婚約破棄で追放されて、幸せな日々を過ごす。……え? 私が世界に一人しか居ない水の聖女? あ、今更泣きつかれても、知りませんけど?

向原 行人

文字の大きさ
141 / 143
第6章 太陽の聖女と星の聖女

第311話 水の聖女アニエス

しおりを挟む
 ビアンカさんとロレッタさんにも神水を飲んでもらい、三人で倒れた魔王の許へ。
 各国の人たちが攻撃を続けて魔王の動きを止めているものの、その魔王の表情には余裕すら感じられる。
 太陽の聖女の力で弱っても、死ぬ事はないと考えているのかもしれない。
 実際、このまま夜通し攻撃し続けたとして、一晩は動きを止める事が出来ても、二晩、三晩と続けていく事は難しいだろう。
 だから私が、魔王を……トリスタン王子を止める!

「ビアンカさん! 光をお願いします」

 私の言葉で、ロレッタさんとビアンカさんが目を閉じ、これまで以上に強い太陽の光に魔王が照らされる。
 この魔王が弱っている間に……次は私の番!

「水の神様……奇跡をお願いします!」

 光を嫌がりながらも動く事が出来ない魔王の口に神水を注ぐと……一瞬その身体が光り、闇色の靄のような物が出てきた。
 その靄は、太陽の光に照らされ、消滅していく。

「ここは……ど、どうして俺は剣を向けられているんだ!? 俺様は、フランセーズの第三王子トリスタン・フランセーズだぞっ!」
「ふむ。このアホ面は、どうやらアニエスの神水のおかげで、バカ王子から魔王の力が消えたようだな」
「えぇ。トリスタン王子の身体だったけど、明らかに異物があったみたいだし、神水で状態異常が治ったみたいね」

 トリスタン王子の身体を使って暴れていた魔王の力が消えた……と、イナリと共に安堵していると、何処かの国の代表の人が剣を振るう。

「痛ぇっ! な、何しやがるっ! 血が流れているじゃないかっ! 貴様、王族にこんな事をして許されると思うなよ!?」
「喚くな。かすり傷だ……どうやら、本当に魔王の力を失ったようだな。傷が塞がらない」
「魔王の力? ……そうだ! 俺は……ま、待ってくれ! これは何かの間違いだ! 俺はハメられたんだっ!」

 トリスタン王子が、何処かで聞いた事のあるようなセリフを叫ぶ。
 そういえば、ソフィアさんの家でも同じ様な事を言っていた気がする。
 あの時は、騎士団に連れて行かれ……フランセーズの国内だったからか、トリスタン王子は逃げ出せたか、逃がしてもらったみたいだけど、今回はそうはいかないだろう。
 今すぐ、この場で斬られても文句を言えない状況の中で、ビアンカさんが近付いていく。

「なるほど。トリスタン・フランセーズさん。貴方は魔王の力を使い、このイスパナは元より周辺国を危険に晒したが、それは自分の意志ではないと言うのですね」
「おぉ、そうなのだ! 話の分かるお嬢さんがいてくれて、本当に助かる」
「人である私には、真実はわかりません。ですので、翌朝……日の出と共に、天に住まわれる太陽の神様に貴方の罪を問いたいと思います」
「は!? 何を……言っているんだ?」
「貴方が本当に自分の意志ではなく、誰かの悪意によって多くの人を傷付けていたというのであれば、きっと太陽の神様は貴方を罰しないでしょう。ですが、そうでなければ……天罰が下り、貴方は神の許へ行く事になるでしょう」
「ま、待て! 待ってくれ! ……そうだ! アニエス! お前は、その女性と知り合いなのだろう? 何とか言ってやってくれ! 俺は……俺は、フランセーズの第三王子なんだ! ド田舎の国で、訳の分からない裁かれ方をするなど許される訳がない!」

 え? トリスタン王子はこの期に及んで私に泣きつくの!? 今まで、何度も酷い事をしてきたのに!?

「アニエス! 思い返せば、俺が間違っていたんだ! アニエスをパーティから追放した事。あれから全てがおかしくなり始めた。アニエス……俺を許してくれ! そして、助けてくれっ! アニエスっ!」
「今更泣きつかれても、知りませんけど?」
「あ、アニエスっ! 頼む! 話を……話を聞いてくれっ! アニエスーっ!」

 魔王の力を失ったトリスタン王子が、各国から来ている代表の人たちに拘束され、連れて行かれる。
 本当っに、調子が良過ぎでしょ。
しおりを挟む
感想 538

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。