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果たしてこれはwin-winなのか
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しおりを挟む璃湖の秘部を夢中で舐めていた福永は、ふと彼女の反応がなくなっていることに気づいて動きを止めた。
ネクタイを外そうとして、ピタリと止まる。同意なく裸を見てしまうのは良くない気がする。いや、良くない。ようやくおもちゃになるということを認めてもらえたのだ。信頼を損なうようなことはしたくなかった。
目隠しをしたまま彼女の衣服を整え、ネクタイを外す。胸が上下しているのを見て、眠ってしまっただけのようだと安心する。
時計を見ると、夕方の四時を少し過ぎたところだった。約三時間、事に及んでいたことになる。我ながら怖いほどの執拗さである。
だが、少しの疲れもなく、むしろ深い充実感が全身を包んでいる。
桜色に染まった頬を撫で、目尻に浮かんだ涙を指で拭う。それから少し開いたぽってりとした唇を撫でた。
かわいらしい喘ぎ声だった。福永は普段の璃湖の声も好ましく思っているが、あの快楽を滲ませた蕩けるような甘さの官能的な声もすごくいい。それを聞かせるのは自分だけであってほしいと願うばかりだ。
福永は脱がせたまま放ってあった璃湖のピンク色のショーツを手に取り、それを鼻に当てた。これは信頼を損なう行為に当たらないのかと理性が告げるが、濃厚で官能的な香りにすべてが吹き飛ぶ。
すうっと大きく息を吸い込みながら、ジーンズのボタンを外す。下着の中に手を入れると、ぬちゃっという粘着質な音が部屋に響いた。
三時間萎えることなく勃ちっ放しだった陰茎の先っぽからは、ぬめった汁がこぼれ下着を濡らしている。我慢汁というヤツだ。
もちろん、これが出るのも十二年振りである。璃湖のショーツの匂いを嗅ぎながら、福永は感動で泣きそうになった。
下着から自身を取り出し、眠っている璃湖を見つめながら上下に扱く。それを数分続けるが、性的快感は得られるものの射精にたどりつける気がしない。
眠っている璃湖がいつ起きるか気が気でないため、集中できないせいもあるのだろうか。さすがにこんな変態じみた姿を晒したら引かれてしまうに違いない。
焦りすぎるのも良くない。福永は諦めて、身なりを整えて立ち上がった。さすがに濡れた下着をこのまま履き続けるのは不快だ。
ついでに夕飯も買ってこようと玄関に向かう。璃湖は美味しいものに目がない。彼女に福永という存在を刻むには、餌付けも非常に有効である。
それに自分が与えたものに喜んで食いつく彼女の姿に、福永は喜びを見出していた。持参したケーキを幸せそうに頬張る姿を思い出し、自然と口元が緩む。
部屋の鍵が靴箱の上にあるのを見つけて、防犯上危ないだろうと思いながらそれを手に持つ。つけ込んだ張本人が言うものなんだか、彼女は少し無防備すぎる。
後で先輩としてやんわり注意しておこうと外に出ると、ちょうど彼女の右隣の住人と出くわした。若い中肉中背男だ。
福永を見て驚いたように目を見開く男にニコリと微笑みかける。誰にでも愛想良くしてしまうのはもはや彼の性である。
「こんにちは」
「あ、こ、こんにちは」
動揺したように視線を揺らした男が、福永の横を慌てたように小走りで通り抜けていく。その背中を、冷たい視線を送りながら見送った。
もしかして、声が聞こえていたのだろうか。彼女が必死に喘ぎ声を出すのを我慢していたことを思い出す。途中から我慢できなくなっていたが、そんな様子も愛らしかった。
隣の住人が男だということだけでも不快だというのに、璃湖のかわいい声を聞かれていたなど最悪だ。それにこのアパートは防犯面でも心配なところが多すぎる。
ドアについていたチェーンもなんとも心許ない細さだったことを思い出し、ため息をつく。
無事に彼女と恋人になれたら、すぐに同棲に持ち込めるように策を練っておく必要がありそうだ。いや、それよりもすぐに結婚か。自分はそれでもまったく構わない。
なんとも気が早いことを考えながら、スマホを取り出しこの辺りのグルメ情報を調べる。
確かこの辺りに、知る人ぞ知るトルコ料理の名店があったはずだ。福永も食べることは大好きである。グルメ巡りが唯一の趣味といえる。それがこんなところで役に立つなんて。やはり璃湖は運命の女に違いない。
璃湖が幸せそうに微笑む姿を思い浮かべながら、福永は目当ての店に向かって歩き出した。
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