当か!?やっぱりナオキングだわぁ♪あ、合鍵渡しとくな!っても俺鍵掛けねぇから開いてると思うけど!よろしくな♪」
「いや、鍵は掛けようよ……」
俺が思っている事を言うと、大我くんは嬉しそうに笑顔を見せて喜んでくれた。
俺も嬉しくて笑った。
何より大我くんは俺に怒っていなかった。それが嬉しくてつい伊吹さんとの事を話すのを逃してしまったんだ。
言える訳ないよ。せっかく大我くんとまた仲良く話す事が出来たのに。
でもちゃんと話さなくちゃ。大切な友達だからこそ、本当の事を伝えなきゃダメなんだ。
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