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63.取り調べの時間です
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「私の為とは具体的に何を指しているのですか?」
深呼吸をして問いかける。本当は言い訳するなとか責任転嫁をするなとか叫びたかった。
ただこれまでの様子を見るとフェリクスにそういう類の狡猾さは無いように思えてきた。
言葉を飾らず言えば、不器用かつ頭が悪い。
いや頭が悪いというのとも又違うか。
彼の中にある何かがその思考を明後日の方向に歪ませてるような気がする。
その何かがわかりそうでわからないけれど。
「……君は茶会には出たくないと思った」
「それはどうしてそう思われたのですか」
台詞だけなら完全に後出しの言い訳を重ねるフェリクスに私は再度問いかける。
彼はきょろきょろと落ち着かない様子になった後に口を開いた。
「言わなければ、いけないか?」
「なら私は王太子妃様に茶会について一切知らされて無かったと返信させて頂きますね?」
にっこりと笑って言う。フェリクスは石のように固まった。
脅しのつもりで口にしたが、実行しても構わない。
王家に責められるのは情報を握り潰していたフェリクスだ。
こちらの言葉が口だけでないと悟ったのか正面に座る伯爵は諦めたように言葉を吐き出した。
「君は王太子殿下のことが苦手だろう」
今度はこちらが固まる番だった。指摘は事実だ。
しかし肯定する訳にはいかない。腐っても相手は次期国王なのだ。
成程、だから彼は落ち着かない様子で周囲を警戒していたのか。今更気づく。
嫌いですと答えるのも不味ければ嫌いかと問いかける高位すら不敬だ。
だからと言って沈黙を続ける訳にはいかない。
「……どうして、そう思われたのですか」
同じ台詞を繰り返した形になってしまった。しかし他に適切な台詞が浮かばない。
それに知りたいという気持ちは事実だ。大して親しくも無いフェリクスに悟られる程態度に出ていたのだろうか。
王太子殿下について話題にしたことすら数える程しかないのに。
「式を挙げる時に、王太子殿下を招かないと告げたら君はほっとした顔をしていた」
マリアン顔に出過ぎ。今は天国で男とよろしくやっている相手に内心突っ込む。
そういえば当時の二人は公爵令嬢と伯爵家当主の組み合わせとしては考えられないレベルの地味婚をしたんだった。
でもその時に気づいたとしても王家の招待を私に隠して良い理由にはならない。
連続不参加に疑問と不満を抱いた王太子側がこうやって名指しで文句を言ってくるのだから。
「でも別に私を思いやって招待を断っていた訳ではないですよね?」
「それは……」
「夫婦関係をフェリクス様が一方的に拒み続けているのを王家に知られたくなかっただけでは?」
「それは………ある」
あるんかい。いや正直に認めるんかい。
そう突っ込めたら楽なのになと思いながら私は膝の上で拳を握った。
今がその時なのかもしれない。
「そのことについて重ねて質問があります」
「……何だろうか」
「私と夫婦になるつもりが無かったのに、いや……私を妻として扱わないことを決めたのって何時頃ですか?」
結婚前からなら完全に詐欺の類だし、結婚後に気持ちが変わったなら何が切っ掛けか知りたい。
私は取り調べをする刑事の気分でフェリクスの赤い瞳を睨んだ。
深呼吸をして問いかける。本当は言い訳するなとか責任転嫁をするなとか叫びたかった。
ただこれまでの様子を見るとフェリクスにそういう類の狡猾さは無いように思えてきた。
言葉を飾らず言えば、不器用かつ頭が悪い。
いや頭が悪いというのとも又違うか。
彼の中にある何かがその思考を明後日の方向に歪ませてるような気がする。
その何かがわかりそうでわからないけれど。
「……君は茶会には出たくないと思った」
「それはどうしてそう思われたのですか」
台詞だけなら完全に後出しの言い訳を重ねるフェリクスに私は再度問いかける。
彼はきょろきょろと落ち着かない様子になった後に口を開いた。
「言わなければ、いけないか?」
「なら私は王太子妃様に茶会について一切知らされて無かったと返信させて頂きますね?」
にっこりと笑って言う。フェリクスは石のように固まった。
脅しのつもりで口にしたが、実行しても構わない。
王家に責められるのは情報を握り潰していたフェリクスだ。
こちらの言葉が口だけでないと悟ったのか正面に座る伯爵は諦めたように言葉を吐き出した。
「君は王太子殿下のことが苦手だろう」
今度はこちらが固まる番だった。指摘は事実だ。
しかし肯定する訳にはいかない。腐っても相手は次期国王なのだ。
成程、だから彼は落ち着かない様子で周囲を警戒していたのか。今更気づく。
嫌いですと答えるのも不味ければ嫌いかと問いかける高位すら不敬だ。
だからと言って沈黙を続ける訳にはいかない。
「……どうして、そう思われたのですか」
同じ台詞を繰り返した形になってしまった。しかし他に適切な台詞が浮かばない。
それに知りたいという気持ちは事実だ。大して親しくも無いフェリクスに悟られる程態度に出ていたのだろうか。
王太子殿下について話題にしたことすら数える程しかないのに。
「式を挙げる時に、王太子殿下を招かないと告げたら君はほっとした顔をしていた」
マリアン顔に出過ぎ。今は天国で男とよろしくやっている相手に内心突っ込む。
そういえば当時の二人は公爵令嬢と伯爵家当主の組み合わせとしては考えられないレベルの地味婚をしたんだった。
でもその時に気づいたとしても王家の招待を私に隠して良い理由にはならない。
連続不参加に疑問と不満を抱いた王太子側がこうやって名指しで文句を言ってくるのだから。
「でも別に私を思いやって招待を断っていた訳ではないですよね?」
「それは……」
「夫婦関係をフェリクス様が一方的に拒み続けているのを王家に知られたくなかっただけでは?」
「それは………ある」
あるんかい。いや正直に認めるんかい。
そう突っ込めたら楽なのになと思いながら私は膝の上で拳を握った。
今がその時なのかもしれない。
「そのことについて重ねて質問があります」
「……何だろうか」
「私と夫婦になるつもりが無かったのに、いや……私を妻として扱わないことを決めたのって何時頃ですか?」
結婚前からなら完全に詐欺の類だし、結婚後に気持ちが変わったなら何が切っ掛けか知りたい。
私は取り調べをする刑事の気分でフェリクスの赤い瞳を睨んだ。
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