婚約破棄されたので、隠していた力を解放します

ミィタソ

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元婚約者様、ご機嫌いかが?

十三話 何を今さら

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「……は?」

 思わず間抜けな声が出た。

「お前を、王宮に戻したいと言っている」

 アレクシスは当然のように繰り返す。

 私はしばらく彼の顔を眺めた後、静かに言った。

「冗談を言うのはやめていただけますか?」

「冗談ではない」

「……なら、余計におかしいですね」

 私は腕を組み、じっくりと彼を観察した。

「私を無能だと断じ、一方的に婚約破棄したのは、そちらでしょう?」

 そう、彼は私を見限った。私には王妃としての価値がないと判断し、別の令嬢を選んだはず。

 それなのに――何を今さら。

「……あの時は、誤解があった」

 アレクシスは少し目を伏せ、ため息をついた。

「お前がここまでの力を持っていたとは知らなかった。貴族としては頼りなかったが、冒険者としての実力は評価に値する」

「……要するに、貴族としてはダメでも、戦えるなら使えるってことですか?」

「そういう言い方をするな。私はお前を買っている」

「買われた覚えはありません」

 ぴしゃりと言い放つと、アレクシスは苦笑した。

「相変わらず強情だな」

「そちらこそ、相変わらず自分本位ですね」

 彼はしばらく私を見つめ、やがて椅子に腰を下ろした。

「……率直に言う。お前を婚約者として、再び迎えたい」

「…………」

 思考が、一瞬止まった。

「……は?」

「お前を正式に婚約者として迎え、王妃候補に戻す。今回の件は、私の誤解だった。だから、お前を取り戻すことに決めた」

 私は言葉を失った。

(……何言ってるの、この人?)

「……すみません、聞き間違いかと思いました。もう一度言ってもらえますか?」

「だから、お前を――」

「いや、いりません」

 即答した。

 アレクシスの顔が、驚きに歪む。

「……断るのか?」

「ええ、もちろん。私に何のメリットが?」

「王妃になれるのだぞ?」

「いらないです」

 アレクシスの顔が険しくなる。

「お前、よく考えろ。これは――」

「私はもう貴族じゃありませんし、ギルドでの生活に満足しています。今さら王宮に戻れと言われても、興味がありません」

 私の言葉に、アレクシスは押し黙った。

 しばらくの沈黙の後――

「……後悔するぞ」

「後悔するのは、そちらでは?」

 私は軽く笑ってみせた。

「私はもう”セシリア・バートレイ”ではありません。――ただの冒険者ですから」
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