4 / 7
4 勿体ないお化けが出るわよーオバタリアンは食材を無駄にするのは許さないーその1
しおりを挟む
『うん、うん。これで面倒な旦那様のお世話はペクスィモちゃんに丸投げっと……ん? なんか侍女達の視線が熱いわねぇ』
「ジュリエット様! 素晴らしいです。その慈悲深さと寛容さ、このアルシナ感激いたしましたっ! 先代の亡くなられた奥様以上の女傑! ケビン公爵家は奥様がいらっしゃる限り安泰です!」
侍女長のアルビナが真理に抱きつき感涙する。
「え? あぁ、そうかしら? なんていうか……おほほほ、当主夫人として当然のことですわ」
『だって、イリスィオスのことなんてなんとも思ってないしねぇ。私から見たらまだほんの子供よ。こんな若僧にヤキモチなんか湧きようもないわ。孫よ、孫。お子ちゃまにしか見えんわ。それより早くこのバカップルを追っ払ってなんか食べたいわぁ』
「では、とにかく旦那様はペクスィモさんを労ってあげてくださいな。ペクスィモさんの食欲が戻るように気をつけてあげてくださいね。お腹の子供はケビン公爵家の大事な子供ですからね。じゃぁ、仲良くお二人とも離れにどうぞ移動してくださいな」
真理はそう言いながら手をひらひらさせたが、固まったように動かないイリスィオス。
「そうですとも! 奥様のおっしゃる通りに旦那様はするべきです。さぁ、さっさと離れに行ってください。大事な奥様の食事が冷めてしまいますわ。コックが奥様の為にトマトスープ仕立てのパン粥を作りましたよ。ミルクに蜂蜜もたっぷり入れて持って来ますからね」
アルシナはイリスィオス達を手際よく追いたてると、真理の食事をいそいそと自ら運ぶのであった。
翌日は朝から侍女達の動きがいつもと違う。いつも来る愛想のない専属侍女達の代わりに恭しくアルシナが真理の寝室にやって来て、そっと起こすと静かにカーテンを開ける。しかもその手には今まで持って来たこともない白いバラの花束を持っていた。
「奥様のお部屋に飾りましょう。高貴な白バラはケビン公爵家の紋章にも描かれております。代々、ケビン公爵夫人のお部屋にはこの花が飾られていました。これからは欠かさずお持ちしますね」
「あら、ありがとう。とても綺麗ね」
いつもツンとしていたアルシナが真理を崇めるような眼差しで見つめており、少々こそばゆい思いのする真理である。
「はい、奥様にぴったりですわ。気高い自己犠牲の精神と海のごとき寛容な広いお心! この白バラはそのような奥様にぴったりでございます」
真理はアルシナの過大評価に戸惑い苦笑するのだった。
豪華な食堂の長いテーブルには朝からたくさんの食べ物が並び、真理の勿体ないオバタリアン気質がまた発動する。
『スクランブルエッグにカリカリに焼いたベーコンと、ほどよく焦げ目のついたソーセージ、サラダまではいいとしても……なぜここでディナーに食べるような肉の塊まで出現するのよ! パンの種類もバゲット、ブリオッシュ、クロワッサン、ボールの形のブール、この柔らかい山形パンはパン・ド・ミだわ。スープにサラダ、フレッシュジュース5種にミルク。しかもデザートも7種類あって、とても私一人では食べきれないわよ。量も種類も多すぎて……ここはホテルのバイキングかっての!』
「この朝食はいつもより多いのでは? 旦那様も離れでお召し上がりになるのになぜこれほど豪華なのかしら?」
「それは、ジュリエット様を当主夫人として使用人一同が認めたからですわ。ケビン公爵夫人ともなればこの国一番の資産家の奥方様。ケビン公爵家はダイアモンド鉱山をいくつもお持ちではありませんか。当主夫人の前に並べられる皿の数は権力と富の象徴です!」
アルシナが鼻の穴を膨らませて語気も荒く当然のように主張する様子に、この世界の価値観の愚かさにため息をつく真理であった。
「そうね。そういうことならこの食事量は必要悪かしら? でも流石にこれは一人では無理よ。この余ったものはどうなるの?」
「当主夫妻のお食事の余りは潔く捨てます。残飯が大量で高級食材であることも富と権力の象徴ですので……」
「まぁ、なんてこと! 勿体ないお化けが夢に出てくるわよ。だったら、私から提案があるわ」
୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧
※ご注意
勿体ないお化けとは
概要
1982年12月電通大阪制作。テーマ「教育」のひとつとして、食べ物を粗末にしないことを啓蒙する目的で制作された。当時人気番組だった『まんが日本昔ばなし』(毎日放送・TBS系)と同様に、中田実紀雄プロデュースのアニメーション、常田富士男と市原悦子のナレーションを起用。ストーリーそのものも昔話をモチーフに仕上げられており、ほのぼのと心情に訴える作品となった。人気を受け、本CMは後述の関連作品とともに1990年代まで長期に渡りテレビで放映された。
CMに現れるもったいないお化けは一般に言われる「お化け」の典型であり、報恩感謝を怠った者に文字通り化けて現れている。御霊信仰のたたり、もしくは仏教の因果応報を子供向けの柔らかい説話風に仕立て上げるための、本CM向けのオリジナルである。
CMは60秒版、30秒版、さらに英語版も作成された。
あらすじ
昔、寺の和尚が子どもたちを晩ごはんに招く。しかし、子どもたちは「大根嫌いじゃ」「豆嫌いじゃ」などと言いながら嫌いな食べ物を次々と跳ねのけてしまう。するとその夜、子どもたちの前に紫の紋付き着物を纏った食べ物のお化けが現れ、子どもたちを取り囲んで体を左右に揺らしながら「もったいねぇ~」と恐ろしい声で怖がらせる。その後、その出来事を知った和尚は「それは『もったいないお化け』というものじゃよ」と答える。それ以来、子どもたちは食事を残さず食べるようになった。
CMの最後には「たべものを大切に」の文字が表示される。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より抜粋
『』は真理の心の声
「ジュリエット様! 素晴らしいです。その慈悲深さと寛容さ、このアルシナ感激いたしましたっ! 先代の亡くなられた奥様以上の女傑! ケビン公爵家は奥様がいらっしゃる限り安泰です!」
侍女長のアルビナが真理に抱きつき感涙する。
「え? あぁ、そうかしら? なんていうか……おほほほ、当主夫人として当然のことですわ」
『だって、イリスィオスのことなんてなんとも思ってないしねぇ。私から見たらまだほんの子供よ。こんな若僧にヤキモチなんか湧きようもないわ。孫よ、孫。お子ちゃまにしか見えんわ。それより早くこのバカップルを追っ払ってなんか食べたいわぁ』
「では、とにかく旦那様はペクスィモさんを労ってあげてくださいな。ペクスィモさんの食欲が戻るように気をつけてあげてくださいね。お腹の子供はケビン公爵家の大事な子供ですからね。じゃぁ、仲良くお二人とも離れにどうぞ移動してくださいな」
真理はそう言いながら手をひらひらさせたが、固まったように動かないイリスィオス。
「そうですとも! 奥様のおっしゃる通りに旦那様はするべきです。さぁ、さっさと離れに行ってください。大事な奥様の食事が冷めてしまいますわ。コックが奥様の為にトマトスープ仕立てのパン粥を作りましたよ。ミルクに蜂蜜もたっぷり入れて持って来ますからね」
アルシナはイリスィオス達を手際よく追いたてると、真理の食事をいそいそと自ら運ぶのであった。
翌日は朝から侍女達の動きがいつもと違う。いつも来る愛想のない専属侍女達の代わりに恭しくアルシナが真理の寝室にやって来て、そっと起こすと静かにカーテンを開ける。しかもその手には今まで持って来たこともない白いバラの花束を持っていた。
「奥様のお部屋に飾りましょう。高貴な白バラはケビン公爵家の紋章にも描かれております。代々、ケビン公爵夫人のお部屋にはこの花が飾られていました。これからは欠かさずお持ちしますね」
「あら、ありがとう。とても綺麗ね」
いつもツンとしていたアルシナが真理を崇めるような眼差しで見つめており、少々こそばゆい思いのする真理である。
「はい、奥様にぴったりですわ。気高い自己犠牲の精神と海のごとき寛容な広いお心! この白バラはそのような奥様にぴったりでございます」
真理はアルシナの過大評価に戸惑い苦笑するのだった。
豪華な食堂の長いテーブルには朝からたくさんの食べ物が並び、真理の勿体ないオバタリアン気質がまた発動する。
『スクランブルエッグにカリカリに焼いたベーコンと、ほどよく焦げ目のついたソーセージ、サラダまではいいとしても……なぜここでディナーに食べるような肉の塊まで出現するのよ! パンの種類もバゲット、ブリオッシュ、クロワッサン、ボールの形のブール、この柔らかい山形パンはパン・ド・ミだわ。スープにサラダ、フレッシュジュース5種にミルク。しかもデザートも7種類あって、とても私一人では食べきれないわよ。量も種類も多すぎて……ここはホテルのバイキングかっての!』
「この朝食はいつもより多いのでは? 旦那様も離れでお召し上がりになるのになぜこれほど豪華なのかしら?」
「それは、ジュリエット様を当主夫人として使用人一同が認めたからですわ。ケビン公爵夫人ともなればこの国一番の資産家の奥方様。ケビン公爵家はダイアモンド鉱山をいくつもお持ちではありませんか。当主夫人の前に並べられる皿の数は権力と富の象徴です!」
アルシナが鼻の穴を膨らませて語気も荒く当然のように主張する様子に、この世界の価値観の愚かさにため息をつく真理であった。
「そうね。そういうことならこの食事量は必要悪かしら? でも流石にこれは一人では無理よ。この余ったものはどうなるの?」
「当主夫妻のお食事の余りは潔く捨てます。残飯が大量で高級食材であることも富と権力の象徴ですので……」
「まぁ、なんてこと! 勿体ないお化けが夢に出てくるわよ。だったら、私から提案があるわ」
୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧
※ご注意
勿体ないお化けとは
概要
1982年12月電通大阪制作。テーマ「教育」のひとつとして、食べ物を粗末にしないことを啓蒙する目的で制作された。当時人気番組だった『まんが日本昔ばなし』(毎日放送・TBS系)と同様に、中田実紀雄プロデュースのアニメーション、常田富士男と市原悦子のナレーションを起用。ストーリーそのものも昔話をモチーフに仕上げられており、ほのぼのと心情に訴える作品となった。人気を受け、本CMは後述の関連作品とともに1990年代まで長期に渡りテレビで放映された。
CMに現れるもったいないお化けは一般に言われる「お化け」の典型であり、報恩感謝を怠った者に文字通り化けて現れている。御霊信仰のたたり、もしくは仏教の因果応報を子供向けの柔らかい説話風に仕立て上げるための、本CM向けのオリジナルである。
CMは60秒版、30秒版、さらに英語版も作成された。
あらすじ
昔、寺の和尚が子どもたちを晩ごはんに招く。しかし、子どもたちは「大根嫌いじゃ」「豆嫌いじゃ」などと言いながら嫌いな食べ物を次々と跳ねのけてしまう。するとその夜、子どもたちの前に紫の紋付き着物を纏った食べ物のお化けが現れ、子どもたちを取り囲んで体を左右に揺らしながら「もったいねぇ~」と恐ろしい声で怖がらせる。その後、その出来事を知った和尚は「それは『もったいないお化け』というものじゃよ」と答える。それ以来、子どもたちは食事を残さず食べるようになった。
CMの最後には「たべものを大切に」の文字が表示される。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より抜粋
『』は真理の心の声
552
あなたにおすすめの小説
心を失った彼女は、もう婚約者を見ない
基本二度寝
恋愛
女癖の悪い王太子は呪われた。
寝台から起き上がれず、食事も身体が拒否し、原因不明な状態の心労もあり、やせ細っていった。
「こりゃあすごい」
解呪に呼ばれた魔女は、しゃがれ声で場違いにも感嘆した。
「王族に呪いなんて効かないはずなのにと思ったけれど、これほど大きい呪いは見たことがないよ。どれだけの女の恨みを買ったんだい」
王太子には思い当たる節はない。
相手が勝手に勘違いして想いを寄せられているだけなのに。
「こりゃあ対価は大きいよ?」
金ならいくらでも出すと豪語する国王と、「早く息子を助けて」と喚く王妃。
「なら、その娘の心を対価にどうだい」
魔女はぐるりと部屋を見渡し、壁際に使用人らと共に立たされている王太子の婚約者の令嬢を指差した。
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」
過去に戻った筈の王
基本二度寝
恋愛
王太子は後悔した。
婚約者に婚約破棄を突きつけ、子爵令嬢と結ばれた。
しかし、甘い恋人の時間は終わる。
子爵令嬢は妃という重圧に耐えられなかった。
彼女だったなら、こうはならなかった。
婚約者と結婚し、子爵令嬢を側妃にしていれば。
後悔の日々だった。
私はあなたの正妻にはなりません。どうぞ愛する人とお幸せに。
火野村志紀
恋愛
王家の血を引くラクール公爵家。両家の取り決めにより、男爵令嬢のアリシアは、ラクール公爵子息のダミアンと婚約した。
しかし、この国では一夫多妻制が認められている。ある伯爵令嬢に一目惚れしたダミアンは、彼女とも結婚すると言い出した。公爵の忠告に聞く耳を持たず、ダミアンは伯爵令嬢を正妻として迎える。そしてアリシアは、側室という扱いを受けることになった。
数年後、公爵が病で亡くなり、生前書き残していた遺言書が開封された。そこに書かれていたのは、ダミアンにとって信じられない内容だった。
結婚するので姉様は出ていってもらえますか?
基本二度寝
恋愛
聖女の誕生に国全体が沸き立った。
気を良くした国王は貴族に前祝いと様々な物を与えた。
そして底辺貴族の我が男爵家にも贈り物を下さった。
家族で仲良く住むようにと賜ったのは古い神殿を改装した石造りの屋敷は小さな城のようでもあった。
そして妹の婚約まで決まった。
特別仲が悪いと思っていなかった妹から向けられた言葉は。
※番外編追加するかもしれません。しないかもしれません。
※えろが追加される場合はr−18に変更します。
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる