前世水乙女の公爵令嬢は婚約破棄を宣言されました。

克全

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第二章「恋愛」

53話

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「アシュラム様。
 どうか私の夫になって下さい。
 この国を御護りください」

「急にどうしたのです。
 何かあったのですか?
 正直に全て話して下さい。
 そうすれば本当に必要な手助けが出来ます」

「分かりました。
 全てを御話しします」

 カチュアは全てを正直に話した。
 この辺は清廉潔白な性格がいい方に出た。
 それを聞いたアシュラムは、自分と従者の水精霊の考えを話した。
 それはカチュアの水精霊にも伝わった。
 サライダオアシスの水精霊の仲間の間で激論が戦わされた。

 あくまでも清浄潔癖を言い立てる水精霊が多かった。
 だが中には、ある程度の汚濁は飲み込むべきだと、考えを改める水精霊もいた。
 自分に祈りを捧げる人間と共存共栄した事、火竜や下劣人間以外となら、妥協してもいいと考えたのだ。
 そんな水精霊の説得に、遂に多くの水精霊も妥協した。

 サライダ王国の民は半数に分けられた。
 水精霊への信仰心の強い人間は、水乙女のカチュアから、新たなオアシスに移住するように伝えられた。
 多くは元々のサライダ公爵家領民が多かった。
 残る事を指示された人間は、他領から逃げてきた者が多かった。

 当面の食糧は、元のサライダ王国から運ばれた。
 岩石地帯から石を切り出し、新たなオアシスの周囲に街を創り出した。
 城壁を造り、難攻不落の王城を創りだそうとした。
 清廉潔白な新たなオアシス都市を創り出そうとした。
 サライダ王国を、二つ以上のオアシス都市を支配下に置く、かつてのゴライダ王国以上の大国にしようとしたのだ。

「アシュラムの旦那。
 オアシスの水位が下がっています。
 王都に残った民が騒ぎ出しています。
 何とかしないと、このままではカチュア姫の後を追って、新しいオアシスに逃げてしまいます」

「大丈夫だ。
 皆が力を合わせて水精霊様に祈れば、減った水は補充することが出来る」

「そうだな。
 ここに来た頃に比べれば、遥かに力が増している。
 元の水精霊の中には、ここに残ってもいいと言う者もいるだろう。 
 なあ、アシュラム殿」

「ああ、結構な数の水精霊が、ここに残ると言ってくれている。
 少しは水位が下がるだろうが、農園に悪影響を与えることはない。
 いや、今迄は出来なかった、漁業も可能になるだろう。
 我らを守護する水精霊様は、魚を嫌ったりしないからな」

「そりゃ助かる。
 水精霊様に守護された国なのに、食べれられる魚が古い干物だけなんて、何の冗談かと驚いていたんだ」

「ジミーは魚料理が食べたかったのかい?」

「ああ、食べたくて食べたくて、毎日夢を見ていたよ」

 アシュラム達は色々と今後の事を相談した。
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