53 / 63
第二章「恋愛」
52話
しおりを挟む
サライダオアシスの水精霊は恐怖を感じていた。
王城地区の火竜の気配が強大になっていたのだ。
火竜が子孫を残そうと試行錯誤しているのは分かっていた。
だが数は増えても、火竜に匹敵する子が産まれないので安心していた。
ところが急に、火竜ほどではないが、力有る個体が産まれ始めた。
身体強化した人間を種にする事で、強いドラゴニュートが産まれているのだと推測出来た。
恐ろしい事だった。
このままでは、この安住の地を奪い返されるかもしれないと、心から恐怖した。
だから手を打つ事にした。
(カチュア。
カチュア。
早くアシュラムと契りを結びなさい。
早く子を儲けるのです)
「ですが精霊様。
それでは火竜退治を諦めるのですか?」
(諦めるのではありません。
強い子が必要なのです。
火竜に負けない強い人の子が必要なのです。
アシュラムも水精霊の強い加護を受けています。
カチュアとアシュラムの子供なら、もっと強く水精霊の力を引き出せます)
水精霊はカチュアとアシュラムの子を求めていた。
潔癖過ぎるモノが多いサライダオアシスの水精霊だったが、中には心の広いモノもいた。
だから微生物だけは産まれ、水鳥が羽を休め水を飲むことが出来ていた。
そんな水精霊の意識が、火竜が強大化する事で、他の潔癖過ぎる水精霊の意識を変えていった。
潔癖過ぎる水精霊は、高山の清浄な湖にしか住めなかった。
数を増やす事も出来なかった。
広い湖に住みたいと心から思っていた。
だが広い湖沼には、多くの水草や生物が住んでいた。
潔癖な性格の水精霊には、それは我慢出来ない事だった。
そんな時に、水精霊と強い親和性を持つ水乙女が現れた。
初代の水乙女だった。
彼女と共感する事で強い力を得た水精霊は、砂漠地帯にオアシスを創り出し、自分達の楽園とした。
そこに山間部の水精霊が集まり、徐々に広いオアシスとなっていった。
最初火竜はオアシスが出来た事を喜んだ。
獲物の少ない砂漠や荒野に、食糧となる獲物が増えると考えたのだ。
最初はその通りだった。
火竜はオアシスの水精霊と共存していると思っていた。
だがある時、オアシスに近づく動物を襲おうとした時、水精霊が火竜を攻撃したのだ。
火竜は激怒した。
砂漠は長年火竜の縄張りだった。
オアシスを出来るのを許したのは、餌を増やすためだった。
なのに狩りの邪魔をする。
許せることではなかった。
オアシスを干上がらせてやると心に誓った。
だが時機を逸していた。
多くの水精霊が集まり、水乙女と多くの人間の祈りを手に入れた水精霊は、火竜を撃退するだけの力を手に入れていたのだ。
そんないきさつがあり、サライダオアシスの水精霊は、火竜とは相容れない関係だった。
王城地区の火竜の気配が強大になっていたのだ。
火竜が子孫を残そうと試行錯誤しているのは分かっていた。
だが数は増えても、火竜に匹敵する子が産まれないので安心していた。
ところが急に、火竜ほどではないが、力有る個体が産まれ始めた。
身体強化した人間を種にする事で、強いドラゴニュートが産まれているのだと推測出来た。
恐ろしい事だった。
このままでは、この安住の地を奪い返されるかもしれないと、心から恐怖した。
だから手を打つ事にした。
(カチュア。
カチュア。
早くアシュラムと契りを結びなさい。
早く子を儲けるのです)
「ですが精霊様。
それでは火竜退治を諦めるのですか?」
(諦めるのではありません。
強い子が必要なのです。
火竜に負けない強い人の子が必要なのです。
アシュラムも水精霊の強い加護を受けています。
カチュアとアシュラムの子供なら、もっと強く水精霊の力を引き出せます)
水精霊はカチュアとアシュラムの子を求めていた。
潔癖過ぎるモノが多いサライダオアシスの水精霊だったが、中には心の広いモノもいた。
だから微生物だけは産まれ、水鳥が羽を休め水を飲むことが出来ていた。
そんな水精霊の意識が、火竜が強大化する事で、他の潔癖過ぎる水精霊の意識を変えていった。
潔癖過ぎる水精霊は、高山の清浄な湖にしか住めなかった。
数を増やす事も出来なかった。
広い湖に住みたいと心から思っていた。
だが広い湖沼には、多くの水草や生物が住んでいた。
潔癖な性格の水精霊には、それは我慢出来ない事だった。
そんな時に、水精霊と強い親和性を持つ水乙女が現れた。
初代の水乙女だった。
彼女と共感する事で強い力を得た水精霊は、砂漠地帯にオアシスを創り出し、自分達の楽園とした。
そこに山間部の水精霊が集まり、徐々に広いオアシスとなっていった。
最初火竜はオアシスが出来た事を喜んだ。
獲物の少ない砂漠や荒野に、食糧となる獲物が増えると考えたのだ。
最初はその通りだった。
火竜はオアシスの水精霊と共存していると思っていた。
だがある時、オアシスに近づく動物を襲おうとした時、水精霊が火竜を攻撃したのだ。
火竜は激怒した。
砂漠は長年火竜の縄張りだった。
オアシスを出来るのを許したのは、餌を増やすためだった。
なのに狩りの邪魔をする。
許せることではなかった。
オアシスを干上がらせてやると心に誓った。
だが時機を逸していた。
多くの水精霊が集まり、水乙女と多くの人間の祈りを手に入れた水精霊は、火竜を撃退するだけの力を手に入れていたのだ。
そんないきさつがあり、サライダオアシスの水精霊は、火竜とは相容れない関係だった。
25
あなたにおすすめの小説
「婚約破棄してくれてありがとう」って言ったら、元婚約者が泣きながら復縁を迫ってきました
ほーみ
恋愛
アラン王太子の訪問から三日後。私の屋敷には、まるで王都中が興味津々とでも言わんばかりに、招かれざる客がひっきりなしに現れていた。
「ごきげんよう、レティシア様。少しだけお時間を――」
「申し訳ありません、ただいまお嬢様は“療養中”ですので」
メルの冷ややかな切り返しに、来客の顔が強ばるのを窓越しに見て、私はくすりと笑った。
(ふふ、いい気味)
婚約破棄された女に、ここまで関心を寄せるなんて皮肉な話だけど――貴族社会なんてそんなもの。誰かが落ちれば、その跡地を漁ろうと群がる。
そちらがその気なら、こちらもそれなりに。
直野 紀伊路
恋愛
公爵令嬢アレクシアの婚約者・第一王子のヘイリーは、ある日、「子爵令嬢との真実の愛を見つけた!」としてアレクシアに婚約破棄を突き付ける。
それだけならまだ良かったのだが、よりにもよって二人はアレクシアに冤罪をふっかけてきた。
真摯に謝罪するなら潔く身を引こうと思っていたアレクシアだったが、「自分達の愛の為に人を貶めることを厭わないような人達に、遠慮することはないよね♪」と二人を返り討ちにすることにした。
※小説家になろう様で掲載していたお話のリメイクになります。
リメイクですが土台だけ残したフルリメイクなので、もはや別のお話になっております。
※カクヨム様、エブリスタ様でも掲載中。
…ºo。✵…𖧷''☛Thank you ☚″𖧷…✵。oº…
☻2021.04.23 183,747pt/24h☻
★HOTランキング2位
★人気ランキング7位
たくさんの方にお読みいただけてほんと嬉しいです(*^^*)
ありがとうございます!
平民とでも結婚すれば?と言われたので、隣国の王と結婚しました
ゆっこ
恋愛
「リリアーナ・ベルフォード、これまでの婚約は白紙に戻す」
その言葉を聞いた瞬間、私はようやく――心のどこかで予感していた結末に、静かに息を吐いた。
王太子アルベルト殿下。金糸の髪に、これ見よがしな笑み。彼の隣には、私が知っている顔がある。
――侯爵令嬢、ミレーユ・カスタニア。
学園で何かと殿下に寄り添い、私を「高慢な婚約者」と陰で嘲っていた令嬢だ。
「殿下、どういうことでしょう?」
私の声は驚くほど落ち着いていた。
「わたくしは、あなたの婚約者としてこれまで――」
辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~
紫月 由良
恋愛
辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。
魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。
※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています
手放したのは、貴方の方です
空月そらら
恋愛
侯爵令嬢アリアナは、第一王子に尽くすも「地味で華がない」と一方的に婚約破棄される。
侮辱と共に隣国の"冷徹公爵"ライオネルへの嫁入りを嘲笑されるが、その公爵本人から才能を見込まれ、本当に縁談が舞い込む。
隣国で、それまで隠してきた類稀なる才能を開花させ、ライオネルからの敬意と不器用な愛を受け、輝き始めるアリアナ。
一方、彼女という宝を手放したことに気づかず、国を傾かせ始めた元婚約者の王子。
彼がその重大な過ちに気づき後悔した時には、もう遅かった。
手放したのは、貴方の方です――アリアナは過去を振り切り、隣国で確かな幸せを掴んでいた。
さよなら初恋。私をふったあなたが、後悔するまで
ミカン♬
恋愛
2025.10.11ホットランキング1位になりました。夢のようでとても嬉しいです!
読んでくださって、本当にありがとうございました😊
前世の記憶を持つオーレリアは可愛いものが大好き。
婚約者(内定)のメルキオは子供の頃結婚を約束した相手。彼は可愛い男の子でオーレリアの初恋の人だった。
一方メルキオの初恋の相手はオーレリアの従姉妹であるティオラ。ずっとオーレリアを悩ませる種だったのだが1年前に侯爵家の令息と婚約を果たし、オーレリアは安心していたのだが……
ティオラは婚約を解消されて、再びオーレリア達の仲に割り込んできた。
★補足:ティオラは王都の学園に通うため、祖父が預かっている孫。養子ではありません。
★補足:全ての嫡出子が爵位を受け継ぎ、次男でも爵位を名乗れる、緩い世界です。
2万字程度。なろう様にも投稿しています。
オーレリア・マイケント 伯爵令嬢(ヒロイン)
レイン・ダーナン 男爵令嬢(親友)
ティオラ (ヒロインの従姉妹)
メルキオ・サーカズ 伯爵令息(ヒロインの恋人)
マーキス・ガルシオ 侯爵令息(ティオラの元婚約者)
ジークス・ガルシオ 侯爵令息(マーキスの兄)
婚約破棄までの168時間 悪役令嬢は断罪を回避したいだけなのに、無関心王子が突然溺愛してきて困惑しています
みゅー
恋愛
アレクサンドラ・デュカス公爵令嬢は舞踏会で、ある男爵令嬢から突然『悪役令嬢』として断罪されてしまう。
そして身に覚えのない罪を着せられ、婚約者である王太子殿下には婚約の破棄を言い渡された。
それでもアレクサンドラは、いつか無実を証明できる日が来ると信じて屈辱に耐えていた。
だが、無情にもそれを証明するまもなく男爵令嬢の手にかかり最悪の最期を迎えることになった。
ところが目覚めると自室のベッドの上におり、断罪されたはずの舞踏会から1週間前に戻っていた。
アレクサンドラにとって断罪される日まではたったの一週間しか残されていない。
こうして、その一週間でアレクサンドラは自身の身の潔白を証明するため奮闘することになるのだが……。
甘めな話になるのは20話以降です。
[完結]死に戻りの悪女、公爵様の最愛になりましたーー処刑された侯爵令嬢、お局魂でリベンジ開始!
青空一夏
恋愛
侯爵令嬢ブロッサムは、腹違いの妹と継母に嵌められ、断頭台に立たされる。だが、その瞬間、彼女の脳裏に前世の記憶が蘇る――推理小説マニアで世渡り上手な"お局様"だったことを!そして天国で神に文句をつけ、特別スキルをゲット!? 毒を見破り、真実を暴く異世界お局の逆転劇が今始まる!
※コメディ的な異世界恋愛になります。魔道具が普通にある異世界ですし、今の日本と同じような習慣や食べ物なども出てきます。観賞用魚(熱帯魚的なお魚さんです)を飼うというのも、現実的な中世ヨーロッパの世界ではあり得ませんが、異世界なのでご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる