追放された令嬢は英雄となって帰還する

影茸

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捨てられた日 II

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 どうしようもない現実に、私は最早何の気力も湧かなくなって呆然と下を見つめていた。
 だが私の反応が無くなっても民衆達は落ち着くことはなく、身体のあちらこちらに石が当たるのがわかる。

  「ラスト、様?」

 「っ!」

 そして、そんな時だった。
 聞き慣れた声、それに私が思わず反応して顔を上げるとそこにいたのは1人の青年、いや、少年だった。
 その少年の名はルース。
 平民の中でも最も私に懐いてくれていて、私が弟のように思っていた存在。

 ーーー そして、今の私の姿を一番見て欲しく無かった人間だった。

 呆然としたルースの顔、それを見て私は今彼が何を考えているのか手を取るように悟ってしまう。
 ぼろぼろで、そして国の恥とまで言われるこんな私の姿ルースには絶対に知られたくは無かった。
 だから私は今まで自分がリースブルク家の無能であることを彼から隠してきた。
 
 しかし、そんなこと何の意味もなかったのだ。

 「………やらなきゃ良かった」

 ぽつりと私の口からそんな言葉が漏れる。
 それは私が絶対に言うまいと決意していたはずの言葉だった。

 だが、ルースが現れたことによってもう私の心はぼろぼろに砕かれていた。

 確かにあの時私が全て真実を言っていればルースと仲良くなるようなそんな未来はなかったかもしれない。
 それどころか、軽蔑の視線で見られていたかもしれない。

 だが、それでもこんな殴られ、石をぶつけられて醜悪になった顔で惨めにこんな所で丸まっている姿を見て幻滅されるぐらいなら……

 「あの時に、嫌われていた方がまだマシだったのに……」

 最初はあれだけ君のことだけを見ていると言っていた王子は、最終的にはリースブルク家の良いなりになり、民衆達は私を端金で裏切った。
 もう私は知っていたのだ。
 私は世界から嫌われているのだと。
 だからこんな目にあうのだと。
 今日は人生最悪の日。
 だけど、いや、だからこそ私は泣かないし弱音も吐かない!
 そう決めた。
 
 「ぅぇ、」

 その、はずなのに……
 
 「ひぐっ、ぅぇぇ、」

 いつの間にかもう私は疲れ果てていた。
 必死に心を強く持って、それでもいつか見返してやると心の中でそう決意していたはずのに、もう私のぼろぼろの心は最後の私の意地を張るだけの活力も残っていなくて、ぼろぼろと大粒の涙が目から溢れ出す。
 顔の傷に涙が沁みる、その痛みが本当に自分の惨めさを際立たせていて、私は何とか涙を止めようとする。
 だが、それでも涙が止まることはなかった。

 「おい!あいつ泣いてるぞ!」

 「いい気味じゃねぇか!」

 民衆から野次がとび、さらに私は惨めさを感じる。
 どうしようもなく惨めで、悔しくて、そして孤独で。
 だがこれが私のいつもの日常だった。
 だから、私はまだ耐えられ……

 ー 耐える意味はあるの?

 「っ、」

 必死に私は自分の心を強く持とうとする。
 ここで全てを諦めてしまったら、それはもう手遅れになりそうな気がして……
 だけど、もう限界だ。
 そのことを私は悟ってしまう。
 必死に頑張って、変えようとして変えられなかった。
 私は負けたのだ。
 だから………

 「黙れよ!」

 「っ!」

 ーーー だが、私が全てを諦めかけたその時に、そんな声が響いたのだ。
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