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28.それぞれの夜
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「とんだ大恥をかいたじゃない。なんでもっと上手くやらなかったのよ!
マルフォー伯爵家があんな下賤な者に振り回されるなどあってはならない事よ。分かってるの?
この(バシ!)・・考えなしの(バシ!)
・・愚か者が!(バシ!)」
「ごっごめんなさい。痛い、母上痛いです。許して下さい」
ガードナー家を出る時既に変形していた扇子は最早原型を留めていない。
ソールズベリーに置いてあった扇子はルーシーが全て撤去したので、別の扇子を使うのは勿体ないらしい。
「あの親子を相手にするならもっと頭を使わなくては! ガードナー商会と関連の商会を追い詰めるのよ。
裁判所の呼び出しが来るまでにやればきっと逆転できるわ。
早速『ガードナー商会は不正を働いているらしい』と話を広めるのよ!
購入した宝石が偽物だった事にしましょう」
床に座り込んでイライザに叩かれ放題になっていたリチャードが小さな声で反論した。
「ロンデリー子爵に相談した方が良くはないですか? 奴はもう何もするなって」
「あんな男に何ができるって言うの。あれに頼んだからこんな事になっているのよ。
役立たずの無能には真面な計画なんて出来やしないんだから。
さっさと手紙を書くなり会いに行くなりしなさい」
こうしてイライザは、ますます墓穴を掘っていく。
ヒューゴの手にリチャードが書いた手紙の一部が届き、アーロンが『名誉毀損と業務妨害』の訴状を書かされたのはこの後直ぐの事だった。
(巫山戯んな! 一体いくつやらかす気だ。俺の睡眠時間を返せー!)
今日もアーロンの悲痛な叫びが響き渡った。
それぞれの家に裁判所からの呼び出し状が届いた。
呼び出しを受けたのは、
・マルフォー伯爵家の三名
・ステラ・ラングストン侯爵令嬢
・サミュエル・ウォルスター侯爵
・チャールズ・ロンデリー子爵
・シェルバーン公爵家の家令
総勢七人と言う大所帯。
参考人としてシェルバーン公爵も呼び出されている。
出廷の日付けは呼び出し状が届いた二日後。
ヒューゴとルーシーから出される訴状の嵐に辟易した裁判所の決定だろうか・・。
異例の早さに戦々恐々とするリチャード達と、勢いづいたまま鼻息荒く戦闘態勢を取るイライザだった。
リチャードは弁護団を編成しようとしたが、何処の弁護士事務所からも丁寧な断りの手紙が届いた。
ステラは父親に泣きついたが却下された。本人には知らせていないが、裁判の後は修道院へ入れられる予定。
リチャードからのプレゼントやマルフォー伯爵家のツケで購入した物は全て、謝罪の手紙と共にガードナー家に届けられた。
サミュエルは父親に泣きついたが完全無視された。犯罪者となれば爵位は剥奪され弟が侯爵となる。
厳格な父親は軽微な犯罪であっても赦しはしないだろう。
ロンデリー子爵は被告であると同時に被告側の弁護士でもある。
イライザが仕出かした件を聞き、担当を降りようとしたが裁判所から却下された。
シェルバーン公爵は長文で法律用語マシマシの抗議文に恐れをなし、兄に泣きついたものの叱責を食らったのみ。
家令を切り捨てる事で保身を図ろうと考えているが、ガードナー相手なので震えが止まらない。
唯一旺盛な食欲をみせたのはイライザのみ。裁判になっても自分達の有利は揺るがないと信じている。
裁判官は皆貴族なのだから、成り上がりの話など真面に聞く訳がないと頑なに信じている。
そして、自分の作戦が上手くいっており貴族を敵に回す恐ろしさに震え上がっているとほくそ笑む。
イライザの夫デイビスは部屋に閉じ籠り出てこない。
宗教改革以降、聖職貴族は発言力を低下させ貴族院の力は低下した。
それに反し庶民院の力は増していった。
以前は世襲貴族が独占していた裁判機能だが、現在は庶民院の一代貴族も参加するようになっている。
そんな時代の移り変わりを知らぬまま・・。
明日・・裁判がはじまる。
マルフォー伯爵家があんな下賤な者に振り回されるなどあってはならない事よ。分かってるの?
この(バシ!)・・考えなしの(バシ!)
・・愚か者が!(バシ!)」
「ごっごめんなさい。痛い、母上痛いです。許して下さい」
ガードナー家を出る時既に変形していた扇子は最早原型を留めていない。
ソールズベリーに置いてあった扇子はルーシーが全て撤去したので、別の扇子を使うのは勿体ないらしい。
「あの親子を相手にするならもっと頭を使わなくては! ガードナー商会と関連の商会を追い詰めるのよ。
裁判所の呼び出しが来るまでにやればきっと逆転できるわ。
早速『ガードナー商会は不正を働いているらしい』と話を広めるのよ!
購入した宝石が偽物だった事にしましょう」
床に座り込んでイライザに叩かれ放題になっていたリチャードが小さな声で反論した。
「ロンデリー子爵に相談した方が良くはないですか? 奴はもう何もするなって」
「あんな男に何ができるって言うの。あれに頼んだからこんな事になっているのよ。
役立たずの無能には真面な計画なんて出来やしないんだから。
さっさと手紙を書くなり会いに行くなりしなさい」
こうしてイライザは、ますます墓穴を掘っていく。
ヒューゴの手にリチャードが書いた手紙の一部が届き、アーロンが『名誉毀損と業務妨害』の訴状を書かされたのはこの後直ぐの事だった。
(巫山戯んな! 一体いくつやらかす気だ。俺の睡眠時間を返せー!)
今日もアーロンの悲痛な叫びが響き渡った。
それぞれの家に裁判所からの呼び出し状が届いた。
呼び出しを受けたのは、
・マルフォー伯爵家の三名
・ステラ・ラングストン侯爵令嬢
・サミュエル・ウォルスター侯爵
・チャールズ・ロンデリー子爵
・シェルバーン公爵家の家令
総勢七人と言う大所帯。
参考人としてシェルバーン公爵も呼び出されている。
出廷の日付けは呼び出し状が届いた二日後。
ヒューゴとルーシーから出される訴状の嵐に辟易した裁判所の決定だろうか・・。
異例の早さに戦々恐々とするリチャード達と、勢いづいたまま鼻息荒く戦闘態勢を取るイライザだった。
リチャードは弁護団を編成しようとしたが、何処の弁護士事務所からも丁寧な断りの手紙が届いた。
ステラは父親に泣きついたが却下された。本人には知らせていないが、裁判の後は修道院へ入れられる予定。
リチャードからのプレゼントやマルフォー伯爵家のツケで購入した物は全て、謝罪の手紙と共にガードナー家に届けられた。
サミュエルは父親に泣きついたが完全無視された。犯罪者となれば爵位は剥奪され弟が侯爵となる。
厳格な父親は軽微な犯罪であっても赦しはしないだろう。
ロンデリー子爵は被告であると同時に被告側の弁護士でもある。
イライザが仕出かした件を聞き、担当を降りようとしたが裁判所から却下された。
シェルバーン公爵は長文で法律用語マシマシの抗議文に恐れをなし、兄に泣きついたものの叱責を食らったのみ。
家令を切り捨てる事で保身を図ろうと考えているが、ガードナー相手なので震えが止まらない。
唯一旺盛な食欲をみせたのはイライザのみ。裁判になっても自分達の有利は揺るがないと信じている。
裁判官は皆貴族なのだから、成り上がりの話など真面に聞く訳がないと頑なに信じている。
そして、自分の作戦が上手くいっており貴族を敵に回す恐ろしさに震え上がっているとほくそ笑む。
イライザの夫デイビスは部屋に閉じ籠り出てこない。
宗教改革以降、聖職貴族は発言力を低下させ貴族院の力は低下した。
それに反し庶民院の力は増していった。
以前は世襲貴族が独占していた裁判機能だが、現在は庶民院の一代貴族も参加するようになっている。
そんな時代の移り変わりを知らぬまま・・。
明日・・裁判がはじまる。
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