婚約破棄されたので、隠していた力を解放します

ミィタソ

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元婚約者様、ご機嫌いかが?

十四話 往生際がわるいですね

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「お前……本気で言っているのか?」

 アレクシスは信じられないといった表情で私を見つめる。

「ええ、本気です。というか、そちらこそ何を考えているんです?」

 私は呆れたようにため息をついた。

「婚約破棄された時、私は無能で価値がないと言われました。それなのに、今さら戻ってこい? そんな身勝手な話が通ると思っているんですか?」

「誤解だと言っただろう」

「そうですね。誤解だったのかもしれません。でも、それを証明するにはあまりにも遅すぎましたね」

 私はまっすぐにアレクシスを見据える。

「私を見下して捨てたのはあなた。その選択に後悔しているのなら、それはあなた自身の問題です」

「お前、まだ怒って――」

「怒ってなんかいませんよ?」

 私は微笑んで言った。

「むしろ感謝しているくらいです。おかげで今の自由な生活がありますから」

 それが本音だった。

 婚約者という立場に縛られ、貴族のしきたりに縛られ、生き方まで決められる――そんな人生から解放されたのだから。

「……お前、本気で王宮に戻る気はないのか?」

「ええ、何度聞かれても答えは変わりませんよ」

 アレクシスは悔しそうに唇を噛んだ。

(往生際が悪いですね)

 私がため息をつこうとした、その時。

「……なら、もういい」

 アレクシスは椅子から立ち上がり、私を冷たい目で見下ろした。

「お前が戻らないというのなら、それはそれで構わない。ただし――」

 彼は一瞬、躊躇うように口をつぐみ、それから低い声で告げた。

「王宮のことには、今後一切関わるな」

「……どういう意味です?」

「そのままの意味だ。貴族を捨てた以上、二度と王宮に足を踏み入れるなということだ」

「……なるほど」

 それは、“お前をもう王宮の人間として扱わない”という宣告。

 つまり、アレクシスは――

「私が貴族に戻る可能性があることを、少しは気にしていたんですね?」

「……そんなことはない」

「ふふ、そういうことにしておきます」

 私は心の中で小さく笑った。

(そんなに気になるなら、最初から捨てなければよかったのに)

「では、私はもう行きますね。王宮とは、これで本当にお別れですから」

 私はくるりと背を向け、扉へ向かう。

 そして、一歩外へ出る前に、最後に振り返って言った。

「アレクシス様――どうか、素敵な王妃を見つけてくださいね」

 そう告げて、私は王宮を後にした。
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