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第3章
約束の日
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馬車に白金の光が満ち、見事な転移でシルヴィが戻ってきた。
晴れやかな顔だ。殿下に長の印を贈って、気持ちの整理が付いたようだ。
「お帰り、シルヴィ」
彼女は輝くような笑顔を向けてくれた。
「ただいま、セディ」
僕たちは今や夫婦だ。同居はできていないけれど。
彼女と僕の双方の両親が、「シルヴィが成人してから」と条件を出してきたのだ。
だから、この会話はまだ日常のものではない。
後、242日も待たなければいけない。
けれども、今は時間を気にせずシルヴィといられるこの旅を存分に楽しもう。
「セディ、お誕生日おめでとう」
僕の好きな笑顔を見せて、澄んだ愛らしい声でお祝いを言ってくれる。
悶えそうな気持を抑えつけて、僕は返事をした。
「ありがとう」
何とか誕生日を二人で祝う約束を守ることが出来そうだ。
シルヴィの誕生日の約束は完全には果たすことができなかった。彼女を一人で泣かせてしまった。
何としても埋め合わせをしたい。
僕は思いに駆られて、即座に最初の埋め合わせをすることにした。
空間にしまっていたものを取り出す。
侍従長に勧められた赤いバラの花束だ。
彼女が驚きに目を瞠る。
「シルヴィ、印を交わした僕たちはもう夫婦だ。けれども、改めて申し込みたい」
彼女の瞳から綺麗な涙が零れた。
「シルヴィ、僕はこの魂が尽きるまで、君を幸せにするために生きる」
そう、何より君の笑顔を守りたい。
「僕と共に、僕の隣で、生涯を過ごしてくれますか」
シルヴィは涙をこぼしたまま、僕に抱き着いてくれた。
彼女の温もりと、僕の中に流れる彼女の魔力の高ぶりを感じた。言葉ではないが、確かな返事だ。
「セディ、一生、セディの隣に、セディの中に、いさせて下さい」
彼女は嗚咽を堪えながら、言葉もくれた。
僕は堪らず、花束を置いて、両手で彼女の頬を包み込んだ。
彼女の澄んだ薄い青の瞳が、涙に濡れている。
「この半年、僕が弱かったために、辛い思いをたくさんさせたね」
彼女は何度も首を横に振る。
「私が…、無謀なことを…」
僕は彼女の唇を指で抑えた。
「辛い思いをさせて、ごめん。やり直したいんだ。シルヴィが卒業したときから」
僕は彼女の額に口づけた。
「卒業おめでとう。素晴らしい魔法使いになったんだね」
彼女の目から幾筋も涙が流れた。僕は彼女の涙に口づけた。
そう、あの時、称えるべきだった。冷静に振り返れば、あの試合の時のシルヴィの技は見事だった。あんな技はハリーぐらいしかできないだろう。
本当に目が曇っていた。
そして、こう告げるべきだった。
『お帰り、シルヴィ。待っていたよ』
「セディ、ただいま。もう離れない…!」
彼女は僕にしがみついた。僕の中の彼女の魔力は、熱いぐらいに高まっていた。
背中をそっと撫でる。
「ずっと顔が見たかったの」
彼女はしがみつく力を強めながら、僕の胸の中であの時言えなかった5年間の思いを口にした。
頷きながら震える背中を撫でる。
「僕も見たかったよ」
彼女の思いはまだ続いた。
「ずっと声が聞きたかった」
僕は背中を摩りながら、頭に、額に、口づけを落とした。耳元に思いを囁いた。
「僕も聞きたかった」
彼女の魔力が息を呑むほど激しく駆け巡った。
「傍にいたかったの…!」
僕は貪るように彼女に口づけた。
魔力が彼女に駆け巡るのを感じた。彼女と僕の魔力は熱く溶けるようにお互いの身体を駆け巡る。
もう、離さない――
彼女を抱え込み、何度も口づけた。
彼女も僕の首に腕を回し、口づけを返す。
何度もお互いの魔力が溶けあい、一つになった。
やがてシルヴィの身体から力が抜け、ゆっくりと僕にもたれかかった。
彼女の魔力も穏やかなものなった。
僕は彼女の髪を撫でながら、まだ昂っている自分の魔力を抑え込んだ。
「ウォっホン」
下手な咳払いが耳に入った。
視線を向けると、首まで赤く染めたチャーリーと、目をキラキラさせて手を取り合っているシャーリーとブリジットがいた。
やれやれ、彼らが同席していることをすっかり忘れていた。
僕は彼らに微笑んだ。
「半年、いや5年分だ。大目に見ておくれ」
チャーリーの溜息と、シャーリーとブリジットの強い頷きが同時に起こった。
僕は笑い出した。
やがて、馬車の中は笑いに包まれていた。
第3章 完
「恋の締め切りには注意しましょう」完結
晴れやかな顔だ。殿下に長の印を贈って、気持ちの整理が付いたようだ。
「お帰り、シルヴィ」
彼女は輝くような笑顔を向けてくれた。
「ただいま、セディ」
僕たちは今や夫婦だ。同居はできていないけれど。
彼女と僕の双方の両親が、「シルヴィが成人してから」と条件を出してきたのだ。
だから、この会話はまだ日常のものではない。
後、242日も待たなければいけない。
けれども、今は時間を気にせずシルヴィといられるこの旅を存分に楽しもう。
「セディ、お誕生日おめでとう」
僕の好きな笑顔を見せて、澄んだ愛らしい声でお祝いを言ってくれる。
悶えそうな気持を抑えつけて、僕は返事をした。
「ありがとう」
何とか誕生日を二人で祝う約束を守ることが出来そうだ。
シルヴィの誕生日の約束は完全には果たすことができなかった。彼女を一人で泣かせてしまった。
何としても埋め合わせをしたい。
僕は思いに駆られて、即座に最初の埋め合わせをすることにした。
空間にしまっていたものを取り出す。
侍従長に勧められた赤いバラの花束だ。
彼女が驚きに目を瞠る。
「シルヴィ、印を交わした僕たちはもう夫婦だ。けれども、改めて申し込みたい」
彼女の瞳から綺麗な涙が零れた。
「シルヴィ、僕はこの魂が尽きるまで、君を幸せにするために生きる」
そう、何より君の笑顔を守りたい。
「僕と共に、僕の隣で、生涯を過ごしてくれますか」
シルヴィは涙をこぼしたまま、僕に抱き着いてくれた。
彼女の温もりと、僕の中に流れる彼女の魔力の高ぶりを感じた。言葉ではないが、確かな返事だ。
「セディ、一生、セディの隣に、セディの中に、いさせて下さい」
彼女は嗚咽を堪えながら、言葉もくれた。
僕は堪らず、花束を置いて、両手で彼女の頬を包み込んだ。
彼女の澄んだ薄い青の瞳が、涙に濡れている。
「この半年、僕が弱かったために、辛い思いをたくさんさせたね」
彼女は何度も首を横に振る。
「私が…、無謀なことを…」
僕は彼女の唇を指で抑えた。
「辛い思いをさせて、ごめん。やり直したいんだ。シルヴィが卒業したときから」
僕は彼女の額に口づけた。
「卒業おめでとう。素晴らしい魔法使いになったんだね」
彼女の目から幾筋も涙が流れた。僕は彼女の涙に口づけた。
そう、あの時、称えるべきだった。冷静に振り返れば、あの試合の時のシルヴィの技は見事だった。あんな技はハリーぐらいしかできないだろう。
本当に目が曇っていた。
そして、こう告げるべきだった。
『お帰り、シルヴィ。待っていたよ』
「セディ、ただいま。もう離れない…!」
彼女は僕にしがみついた。僕の中の彼女の魔力は、熱いぐらいに高まっていた。
背中をそっと撫でる。
「ずっと顔が見たかったの」
彼女はしがみつく力を強めながら、僕の胸の中であの時言えなかった5年間の思いを口にした。
頷きながら震える背中を撫でる。
「僕も見たかったよ」
彼女の思いはまだ続いた。
「ずっと声が聞きたかった」
僕は背中を摩りながら、頭に、額に、口づけを落とした。耳元に思いを囁いた。
「僕も聞きたかった」
彼女の魔力が息を呑むほど激しく駆け巡った。
「傍にいたかったの…!」
僕は貪るように彼女に口づけた。
魔力が彼女に駆け巡るのを感じた。彼女と僕の魔力は熱く溶けるようにお互いの身体を駆け巡る。
もう、離さない――
彼女を抱え込み、何度も口づけた。
彼女も僕の首に腕を回し、口づけを返す。
何度もお互いの魔力が溶けあい、一つになった。
やがてシルヴィの身体から力が抜け、ゆっくりと僕にもたれかかった。
彼女の魔力も穏やかなものなった。
僕は彼女の髪を撫でながら、まだ昂っている自分の魔力を抑え込んだ。
「ウォっホン」
下手な咳払いが耳に入った。
視線を向けると、首まで赤く染めたチャーリーと、目をキラキラさせて手を取り合っているシャーリーとブリジットがいた。
やれやれ、彼らが同席していることをすっかり忘れていた。
僕は彼らに微笑んだ。
「半年、いや5年分だ。大目に見ておくれ」
チャーリーの溜息と、シャーリーとブリジットの強い頷きが同時に起こった。
僕は笑い出した。
やがて、馬車の中は笑いに包まれていた。
第3章 完
「恋の締め切りには注意しましょう」完結
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