56 / 73
第56話:久しぶりに王宮に向かいます
しおりを挟む
「それじゃあキャリーヌ、今日はゆっくり休んでね。また明日、折を見て公爵家に顔を出すから」
「サミュエル様、送って下さり、ありがとうございました。足を運んでいただかなくても、私が王宮に出向きますわ。陛下や王妃殿下にも、ご挨拶をしたいですし」
「いや、王宮にはまだ来なくてもいいよ。とにかくキャリーヌは疲れているだろう。ゆっくりお休み」
私のおでこに口づけをして、そのまま馬車に乗り込んでいったサミュエル様。もう、両親もいるのに、口づけをするだなんて、恥ずかしい。
でも、まあいいか。
サミュエル様には、今まで散々辛い思いをさせてしまったものね。これからは、目いっぱいサミュエル様の思う様にさせてあげよう。
ただ、さすがに今日は疲れた。
自室に戻り湯あみを済ますと、ベッドに入った。やっぱり自分のベッドが一番落ち着くわ。この日は、あっという間に眠りについてしまったのだった。
翌朝
「クラミー、おはよう。今日は登城するから、すぐにドレスに着替えさせて。サミュエル様の瞳の色に合わせて、青いドレスにしましょう。どれがいいかしら?これなんていいわね。これにするわ」
「お嬢様、今日はお屋敷でゆっくり過ごす予定では…」
「何を言っているの?私はサミュエル様の、婚約者になるのですもの。のんびりお屋敷で過ごしている訳にはいかないわ。散々サミュエル様には迷惑を掛けたのですもの。早速登城して、陛下と王妃殿下に挨拶をしないと。それから、次期王妃になるための勉強も始めないとね。既に王妃教育は全て終わっているけれど、もう一度復習をしないと」
とにかく私には、やる事が沢山あるのだ。今までは王妃の仕事ばかりに目がいっていたけれど、やはり人脈も大切だ。この国の令嬢たちを呼んで、お茶会も開催したい。カリアン王国で学んだことを、アラステ王国でもしっかり生かさないと。
「お嬢様、着替えが終わりました。本当に登城なさるのですか?旦那様は、この事をご存じなのですか?」
「お父様?お父様はさっさと登城してしまったから、話していないわ。本当に薄情よね。娘を置いて、お兄様と2人で登城してしまうだなんて!それよりクラミー、あなた、明日から休暇でしょう。今日はもう上がっていいわよ。カリアン王国では、休みなしでずっと働いてくれていたものね。本当にありがとう。あなたには感謝しているわ」
私の為に、急遽カリアン王国に行く事になったクラミー。彼女には本当に感謝している。
「カリアン王国でも、しっかりお休みはもらっておりましたから、今日はしっかり働かせていただきますわ。それよりも、やはり勝手に登城は…」
「大丈夫よ、今までも毎日登城していたし。それよりも、クラミーは本当に働き者ね。私もクラミーを見習わないと」
「お嬢様の方が、ずっと働きものですわ。それよりも、やはり勝手に登城は…」
もう、クラミーはしつこいわね。王宮には好きに出入りしていいと、陛下からも王妃殿下からも許可を頂いているのに。どうしてそんなに私が登城する事を、嫌がるのかしら?
まあいいわ。
部屋から出て、そのまま玄関へと向かう。
「あら?キャリーヌ、どこかに出掛けるの?」
「ええ、今から王宮に行って参りますわ。それでは行ってきます」
お母様にそう伝え、馬車に乗り込んだ。
「ちょっと待って…」
なぜかお母様が追いかけてきたが、そのまま馬車は出発した。お母様ったら、一体どうしたのかしら?もしかしてお母様も、今日は屋敷でじっとしていろとでも言いたかったのかしら?
もう、皆心配性なのだから。私は元気なのに。
そう思いながら、王宮へと向かう。しばらく走ると、懐かしい王宮が見えて来た。ただ、王宮を見た瞬間、ジェイデン殿下の顔が頭をよぎった。あの日私に側妃になる様に迫り、拒否すると薄暗い地下牢に閉じ込めた男。食事も与えず、私を殺そうとしたあの男がいる王宮。
そう思うと、足がすくむ。
大丈夫よ、ジェイデン殿下はもう、王太子ではない。それに何より、王宮には大切なサミュエル様もいる。陛下も王妃殿下もいらっしゃる。それに王宮は広いのだ。王宮に着いたら、すぐにサミュエル様を呼んで貰えば問題ないだろう。
ただ、やはり王宮を見ると、思い出したくもない事を思い出してしまうのだ。
そんな事を考えているうちに、王宮に着いてしまった。とりあえず門番に、サミュエル様を呼んできてもらう様に頼んでもらった。このまま王宮の中に入ってもいいのだが、万が一ジェイデン殿下に会ってしまったら…
そう考えると、なんだか怖くて王宮に入れない。私ったら、いつからこんなに弱くなってしまったのかしら?本当にダメね。
しばらくすると、サミュエル様と一緒に、なぜかお父様もやって来たのだ。お父様は別に、お呼びではないのだけれど…
「キャリーヌ、私に黙って王宮に来るとは、何を考えているのだ!」
その上、お父様に怒られてしまった。怒られる筋合いはないのだが…
「お父様こそ、私を置いてさっさと登城なさって。今日は一緒に登城しようと思っておりましたのに」
「今日は屋敷でゆっくり過ごすようにと、伝えただろう。それなのに、勝手に登城して。サミュエル殿下、申し訳ございません」
どうしてお父様が、サミュエル様に謝るのよ。どうして登城してはいけないのか、さっぱりわからない。
「マディスン公爵、僕は大丈夫です。キャリーヌ、今日は一旦公爵家に戻ろう。僕が送っていくからね」
「えっ、せっかく王宮に来たのに…」
どうして公爵家に帰らないといけないのだろう。もしかして、皆私の事を歓迎してくれていないのかしら?そんな不安が、私を襲う。
その時だった。
「サミュエル様、送って下さり、ありがとうございました。足を運んでいただかなくても、私が王宮に出向きますわ。陛下や王妃殿下にも、ご挨拶をしたいですし」
「いや、王宮にはまだ来なくてもいいよ。とにかくキャリーヌは疲れているだろう。ゆっくりお休み」
私のおでこに口づけをして、そのまま馬車に乗り込んでいったサミュエル様。もう、両親もいるのに、口づけをするだなんて、恥ずかしい。
でも、まあいいか。
サミュエル様には、今まで散々辛い思いをさせてしまったものね。これからは、目いっぱいサミュエル様の思う様にさせてあげよう。
ただ、さすがに今日は疲れた。
自室に戻り湯あみを済ますと、ベッドに入った。やっぱり自分のベッドが一番落ち着くわ。この日は、あっという間に眠りについてしまったのだった。
翌朝
「クラミー、おはよう。今日は登城するから、すぐにドレスに着替えさせて。サミュエル様の瞳の色に合わせて、青いドレスにしましょう。どれがいいかしら?これなんていいわね。これにするわ」
「お嬢様、今日はお屋敷でゆっくり過ごす予定では…」
「何を言っているの?私はサミュエル様の、婚約者になるのですもの。のんびりお屋敷で過ごしている訳にはいかないわ。散々サミュエル様には迷惑を掛けたのですもの。早速登城して、陛下と王妃殿下に挨拶をしないと。それから、次期王妃になるための勉強も始めないとね。既に王妃教育は全て終わっているけれど、もう一度復習をしないと」
とにかく私には、やる事が沢山あるのだ。今までは王妃の仕事ばかりに目がいっていたけれど、やはり人脈も大切だ。この国の令嬢たちを呼んで、お茶会も開催したい。カリアン王国で学んだことを、アラステ王国でもしっかり生かさないと。
「お嬢様、着替えが終わりました。本当に登城なさるのですか?旦那様は、この事をご存じなのですか?」
「お父様?お父様はさっさと登城してしまったから、話していないわ。本当に薄情よね。娘を置いて、お兄様と2人で登城してしまうだなんて!それよりクラミー、あなた、明日から休暇でしょう。今日はもう上がっていいわよ。カリアン王国では、休みなしでずっと働いてくれていたものね。本当にありがとう。あなたには感謝しているわ」
私の為に、急遽カリアン王国に行く事になったクラミー。彼女には本当に感謝している。
「カリアン王国でも、しっかりお休みはもらっておりましたから、今日はしっかり働かせていただきますわ。それよりも、やはり勝手に登城は…」
「大丈夫よ、今までも毎日登城していたし。それよりも、クラミーは本当に働き者ね。私もクラミーを見習わないと」
「お嬢様の方が、ずっと働きものですわ。それよりも、やはり勝手に登城は…」
もう、クラミーはしつこいわね。王宮には好きに出入りしていいと、陛下からも王妃殿下からも許可を頂いているのに。どうしてそんなに私が登城する事を、嫌がるのかしら?
まあいいわ。
部屋から出て、そのまま玄関へと向かう。
「あら?キャリーヌ、どこかに出掛けるの?」
「ええ、今から王宮に行って参りますわ。それでは行ってきます」
お母様にそう伝え、馬車に乗り込んだ。
「ちょっと待って…」
なぜかお母様が追いかけてきたが、そのまま馬車は出発した。お母様ったら、一体どうしたのかしら?もしかしてお母様も、今日は屋敷でじっとしていろとでも言いたかったのかしら?
もう、皆心配性なのだから。私は元気なのに。
そう思いながら、王宮へと向かう。しばらく走ると、懐かしい王宮が見えて来た。ただ、王宮を見た瞬間、ジェイデン殿下の顔が頭をよぎった。あの日私に側妃になる様に迫り、拒否すると薄暗い地下牢に閉じ込めた男。食事も与えず、私を殺そうとしたあの男がいる王宮。
そう思うと、足がすくむ。
大丈夫よ、ジェイデン殿下はもう、王太子ではない。それに何より、王宮には大切なサミュエル様もいる。陛下も王妃殿下もいらっしゃる。それに王宮は広いのだ。王宮に着いたら、すぐにサミュエル様を呼んで貰えば問題ないだろう。
ただ、やはり王宮を見ると、思い出したくもない事を思い出してしまうのだ。
そんな事を考えているうちに、王宮に着いてしまった。とりあえず門番に、サミュエル様を呼んできてもらう様に頼んでもらった。このまま王宮の中に入ってもいいのだが、万が一ジェイデン殿下に会ってしまったら…
そう考えると、なんだか怖くて王宮に入れない。私ったら、いつからこんなに弱くなってしまったのかしら?本当にダメね。
しばらくすると、サミュエル様と一緒に、なぜかお父様もやって来たのだ。お父様は別に、お呼びではないのだけれど…
「キャリーヌ、私に黙って王宮に来るとは、何を考えているのだ!」
その上、お父様に怒られてしまった。怒られる筋合いはないのだが…
「お父様こそ、私を置いてさっさと登城なさって。今日は一緒に登城しようと思っておりましたのに」
「今日は屋敷でゆっくり過ごすようにと、伝えただろう。それなのに、勝手に登城して。サミュエル殿下、申し訳ございません」
どうしてお父様が、サミュエル様に謝るのよ。どうして登城してはいけないのか、さっぱりわからない。
「マディスン公爵、僕は大丈夫です。キャリーヌ、今日は一旦公爵家に戻ろう。僕が送っていくからね」
「えっ、せっかく王宮に来たのに…」
どうして公爵家に帰らないといけないのだろう。もしかして、皆私の事を歓迎してくれていないのかしら?そんな不安が、私を襲う。
その時だった。
1,173
あなたにおすすめの小説
俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?
柚木ゆず
恋愛
※9月20日、本編完結いたしました。明日21日より番外編として、ジェラール親子とマリエット親子の、最後のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。
お前の家ティレア家は、財の力で爵位を得た新興貴族だ! そんな歴史も品もない家に生まれた女が、名家に生まれた俺に相応しいはずがない! 俺はどうして気付かなかったんだ――。
婚約中に心変わりをされたクレランズ伯爵家のジェラール様は、沢山の暴言を口にしたあと、一方的に婚約の解消を宣言しました。
そうしてジェラール様はわたしのもとを去り、曰く『お前と違って貴族然とした女性』であり『気品溢れる女性』な方と新たに婚約を結ばれたのですが――
ジェラール様。貴方の婚約者であるマリエット様が、侯爵家主催の夜会で大問題を起こしてしまったみたいですよ?
婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢
alunam
恋愛
婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。
既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……
愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……
そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……
これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。
※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定
それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!
婚約者が妹と婚約したいと言い出しましたが、わたしに妹はいないのですが?
柚木ゆず
恋愛
婚約者であるアスユト子爵家の嫡男マティウス様が、わたしとの関係を解消して妹のルナと婚約をしたいと言い出しました。
わたしには、妹なんていないのに。
殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。
和泉鷹央
恋愛
雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。
女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。
聖女の健康が、その犠牲となっていた。
そんな生活をして十年近く。
カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。
その理由はカトリーナを救うためだという。
だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。
他の投稿サイトでも投稿しています。
【完結】王妃を廃した、その後は……
かずきりり
恋愛
私にはもう何もない。何もかもなくなってしまった。
地位や名誉……権力でさえ。
否、最初からそんなものを欲していたわけではないのに……。
望んだものは、ただ一つ。
――あの人からの愛。
ただ、それだけだったというのに……。
「ラウラ! お前を廃妃とする!」
国王陛下であるホセに、いきなり告げられた言葉。
隣には妹のパウラ。
お腹には子どもが居ると言う。
何一つ持たず王城から追い出された私は……
静かな海へと身を沈める。
唯一愛したパウラを王妃の座に座らせたホセは……
そしてパウラは……
最期に笑うのは……?
それとも……救いは誰の手にもないのか
***************************
こちらの作品はカクヨムにも掲載しています。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
困った時だけ泣き付いてくるのは、やめていただけますか?
柚木ゆず
恋愛
「アン! お前の礼儀がなっていないから夜会で恥をかいたじゃないか! そんな女となんて一緒に居られない! この婚約は破棄する!!」
「アン君、婚約の際にわが家が借りた金は全て返す。速やかにこの屋敷から出ていってくれ」
新興貴族である我がフェリルーザ男爵家は『地位』を求め、多額の借金を抱えるハーニエル伯爵家は『財』を目当てとして、各当主の命により長女であるわたしアンと嫡男であるイブライム様は婚約を交わす。そうしてわたしは両家当主の打算により、婚約後すぐハーニエル邸で暮らすようになりました。
わたしの待遇を良くしていれば、フェリルーザ家は喜んでより好条件で支援をしてくれるかもしれない。
こんな理由でわたしは手厚く迎えられましたが、そんな日常はハーニエル家が投資の成功により大金を手にしたことで一変してしまいます。
イブライム様は男爵令嬢如きと婚約したくはなく、当主様は格下貴族と深い関係を築きたくはなかった。それらの理由で様々な暴言や冷遇を受けることとなり、最終的には根も葉もない非を理由として婚約を破棄されることになってしまったのでした。
ですが――。
やがて不意に、とても不思議なことが起きるのでした。
「アンっ、今まで酷いことをしてごめんっ。心から反省しています! これからは仲良く一緒に暮らしていこうねっ!」
わたしをゴミのように扱っていたイブライム様が、涙ながらに謝罪をしてきたのです。
…………あのような真似を平然する人が、突然反省をするはずはありません。
なにか、裏がありますね。
【完結】そんなに好きなら、そっちへ行けば?
雨雲レーダー
恋愛
侯爵令嬢クラリスは、王太子ユリウスから一方的に婚約破棄を告げられる。
理由は、平民の美少女リナリアに心を奪われたから。
クラリスはただ微笑み、こう返す。
「そんなに好きなら、そっちへ行けば?」
そうして物語は終わる……はずだった。
けれど、ここからすべてが狂い始める。
*完結まで予約投稿済みです。
*1日3回更新(7時・12時・18時)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる