処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka

文字の大きさ
14 / 31

第14章「王弟の檻」

しおりを挟む
深夜。
セリーヌとレオンは、王宮の東門近くにいた。
黒い服。顔を隠すマント。足音を殺して歩く。
月明かりが石畳を照らしている。
「ここです」
レオンが小声で言った。
壁の一部、蔦に覆われた場所。
レオンは蔦をかき分け、隠し扉を見つけた。
ヴィクトルの地図の通りだ。
扉を開ける。軋む音。
二人は息を止めた。
周囲に人の気配はない。
中に入る。
狭い階段。下へ続いている。
松明を灯し、降りていく。
地下通路。
天井は低く、壁は湿っている。カビの匂い。
足元に水が溜まっている場所もある。
慎重に進む。
地図を確認しながら。
左に曲がる。さらに直進。右に曲がる。
やがて、階段が見えた。
上へ続いている。
「この先が、ロベルト殿下の私室の近くです」
レオンが囁いた。
セリーヌは頷いた。
階段を登る。
扉がある。
耳を当てて、向こう側の音を聞く。
何も聞こえない。
扉を少しだけ開ける。
廊下。
松明が揺れている。
人の気配はない。
二人は廊下に出た。
ロベルトの私室は、この廊下の奥。
足音を殺して進む。
心臓が激しく打っている。
もし見つかれば、言い訳はできない。
侵入罪。反逆罪。
処刑される。
だが、引き返せない。
私室の扉が見えた。
レオンが扉を調べる。
鍵がかかっている。
だが、レオンは懐から針金を取り出した。
「開けられます」
小声で言い、針金を鍵穴に差し込む。
カチャカチャと音がする。
セリーヌは周囲を警戒した。
廊下の向こうから、足音。
「誰か来ます」
レオンは手を早めた。
足音が近づく。
警備兵だ。
カチャリ。
鍵が開いた。
二人は急いで部屋に入り、扉を閉めた。
廊下を警備兵が通り過ぎる音。
二人は息を殺して待った。
足音が遠ざかる。
セリーヌは息を吐いた。
「危なかった」
部屋を見回す。
広い私室。豪華な家具。壁には絵画。机には書類が積まれている。
奥には寝室への扉。
「契約書を探します」
セリーヌは机に近づいた。
引き出しを開ける。
書類、手紙、記録。
一つ一つ確認する。
税収の報告。領地の地図。貴族への手紙。
契約書はない。
「こちらにもありません」
レオンが本棚を調べていた。
セリーヌは部屋の隅を見た。
大きな箱。鍵がかかっている。
「レオン、これを」
レオンが針金で鍵を開ける。
箱の中には、さらに小さな金庫。
頑丈な鍵。
「これは時間がかかります」
レオンが額の汗を拭った。
セリーヌは周囲を見た。
鍵はどこかにあるはずだ。
机の引き出し。本棚の裏。絵画の裏。
絵画の裏に、小さな袋があった。
中には鍵。
「これです」
金庫に鍵を差し込む。
開いた。
中には、羊皮紙の束。
セリーヌは一枚ずつ確認した。
貴族との密約書。金の貸付記録。領地の売買契約。
そして、一枚の黒い羊皮紙。
血で書かれたような赤い文字。
「魔術契約書。雇い主ロベルト、魔術師ザイン。契約内容:王女セリーヌの排除。方法:呪術による病死または事故死。期限:夏の終わりまで。報酬:金貨五百枚。条件:契約は血の誓約により成立し、破棄は契約書の焼却または雇い主の死によってのみ可能」
セリーヌは息を呑んだ。
証拠だ。
ロベルトが、ザインを雇ってセリーヌを殺そうとしている証拠。
「これを持って行きます」
セリーヌは契約書を懐にしまった。
他の書類も確認する。
東国との密約書もあった。
「東国リオネール侵攻支援密約。東国はロベルトの王位簒奪を支援する。その代償として、ロベルトは即位後、リオネールの東部領土を東国に割譲する」
裏切りだ。
国を売る契約。
セリーヌは怒りで震えた。
この男は、王位のために国を売った。
民を、領土を、全てを。
「これも持って行きます」
全ての証拠を集める。
金庫を閉め、箱を元に戻す。
部屋を元通りにする。
痕跡を残さない。
「行きましょう」
二人は扉に近づいた。
その時、廊下から声が聞こえた。
「ロベルト殿下、お戻りですか」
警備兵の声。
そして、返答。
「ああ、少し忘れ物をした」
ロベルトの声。
セリーヌとレオンは凍りついた。
ロベルトが戻ってくる。
今、この部屋に。
「どうしますか」
レオンが囁いた。
「寝室に隠れます」
二人は急いで寝室の扉を開け、中に入った。
扉を少しだけ開けたままにして、様子を見る。
私室の扉が開く音。
ロベルトが入ってきた。
松明を持ち、机に近づく。
「どこに置いたか」
独り言を言いながら、引き出しを開ける。
セリーヌは息を殺した。
金庫を開けたら、気づかれる。
書類が減っていることに気づかれる。
だが、ロベルトは机の上の書類を手に取っただけだった。
「あった」
彼は書類を懐にしまい、部屋を出た。
扉が閉まる。
足音が遠ざかる。
セリーヌとレオンは、しばらく動けなかった。
心臓が口から飛び出しそうだった。
「もう少し待ちましょう」
数分後、二人は寝室を出た。
私室の扉を開け、廊下を確認する。
誰もいない。
急いで来た道を戻る。
地下通路の扉。階段を降りる。通路を走る。
出口の扉。
外に出た。
夜空。
星が輝いている。
セリーヌは大きく息を吸った。
生きている。
成功した。
証拠を手に入れた。
「殿下、大丈夫ですか」
レオンが心配そうに聞いた。
「ええ、大丈夫」
だが、手が震えていた。
恐怖。緊張。そして、安堵。
全てが混ざり合っている。
「戻りましょう」
二人は王宮の裏門から入り、自室へ戻った。
セリーヌは扉を閉め、鍵をかけた。
そして、ベッドに倒れ込んだ。
疲れた。
だが、やり遂げた。
懐から契約書を取り出す。
魔術契約書。東国との密約書。貴族への買収記録。
全てが、ここにある。
ロベルトの罪を証明する証拠。
セリーヌはそれらを引き出しにしまい、鍵をかけた。
窓の外、夜が明け始めていた。
朝が来る。
新しい日。
セリーヌは勝利の一歩を踏み出した。
証拠は揃った。
次は、それを使う時だ。
法廷で。
評議会で。
そして、全ての人の前で。
ロベルトの罪を暴く。
それが、セリーヌの復讐だ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

【完結】王都に咲く黒薔薇、断罪は静かに舞う

なみゆき
ファンタジー
名門薬草家の伯爵令嬢エリスは、姉の陰謀により冤罪で断罪され、地獄の収容所へ送られる。 火灼の刑に耐えながらも薬草の知識で生き延び、誇りを失わず再誕を果たす。 3年後、整形と記録抹消を経て“外交商人ロゼ”として王都に舞い戻り、裏では「黒薔薇商会」を設立。 かつて自分を陥れた者たち ――元婚約者、姉、王族、貴族――に、静かに、美しく、冷酷な裁きを下していく。 これは、冤罪や迫害により追い詰められた弱者を守り、誇り高く王都を裂く断罪の物語。 【本編は完結していますが、番外編を投稿していきます(>ω<)】 *お読みくださりありがとうございます。 ブクマや評価くださった方、大変励みになります。ありがとうございますm(_ _)m

義妹がいつの間にか婚約者に躾けられていた件について抗議させてください

Ruhuna
ファンタジー
義妹の印象 ・我儘 ・自己中心 ・人のものを盗る ・楽観的 ・・・・だったはず。 気付いたら義妹は人が変わったように大人しくなっていました。 義妹のことに関して抗議したいことがあります。義妹の婚約者殿。 *大公殿下に結婚したら実は姉が私を呪っていたらしい、の最後に登場したアマリリスのお話になります。 この作品だけでも楽しめますが、ぜひ前作もお読みいただければ嬉しいです。 4/22 完結予定 〜attention〜 *誤字脱字は気をつけておりますが、見落としがある場合もあります。どうか寛大なお心でお読み下さい *話の矛盾点など多々あると思います。ゆるふわ設定ですのでご了承ください

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

政略結婚の意味、理解してますか。

章槻雅希
ファンタジー
エスタファドル伯爵家の令嬢マグノリアは王命でオルガサン侯爵家嫡男ペルデルと結婚する。ダメな貴族の見本のようなオルガサン侯爵家立て直しが表向きの理由である。しかし、命を下した国王の狙いはオルガサン家の取り潰しだった。 マグノリアは仄かな恋心を封印し、政略結婚をする。裏のある結婚生活に楽しみを見出しながら。 全21話完結・予約投稿済み。 『小説家になろう』(以下、敬称略)・『アルファポリス』・『pixiv』・自サイトに重複投稿。

【完結済】悪役令嬢の妹様

ファンタジー
 星守 真珠深(ほしもり ますみ)は社畜お局様街道をひた走る日本人女性。  そんな彼女が現在嵌っているのが『マジカルナイト・ミラクルドリーム』というベタな乙女ゲームに悪役令嬢として登場するアイシア・フォン・ラステリノーア公爵令嬢。  ぶっちゃけて言うと、ヒロイン、攻略対象共にどちらかと言えば嫌悪感しかない。しかし、何とかアイシアの断罪回避ルートはないものかと、探しに探してとうとう全ルート開き終えたのだが、全ては無駄な努力に終わってしまった。  やり場のない気持ちを抱え、気分転換にコンビニに行こうとしたら、気づけば悪楽令嬢アイシアの妹として転生していた。  ―――アイシアお姉様は私が守る!  最推し悪役令嬢、アイシアお姉様の断罪回避転生ライフを今ここに開始する! ※長編版をご希望下さり、本当にありがとうございます<(_ _)>  既に書き終えた物な為、激しく拙いですが特に手直し他はしていません。 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜

神伊 咲児
ファンタジー
主人公、イルエマ・ジミィーナは16歳。 聖女ギルド【女神の光輝】に属している聖女だった。 イルエマは眼鏡をかけており、黒髪の冴えない見た目。 いわゆる地味子だ。 彼女の能力も地味だった。 使える魔法といえば、聖女なら誰でも使えるものばかり。回復と素材進化と解呪魔法の3つだけ。 唯一のユニークスキルは、ペンが無くても文字を書ける光魔字。 そんな能力も地味な彼女は、ギルド内では裏方作業の雑務をしていた。 ある日、ギルドマスターのキアーラより、地味だからという理由で解雇される。 しかし、彼女は目立たない実力者だった。 素材進化の魔法は独自で改良してパワーアップしており、通常の3倍の威力。 司祭でも見落とすような小さな呪いも見つけてしまう鋭い感覚。 難しい相談でも難なくこなす知識と教養。 全てにおいてハイクオリティ。最強の聖女だったのだ。 彼女は新しいギルドに参加して順風満帆。 彼女をクビにした聖女ギルドは落ちぶれていく。 地味な聖女が大活躍! 痛快ファンタジーストーリー。 全部で5万字。 カクヨムにも投稿しておりますが、アルファポリス用にタイトルも含めて改稿いたしました。 HOTランキング女性向け1位。 日間ファンタジーランキング1位。 日間完結ランキング1位。 応援してくれた、みなさんのおかげです。 ありがとうございます。とても嬉しいです!

悪役令嬢に仕立て上げたいなら、ご注意を。

潮海璃月
ファンタジー
幼くして辺境伯の地位を継いだレナータは、女性であるがゆえに舐められがちであった。そんな折、社交場で伯爵令嬢にいわれのない罪を着せられてしまう。そんな彼女に隣国皇子カールハインツが手を差し伸べた──かと思いきや、ほとんど初対面で婚姻を申し込み、暇さえあれば口説き、しかもやたらレナータのことを知っている。怪しいほど親切なカールハインツと共に、レナータは事態の収拾方法を模索し、やがて伯爵一家への復讐を決意する。

処理中です...