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「そう言えば静か…
誰にも文句を言われないと思ったら
ボース様がいないのですね?」
竜馬を走らせながら
イブが質問する。
「アレはクビにした。
粗暴な所はあっても忠義の者と思い込んでいたのに裏切り者…
ラミアの犬だった…
イブにも嫌な思いをさせて済まなかった。
注意すればするほど酷くなるので手をこまねいていたが…
サッサと排除すれば良かった」
不快気に吐き捨てるブルーベル。
晩餐会での態度でボースの主がラミアだと気付き
晩餐後食堂を出た所でクビを言い渡した。
母国から出る時忠誠を誓い付いて来てくれた忠義の者だと思えばこそ
イブへの失礼な態度を不快に思いつつも穏便に改めさせようと苦心していたというのに――
イブはホッとする。
理由も分からず憎しみの目を向けて来る大男なんて二度と会いたくない。
空が白み始め
この岩だらけの荒野を抜ければ国境!
という所で突如竜馬達が足を止める。
「‥どうした?」
「分かりません。
何か不穏な空気を感じている様で‥」
ブルーベルの問いにイブが竜馬の首を撫でながら答えている途中で
≪ヒュッ≫
「危ないッ!」
「ハッ‥
タウルス様ッ!?」
「タウルス!?」
タウルスの腕が矢傷を負って血に染まっている!
矢は左前方からイブに向かって飛んで来た。
イブの左側に居たタウルスが気付き身を挺してイブを庇ったのだ。
「タウルス様ッ」
「大丈夫、かすり傷です」
「私を庇って…
ありがとうございます」
「当然の事だ。
あなたは俺の‥
俺の主の大切な人だから」
タウルスの僅かな言い直しにハッとしたブルーベル、
イブの前…矢が飛んで来た方角に移動してイブをガードしながら
「私からも礼を言う。
ありがとう、タウルス」
タウルスに礼を言い。
矢を射った者に言い放つ。
「誰だ!?
物陰から女性に矢を放った卑怯者は!?
出て来い!
私が相手になろう!」
(えぇ!?)
イブは焦る。
前回のブルーベルなら鍛えていたし剣術も体術も見事であったが。
今回のブルーベルはぐうたらオジサン腹で――
タウルスも利き手側の腕に矢傷を負ってしまったし…
戦うなんて無帽でしかない!
「‥その女は死ぬべきなのです!」
そう言いながら岩陰から出て来たのは…
「ボース!貴様か!
イブを傷つける事、絶対に許さないぞ!」
怒りに染まったブルーベルの低い声にボースはワナワナと震え
「そんな女のどこが良いのです!?
地味ブスで無能で年寄りで!
あなた様に全く相応しくない!」
「ふざけるな!
どこをどう見ればそうなる!?
イブはただでさえ可愛いのに何をやっても可愛いし何才だって可愛いのに!」
(ひぃぃ‥ベル様?)
真面目な人間に真剣に主張されてイブは真っ赤になる。
「あなた様こそ目がおかしくなっているのですよ!
なぁ、タウルス!」
「裏切り者が気安く話し掛けるな!
イブを傷つけたらただじゃ置かない!」
「一体何なんだ…
ブスをヒロイン扱いして…
ヒロインに相応しいのは我が主、
美しく高貴なラミア様しかいないッ」
「その辺でよくてよ」
――!――
ボースを制したのはラミア。
岩陰から現れ騎士達が四つん這いになって作った人間階段を上り大岩の上に立つ。
ザザザッと大勢の騎士達も大岩の周りに並び立つ。
「酷いじゃないのブルーベル。
私を欺いて夜逃げだなんて」
「昨夜の晩餐での言動が嘘だと最初から気付いていた訳か」
「…ふっ、違うわ。
あの後早速子種を頂こうとお前の部屋を訪ね夜逃げが発覚したのよ。
そこからはイマーゴー王国総出でお前達を捜して――
国境越え出来る場所は全て人を配置してあるわ。
たまたま私が張っていた場所に来るなんて私達まぁまぁ運命ね?」
「イマーゴー王国総出?
伯爵家の問題に国が出て来るとはどういう訳だ?」
「…余計な事よ。
お前は喜んで種馬になればいいの。
お兄様が仰ってたわ。
私の体で喜ばない男はいないって」
「また『お兄様』か。
意に染まぬ私との結婚を受け入れさせる『お兄様』とは何者だ?」
「ッ‥もう!
ブサイクなくせに煩いわよ!」
ブルーベルと話しているとボロが出る。
別にもうバレてもいいと思うのだが。
兄の許し無しにバラすわけにはいかない…
ラミアはイブを見る。
メイドとしては無能と聞いていたが…
タウルスの応急処置をテキパキと済ませたところだ。
看護師でもない女は血を見たら倒れるのではなかったっけ?
不思議な女だと思う。
竜にも懐かれ竜馬にも乗れる女など…
男でもそうそういない。
昨夜晩餐前に対峙した時も。
いたって普通に接して来た。
恐れないのだ。
この私を。
本当の身分を隠していても
私には他者を恐れさせ委縮させるオーラがある。
私を恐れないのはお兄様だけ…
ッ、生意気ブルーベルもそうだっけ…
イブが視線に気付きラミアを見る。
睨むでもなく、
ただ普通に。
だが――
「‥ッ!?」
ゾクリ、
体の芯が震え。
ラミアは腹に力を入れ足を踏ん張る。
あの女は虫けら同然!
簡単に殺せる弱々な存在!
世界で2番目に強いこの私が
何を恐れる事があるというのか!?
息と心を落ち着かせて
ラミアはイブに向かって言い放つ。
誰にも文句を言われないと思ったら
ボース様がいないのですね?」
竜馬を走らせながら
イブが質問する。
「アレはクビにした。
粗暴な所はあっても忠義の者と思い込んでいたのに裏切り者…
ラミアの犬だった…
イブにも嫌な思いをさせて済まなかった。
注意すればするほど酷くなるので手をこまねいていたが…
サッサと排除すれば良かった」
不快気に吐き捨てるブルーベル。
晩餐会での態度でボースの主がラミアだと気付き
晩餐後食堂を出た所でクビを言い渡した。
母国から出る時忠誠を誓い付いて来てくれた忠義の者だと思えばこそ
イブへの失礼な態度を不快に思いつつも穏便に改めさせようと苦心していたというのに――
イブはホッとする。
理由も分からず憎しみの目を向けて来る大男なんて二度と会いたくない。
空が白み始め
この岩だらけの荒野を抜ければ国境!
という所で突如竜馬達が足を止める。
「‥どうした?」
「分かりません。
何か不穏な空気を感じている様で‥」
ブルーベルの問いにイブが竜馬の首を撫でながら答えている途中で
≪ヒュッ≫
「危ないッ!」
「ハッ‥
タウルス様ッ!?」
「タウルス!?」
タウルスの腕が矢傷を負って血に染まっている!
矢は左前方からイブに向かって飛んで来た。
イブの左側に居たタウルスが気付き身を挺してイブを庇ったのだ。
「タウルス様ッ」
「大丈夫、かすり傷です」
「私を庇って…
ありがとうございます」
「当然の事だ。
あなたは俺の‥
俺の主の大切な人だから」
タウルスの僅かな言い直しにハッとしたブルーベル、
イブの前…矢が飛んで来た方角に移動してイブをガードしながら
「私からも礼を言う。
ありがとう、タウルス」
タウルスに礼を言い。
矢を射った者に言い放つ。
「誰だ!?
物陰から女性に矢を放った卑怯者は!?
出て来い!
私が相手になろう!」
(えぇ!?)
イブは焦る。
前回のブルーベルなら鍛えていたし剣術も体術も見事であったが。
今回のブルーベルはぐうたらオジサン腹で――
タウルスも利き手側の腕に矢傷を負ってしまったし…
戦うなんて無帽でしかない!
「‥その女は死ぬべきなのです!」
そう言いながら岩陰から出て来たのは…
「ボース!貴様か!
イブを傷つける事、絶対に許さないぞ!」
怒りに染まったブルーベルの低い声にボースはワナワナと震え
「そんな女のどこが良いのです!?
地味ブスで無能で年寄りで!
あなた様に全く相応しくない!」
「ふざけるな!
どこをどう見ればそうなる!?
イブはただでさえ可愛いのに何をやっても可愛いし何才だって可愛いのに!」
(ひぃぃ‥ベル様?)
真面目な人間に真剣に主張されてイブは真っ赤になる。
「あなた様こそ目がおかしくなっているのですよ!
なぁ、タウルス!」
「裏切り者が気安く話し掛けるな!
イブを傷つけたらただじゃ置かない!」
「一体何なんだ…
ブスをヒロイン扱いして…
ヒロインに相応しいのは我が主、
美しく高貴なラミア様しかいないッ」
「その辺でよくてよ」
――!――
ボースを制したのはラミア。
岩陰から現れ騎士達が四つん這いになって作った人間階段を上り大岩の上に立つ。
ザザザッと大勢の騎士達も大岩の周りに並び立つ。
「酷いじゃないのブルーベル。
私を欺いて夜逃げだなんて」
「昨夜の晩餐での言動が嘘だと最初から気付いていた訳か」
「…ふっ、違うわ。
あの後早速子種を頂こうとお前の部屋を訪ね夜逃げが発覚したのよ。
そこからはイマーゴー王国総出でお前達を捜して――
国境越え出来る場所は全て人を配置してあるわ。
たまたま私が張っていた場所に来るなんて私達まぁまぁ運命ね?」
「イマーゴー王国総出?
伯爵家の問題に国が出て来るとはどういう訳だ?」
「…余計な事よ。
お前は喜んで種馬になればいいの。
お兄様が仰ってたわ。
私の体で喜ばない男はいないって」
「また『お兄様』か。
意に染まぬ私との結婚を受け入れさせる『お兄様』とは何者だ?」
「ッ‥もう!
ブサイクなくせに煩いわよ!」
ブルーベルと話しているとボロが出る。
別にもうバレてもいいと思うのだが。
兄の許し無しにバラすわけにはいかない…
ラミアはイブを見る。
メイドとしては無能と聞いていたが…
タウルスの応急処置をテキパキと済ませたところだ。
看護師でもない女は血を見たら倒れるのではなかったっけ?
不思議な女だと思う。
竜にも懐かれ竜馬にも乗れる女など…
男でもそうそういない。
昨夜晩餐前に対峙した時も。
いたって普通に接して来た。
恐れないのだ。
この私を。
本当の身分を隠していても
私には他者を恐れさせ委縮させるオーラがある。
私を恐れないのはお兄様だけ…
ッ、生意気ブルーベルもそうだっけ…
イブが視線に気付きラミアを見る。
睨むでもなく、
ただ普通に。
だが――
「‥ッ!?」
ゾクリ、
体の芯が震え。
ラミアは腹に力を入れ足を踏ん張る。
あの女は虫けら同然!
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世界で2番目に強いこの私が
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ラミアはイブに向かって言い放つ。
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