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第57話:ジェイデン殿下に会いました
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「キャリーヌ…会いたかったよ…僕に会いに、王宮に来てくれたのだね…」
ん?この声は…
声の方を振り向こうとしたと瞬間、サミュエル様が私を抱き寄せ、そのまま背に隠したのだ。
「兄上、これ以上キャリーヌに近づかないで下さい。キャリーヌは、近々僕と婚約を結ぶことが決まっていますから」
「サミュエル!貴様、どこまでも僕からキャリーヌを奪うつもりなんだね。王宮にわざわざキャリーヌが足を運んだという事は、僕に会いに来てくれたに決まっているだろう。僕たちは、愛し合っていたのだから。あの日、キャリーヌは僕を選んだんだぞ!」
やっぱりこの声は、ジェイデン殿下だわ。どうして彼がここに…
あの日の記憶が鮮明に蘇る。チラリとサミュエル様の後ろから覗くと、ジェイデン殿下の目が合った。
「キャリーヌ、あの日の僕はどうかしていたんだ。ラミア殿下に騙されていたんだよ。僕が愛しているのは、キャリーヌただ1人なんだ。愛しているのは、君だけだから。可哀そうに、無理やりサミュエルの婚約者にされたのだね。僕のせいで、本当にごめんね。でも、もう大丈夫よだ。僕が君を守るから」
僕が君を守る?この人、何を言っているの?ジェイデン殿下に関しては、恐怖しかない。でも、それ以上に怒りがこみ上げて来た。
すっとミリアム様から貰ったブローチを握った。大丈夫、私は1人ではない。サミュエル様もお父様もいる。それに、ミリアム様も…
深呼吸をすると、すっとサミュエル様の前に立ち、まっすぐジェイデン殿下を見つめた。
「お久しぶりですわ、ジェイデン殿下。本日はサミュエル様の婚約者になるべく、改めて陛下と王妃殿下にご挨拶をと思い、参りましたの。サミュエル様は、私の気持ちを最優先に考えて下さり、わざわざカリアン王国まで足を運んでくださいました。そんな彼を、今度は私が支えたい、そう考えております。どうかジェイデン殿下も、素敵な令嬢を見つけて、幸せになってくださいね。それでは、私たちはこれで失礼いたします」
ジェイデン殿下にカーテシーを決め、サミュエル様の手を取り、王宮の中に入っていく。
「待って、キャリーヌ。まだ君にした事を怒っているのだね。そうだよね、急に側妃になれだなんて、嫌だったよね。でも、ラミア殿下の手前、そう言うしかなかったんだよ。ほら、ラミア殿下は大国、ディステル王国の王女だろ?公爵令嬢の君なら、そのくらいわかるだろう?それなのに皆、僕を悪者にして…」
「そうですね、ですから私はあの日、あなた様との婚約解消を受け入れました。婚約を解消した時点で、私たちは他人ですわ。その後私が誰と婚約しようが、ジェイデン殿下には関係ないかと。それから、私は今、サミュエル様を愛しております。彼と共に、今後未来を歩んでいきたいのです。どうかもう、私には関わらないで下さい。ただ…」
真っすぐジェイデン殿下を見つめた。
「あの日私は、地獄を見ました。婚約者に裏切られ、薄暗く冷たい地下牢に入れられ。食事も与えられず、飢えに苦しみ、このまま死ぬのか…そう絶望しました。あの日、ジェイデン殿下を深く恨みました。でも…あの事件のお陰で私はカリアン王国に行く事になり、かけがえのない友人を手に入れました。この国では出来ないような経験も、沢山出来ました。そして何よりも、愛するサミュエル様と、こうして帰国する事も出来ました。ジェイデン殿下、あの日私と婚約を解消し、地下牢に閉じ込めて下さりありがとうございました。それでは、失礼します」
満面の笑みでそう伝えると、再びクルリと王宮の方を向いた。そしてサミュエル様の手を取り、再び歩き出す。
もう私は、いつまでも誰かに守られているばかりの公爵令嬢ではない。そうよ、私はもっともっと、強くならないといけない。こんなところで、ジェイデン殿下に怯えている訳にはいかないよ。
胸を張って、生きていきたい。ミリアム様と再会した時、笑って話が出来る様に!
それにしてもジェイデン殿下、まだあのような愚かな事をおっしゃっていただなんて…もしかして、皆私とジェイデン殿下を会わせないようにするために、王宮に来させない様にしていたのかしら?
なんだかそんな気がする。でも、私はもう、ジェイデン殿下に怯えたりなんてしないわ。
サミュエル様の手を、ギュッと握る。もう二度と、この手を離したりなんてしない。絶対に2人で、幸せになって見せる。
「キャリーヌ…随分と強くなったね。いや、君は元々強いか…ごめんね、キャリーヌと兄上を合わせたくなくて…兄上は未だに、キャリーヌに執着していてね。キャリーヌが戻ってきたら、キャリーヌを説得して、再び自分の婚約者になってもらうと言っていて…」
ポツリとサミュエル様が呟いたのだ。
「あのような酷い事をしておいて、どうして私が再び、ジェイデン殿下の婚約者になると考えるのでしょうか?そんな事はありませんので、ご安心ください。ただ、サミュエル様とお父様が、私の事を考えて王宮に来させない様にしていたことは、分かりましたわ。ですが私は大丈夫ですので」
そう、いつまでもジェイデン殿下に怯えている訳にはいかない。それにさっきジェイデン殿下と対面して、意外と平気だとわかったし。
「キャリーヌは強いね。ただ、兄上がキャリーヌに何をして来るか分からないから、王宮内では1人になる事は控えて欲しい。護衛はもちろん、極力僕も傍にいる様にするよ」
「分かりましたわ。サミュエル様がそうおっしゃるなら、あなた様の言う通りにします」
「よかった。せっかくキャリーヌが王宮に来てくれたのだし、今日は僕が帰国したという事で、貴族会議が開かれることになっているのだよ。せっかくだから、キャリーヌも顔を出して欲しいのだけれど、いいかな?」
「ええ、もちろんですわ。2人で挨拶をした方が、貴族たちも安心するでしょうし。ぜひ参加させていただきます」
その後私も一緒に、貴族会議に参加させてもらった。私の姿を見た陛下と王妃殿下には、何度も謝罪された。他の貴族たちも、私の帰りを非常に歓迎してくださっていた。
皆が私を歓迎してくれている、きっと大丈夫よね。
※次回、ジェイデン視点です。
よろしくお願いします。
ん?この声は…
声の方を振り向こうとしたと瞬間、サミュエル様が私を抱き寄せ、そのまま背に隠したのだ。
「兄上、これ以上キャリーヌに近づかないで下さい。キャリーヌは、近々僕と婚約を結ぶことが決まっていますから」
「サミュエル!貴様、どこまでも僕からキャリーヌを奪うつもりなんだね。王宮にわざわざキャリーヌが足を運んだという事は、僕に会いに来てくれたに決まっているだろう。僕たちは、愛し合っていたのだから。あの日、キャリーヌは僕を選んだんだぞ!」
やっぱりこの声は、ジェイデン殿下だわ。どうして彼がここに…
あの日の記憶が鮮明に蘇る。チラリとサミュエル様の後ろから覗くと、ジェイデン殿下の目が合った。
「キャリーヌ、あの日の僕はどうかしていたんだ。ラミア殿下に騙されていたんだよ。僕が愛しているのは、キャリーヌただ1人なんだ。愛しているのは、君だけだから。可哀そうに、無理やりサミュエルの婚約者にされたのだね。僕のせいで、本当にごめんね。でも、もう大丈夫よだ。僕が君を守るから」
僕が君を守る?この人、何を言っているの?ジェイデン殿下に関しては、恐怖しかない。でも、それ以上に怒りがこみ上げて来た。
すっとミリアム様から貰ったブローチを握った。大丈夫、私は1人ではない。サミュエル様もお父様もいる。それに、ミリアム様も…
深呼吸をすると、すっとサミュエル様の前に立ち、まっすぐジェイデン殿下を見つめた。
「お久しぶりですわ、ジェイデン殿下。本日はサミュエル様の婚約者になるべく、改めて陛下と王妃殿下にご挨拶をと思い、参りましたの。サミュエル様は、私の気持ちを最優先に考えて下さり、わざわざカリアン王国まで足を運んでくださいました。そんな彼を、今度は私が支えたい、そう考えております。どうかジェイデン殿下も、素敵な令嬢を見つけて、幸せになってくださいね。それでは、私たちはこれで失礼いたします」
ジェイデン殿下にカーテシーを決め、サミュエル様の手を取り、王宮の中に入っていく。
「待って、キャリーヌ。まだ君にした事を怒っているのだね。そうだよね、急に側妃になれだなんて、嫌だったよね。でも、ラミア殿下の手前、そう言うしかなかったんだよ。ほら、ラミア殿下は大国、ディステル王国の王女だろ?公爵令嬢の君なら、そのくらいわかるだろう?それなのに皆、僕を悪者にして…」
「そうですね、ですから私はあの日、あなた様との婚約解消を受け入れました。婚約を解消した時点で、私たちは他人ですわ。その後私が誰と婚約しようが、ジェイデン殿下には関係ないかと。それから、私は今、サミュエル様を愛しております。彼と共に、今後未来を歩んでいきたいのです。どうかもう、私には関わらないで下さい。ただ…」
真っすぐジェイデン殿下を見つめた。
「あの日私は、地獄を見ました。婚約者に裏切られ、薄暗く冷たい地下牢に入れられ。食事も与えられず、飢えに苦しみ、このまま死ぬのか…そう絶望しました。あの日、ジェイデン殿下を深く恨みました。でも…あの事件のお陰で私はカリアン王国に行く事になり、かけがえのない友人を手に入れました。この国では出来ないような経験も、沢山出来ました。そして何よりも、愛するサミュエル様と、こうして帰国する事も出来ました。ジェイデン殿下、あの日私と婚約を解消し、地下牢に閉じ込めて下さりありがとうございました。それでは、失礼します」
満面の笑みでそう伝えると、再びクルリと王宮の方を向いた。そしてサミュエル様の手を取り、再び歩き出す。
もう私は、いつまでも誰かに守られているばかりの公爵令嬢ではない。そうよ、私はもっともっと、強くならないといけない。こんなところで、ジェイデン殿下に怯えている訳にはいかないよ。
胸を張って、生きていきたい。ミリアム様と再会した時、笑って話が出来る様に!
それにしてもジェイデン殿下、まだあのような愚かな事をおっしゃっていただなんて…もしかして、皆私とジェイデン殿下を会わせないようにするために、王宮に来させない様にしていたのかしら?
なんだかそんな気がする。でも、私はもう、ジェイデン殿下に怯えたりなんてしないわ。
サミュエル様の手を、ギュッと握る。もう二度と、この手を離したりなんてしない。絶対に2人で、幸せになって見せる。
「キャリーヌ…随分と強くなったね。いや、君は元々強いか…ごめんね、キャリーヌと兄上を合わせたくなくて…兄上は未だに、キャリーヌに執着していてね。キャリーヌが戻ってきたら、キャリーヌを説得して、再び自分の婚約者になってもらうと言っていて…」
ポツリとサミュエル様が呟いたのだ。
「あのような酷い事をしておいて、どうして私が再び、ジェイデン殿下の婚約者になると考えるのでしょうか?そんな事はありませんので、ご安心ください。ただ、サミュエル様とお父様が、私の事を考えて王宮に来させない様にしていたことは、分かりましたわ。ですが私は大丈夫ですので」
そう、いつまでもジェイデン殿下に怯えている訳にはいかない。それにさっきジェイデン殿下と対面して、意外と平気だとわかったし。
「キャリーヌは強いね。ただ、兄上がキャリーヌに何をして来るか分からないから、王宮内では1人になる事は控えて欲しい。護衛はもちろん、極力僕も傍にいる様にするよ」
「分かりましたわ。サミュエル様がそうおっしゃるなら、あなた様の言う通りにします」
「よかった。せっかくキャリーヌが王宮に来てくれたのだし、今日は僕が帰国したという事で、貴族会議が開かれることになっているのだよ。せっかくだから、キャリーヌも顔を出して欲しいのだけれど、いいかな?」
「ええ、もちろんですわ。2人で挨拶をした方が、貴族たちも安心するでしょうし。ぜひ参加させていただきます」
その後私も一緒に、貴族会議に参加させてもらった。私の姿を見た陛下と王妃殿下には、何度も謝罪された。他の貴族たちも、私の帰りを非常に歓迎してくださっていた。
皆が私を歓迎してくれている、きっと大丈夫よね。
※次回、ジェイデン視点です。
よろしくお願いします。
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